Posted: 24 Aug. 2023 3 min. read

メディア・ユニバーサルデザイン:「誰一人取り残さない社会」の実現へ

「メディア・ユニバーサルデザイン」という言葉をご存じだろうか。

メディア・ユニバーサルデザインとは、高齢者や障がい者、外国人等、誰にとっても、情報を見やすく、伝わりやすくするための手法である。具体的には、色の使い方、文字の使い方(ふりがな、多言語表記等)、デザイン(イラスト、ピクトグラム、書体)等を工夫することで、必要な情報をわかりやすく伝える、というものだ。自治体の避難所設営キットや、児童向け教科書等に取り入れられている。

メディア・ユニバーサルデザインはこれからの社会において益々重要になる。日本の人口の内、高齢者が3割、障がい者が7.6%を占め、更に外国人が増え多様性が増している中で、あらゆる年齢、性別、身体的状況、国籍に関わらず、すべての人が利用しやすいようにつくられたデザインは、「誰一人取り残さない社会」の実現に向けて大きな意義がある。

加えて、メディア・ユニバーサルデザインは経済的にも意義がある。例えば、大阪府堺市では、納税通知書にユニバーサルデザインを取り入れたところ、市民からの問合せ件数が2割減少したという効果があった*1 。デザインを変えるだけで市民が自己解決できるようになり、不要なコミュニケーションが削減されたということだ。これは、人手不足が深刻化する日本において経済合理性の観点で価値がある。

 

こうしたデザインの考え方を、商品やサービスの設計に取り入れることでビジネスとしても広がってゆく。具体的には、従来の商品やサービス開発のプロセスには入っていなかった高齢者や障がい者等の視点を設計段階から取り入れる*2 ことが重要だ。それによって、一般の消費者が見えていない課題が可視化され、そこからイノベーションのアイデアが生まれることもある。

例えば、日用品メーカーでは、洗濯用洗剤を開発する際に、握力の弱い高齢者やキャップで計量できない視覚障がい者等に参加してもらい、片手で簡単に洗剤を計り入れられるデザインを取り入れたという事例*3 がある。その結果、高齢者や障がい者を含む、幅広い層から高評価を獲得しヒット商品になった。

 

一方で、今後は、社会的意義や経済合理性があるユニバーサルデザインを、企業や社会全体により広く浸透させていくことが課題である。

そのためには、ユニバーサルデザインの考え方や手法を“日常化”するための工夫が必要である。企業における先進的な取り組みとしては、日本のエレクトロニクスメーカーでは、商品企画・開発段階で障がい者らの意見を取り入れることを社内規則化(ルール化)する*4という動きがある。また、米国のIT企業では「チーフ・アクセシビリティー・オフィサー」*5 といった経営層の役職を置いて、障がい者目線からのアクセスに責任を持っている。

 

これからの日本においては、ユニバーサルデザインが当たり前のものとなり、あらゆる人にとって自分らしく過ごしやすい社会になってゆくことを期待する。

※本稿は、2023年8月18日のフジテレビ系列「FNN Live News α」出演時のコメントを基に再構成しています。

 

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松江 英夫/Hideo Matsue

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デロイト トーマツ グループ CETL(Chief Executive Thought Leader)、デロイト トーマツ インスティテュート(DTI)代表

デロイト トーマツ合同会社 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナー 中央大学ビジネススクール 客員教授 事業構想大学院大学 客員教授 経済同友会 幹事 国際戦略経営研究学会 常任理事 フジテレビ系列 報道番組「Live News α」コメンテーター(金曜日) 経済産業省 「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」 委員 経営戦略及び組織変革、経済政策が専門、産官学メディアにおいて多様な経験を有する。 (主な著書) 「「脱・自前」の日本成長戦略」(新潮社・新潮新書 2022年5月) 『両極化時代のデジタル経営—共著:ポストコロナを生き抜くビジネスの未来図』(ダイヤモンド社.2020年) 「自己変革の経営戦略」(ダイヤモンド社.2015年) 「ポストM&A成功戦略」(ダイヤモンド社.2008年) 「クロスボーダーM&A成功戦略」(ダイヤモンド社 2012年: 共著) など多数。 (職歴) 1995年4月 トーマツ コンサルティング株式会社(現デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)入社 2004年4月 同社 業務執行社員(パートナー)就任 2018年6月 デロイト トーマツ グループ CSO 就任 2018年10月 デロイト トーマツ インスティテュート(DTI)代表 就任(現任) 2022年6月 デロイト トーマツ グループ CETL 就任(現任) 2012年4月 中央大学ビジネススクール客員教授就任(現任) 2015年4月 事業構想大学院大学客員教授就任(現任) 2021年1月 特定非営利活動法人アイ・エス・エル(ISL) ファカルティ就任(現任) 2018年10月 フジテレビ「Live News α」 コメンテーター(現任) (公歴) 2022年10月 経済産業省 「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」 委員就任(現任) 2020年12月 経済産業省 「スマートかつ強靱な地域経済社会の実現に向けた研究会」委員就任 2018年1月 経済産業省 「我が国企業による海外M&A研究会」委員就任 2019年5月 経済同友会幹事(現任) 2022年10月 国際経営戦略学会 常任理事(現任)