京都スマートシティエキスポ2019協賛・出展レポート ブックマークが追加されました
デロイト トーマツは2019年10月3・4日開催の「京都スマートシティエキスポ2019」に協賛・出展しました。基調講演には、デロイトのグローバルスマートシティリーダーのMiguel Eiras Antunesが、日本でスマートシティビジネスをリードする香野剛と共に登壇し、その他ビジネスセミナーやブース展示等で、持続可能なスマートシティの実現に必要な方法論の紹介を中心に、企業や自治体などのステークホルダーに向けて「経済社会の変革のカタリスト」としての提言を行いました。
基調講演では、まず香野が日本のスマートシティの実現に向けた障壁について述べ、「行政単独では解決できない多数の社会課題の存在」と「官民ともにリーダーシップとコミットメントが難しい環境」の大きく2つが課題であると話しました。都市のあり方を根本的に変える技術・機運・資本も十分にあるにも関わらず実装や事業化が進まない、いわば日本のスマートシティのパラドックスとも言うべき状態であると指摘しました。
これらの課題を克服するには、個別の課題や一部の地域にフォーカスするのではなく、全体最適でヒト・モノ・カネの全てをグランドデザインすることが必要であるとし、デロイト トーマツの持続可能なスマートシティの実現に向けた方法論“4つの「結ぶ」”を紹介しました。(4つの「結ぶ」の詳細はこちら)
香野の基調講演スライドはこちらからダウンロードいただけます(PDF:約1.5M)
続いて登壇したMiguelは、まずグローバルでのスマートシティの潮流について解説しました。2050年には世界人口の68%が都市に住み、また2030年には43ものメガシティが誕生すると予想されており、社会経済、レジリエンス、住民の関与等の問題に対する圧力・負荷の高まりに対応するには、革新的なアプローチが不可欠であると語りました。また、スマートシティの取組が目指す本質的なゴール(目的)は、都市の経済競争力の拡充、持続可能性の実現、生活の質(QOL:Quality of Life)の向上の3つであると述べ、複合的な側面を有する都市空間をデザインするためには、総合的かつ俯瞰的な視点と、テクノロジーの力を活用した都市機能向上が必要だと話しました。
デロイトは、多くの都市でのスマートシティにおけるプロジェクト支援実績を有しており、その1つであるポルトガルの都市カスカイス(人口約20万人)の事例では、20-30年後のビジョンを自治体と共に議論し、都市運営機能の変革や、“CitySynergy™”という都市OS(Operating System)の開発・実装により、交通やエネルギーの管理、廃棄物処理等に係る運用コスト削減に寄与していることについても紹介しました。(グローバルでの支援事例はこちら ※英語のみ)
Miguelの基調講演スライドはこちらからダウンロードいただけます(PDF:約2.2M)
ビジネスセミナーでは、廣瀬史郎が海外事例を参照しつつ、日本のスマートシティに必要な3つの発想転換と、各ステークホルダーに求められる次のアクションを提言しました。
Sidewalk Labs社のトロントウォーターフロント再開発計画を引用しながら、日本のスマートシティには①グランドデザイン ②ファイナンス ③クロスセクター連携(パートナーシップ)の3つの発想転換が必要であるとし、日本では以下がそれぞれの課題になっていると指摘しました。
①グランドデザイン:グランドデザインを描くだけのリソースをもった主体の不在
②ファイナンス:将来の事業の絵姿から逆算し資金調達を含む財務計画を立てる発想の不足
③クロスセクター連携(パートナーシップ):公共セクターと民間セクターの役割分担の議論不足
これらの課題の克服には、グランドデザインを可能にする総合的なケイパビリティと辛抱強い資本(Patient Capital)を供給できる財務基盤の双方を有する主体として、複数企業の共同出資が一案として想定され、またその強力なリーダーシップを補完する公共セクターとのパートナーシップや適切なガバナンスを構築することが重要と述べました。
続いて、庄﨑政則・菊地穣より、スマートシティビジネスの構造と各プレイヤーが取りうるポジション(立ち位置)を整理し、特に建設業・B2B製造業がどのような立ち位置でスマートシティプロジェクトに関与していくべきかについて、講演しました。
スマートシティのマネタイズを成功させるためには自社の立ち位置を明確にすることが重要だと切り出し、具体的には
a:サービサー型
b:セカンダリ型
c:エリアオーナー型
の3つが想定される、と語りました。そのうえで、建設業に対してはc:エリアオーナー型で、まちづくりの伴走者の立ち位置をとるべきとし、モビリティやヘルスケアといった種々出現するサービサーを都市課題に応じてとりまとめるインテグレーターとなるべく、都市計画見直しから関与し、多様なプレイヤーとのネットワーク構築が重要と話しました。また、B2B製造業は(特定領域の)サービサーを支えるb:セカンダリ型の立ち位置をとるべきとし、自社製品のみならず、顧客業務に関わる全てをつなぎ、顧客業務全体の高度化に目を向けることが重要であると述べました。
トーマツ入社後、上場会社等の会計監査に従事。その後パブリックセクター部に異動し、公共セクターに対する各種アドバイザリーおよびコンサルティング業務並びに会計監査にプロジェクトマネジャー又は業務責任者として関与。現在は日本のG&PSインダストリーリーダを務めるとともに、スマートシティ・イニシアティブをリード。 デジタルガバメント、地方創生やスマートシティに関する数多くのプロジェクトの経験を有し、地域アジェンダ解決・未来創造の官民連携プロジェクトを全国各地で推進している。また、国や地方自治体の委員会の委員を歴任。