Posted: 28 Mar. 2025 8 min. read

社会課題の解決を「共創」する動力は、共に考える場から生まれる

Just Do It‼地域イニシアチブ(JDI)の活動紹介 Vol.7

私たちは、デロイト トーマツ グループ横断の「プロボノチーム」 です。 

プロボノと聞くと、一般的なボランティアのイメージである「奉仕」や「サポート」を専門家が行う、といった支援のイメージを抱かれるかもしれません。実は、私たちの活動の中には、支援だけに留まらない「共創」の場が、あちこちにあります。

今回は、障がい者サービス部会やJDIオンライン会議を通じて、どのような共創の場が生まれているかをご紹介します。

暮らし働く中で、あなたの身近に「障がいを持つ人」はいますか—9.2%の人口と現状のバリア

日本には、障がいを持つ人が約1160万人暮らしています。日本全体の人口に対して9.2%の割合で存在しているのですが、日々の暮らしでのなかで、例えば職場や学校、街中や旅行先で、たくさんの人々が存在する場において10人に1人程度は障がいを持っている人がいる、と感じられるほどに身近ではないのではないでしょうか。

障がいを持つ人々の社会参画にはバリアが存在していて、多くの人にとって身近な存在ではないのが、今の日本社会全体の現状です。バリアの解消に向けては国や行政、企業も、法改正や啓発活動、設備投資や雇用促進など様々な取り組みを行っています。

では、組織的な取り組みとは別で、私たちが一人ひとりの個人としてバリアを解消するためには、どんなことができるのでしょうか。

(※障害種別:身体436万人、知的109万4千人、精神614万8千人-内閣府 令和6年障害者白書 参考資料より

 

事業者・当事者・当事者家族の生の声から見えた共通点は、「障がい者に対する偏見」

障がい者サービス部会は、Just Do It!!地域イニシアチブ(以下、JDI)のオンライン会議を発端に生まれた分科会(部会)の一つです。毎月ゲストとテーマが違う会議のなかで、2022年夏に開催された回では、障がい者サービス、介護の事業者の足元の課題についての議論が尽きず、継続して議論するための分科会がスタートしました。

参加者は、各地の障がい福祉事業に関わる経営者や支援者、障がいを持つ当事者、障がいを持つ当事者の家族、そして障がい福祉分野に興味を持ち参加した多様なバックグラウンドのメンバーです。

障がいを身近に考えている私たちの議論は、事業運営や当事者・当事者家族の経験を通し、暮らしやサービスから、福祉制度・雇用など多角的な分野の課題に広がりました。幾回の議論を重ね、いくつもの足元の課題から導き出された共通点、それは、「障がい者に対する偏見」があることで、問題が生まれる、ということでした。

 

イベントを通した啓発活動で接点を増やし、一人ひとりに知ってもらう・考えてもらう

「障がい者に対する偏見」を減らすためには、一人ひとりの知る機会を増やし、理解を深めてもらうことが必要ではないか。部会での議論や勉強会から発展し、いま私たちはJDIのネットワークを通して、イベントやコンテンツを通した持続的な啓発・教育活動に取り組んでいます。

具体的な取り組みのひとつとして、社会福祉法人ぶどうの木が主催するノウフクフェスタに、2024年より企画協力や当日運営ボランティアを行っています。「ノウフク」とは農福連携を指し、農業の後継者不足と、障がい者の雇用問題の掛け算をして解決する取り組みです。ノウフクフェスタは農福連携を啓発する上野公園で開催される2日間のイベントで、全国から事業者が集まりノウフク野菜を販売をするマルシェや、ノウフク野菜を使った飲食出店、農福連携に関する展示等が行われ、毎年3万人ほどの来場者があります。

 

2024年・2025年の開催ではJDIから運営ボランティアを募集し、2年間とも2日間で延べ40人ほどのボランティア参加がありました。ボランティア参加者には事前に説明会も開催しています。ぶどうの木の代表理事・和田高さんから、農福連携について、イベント開催の背景にお話しいただき、ただ当日参加するだけではなくノウフクの背景について理解を深めてもらいました。当日会場では、来場者向けには「ノウフクについて知っていましたか」「ノウフクの未来は?」など問いかけを行うブース設置や「障がいについて知ろう」をテーマにしたトーク企画を行うなど、一人ひとりに知ってもらう・考えてもらう接点を増やしています。 

<ノウフクフェスタ2024年、2025年のブースとボランティア活動の様子>

 

困難を分かち合うセルフヘルプグループから学ぶ、「共に存在する」なかで「自分ゴト」への変化

そもそも、なぜ偏見が生まれるのでしょうか。一人ひとりの違いをとらえずステレオタイプで判断し、私とあなたは違う集団に属していると考えて、属性に対する偏った見方をしてしまうのが「偏見」です。

偏見を減らす方法の一つは、個人と個人が知り合う機会を増やし、「あなたたち」「私たち」と分け隔てるのではなく、共に存在し「私たち」である体験をすること。障がい者サービス部会での議論はまさに、事業者や当事者や当事者家族を含めて多様な参加者が、同じ輪の中での議論に参加し「私たち」の結論を導く、共創の体験の場でした。

 

先日2025年1月に開催したJDIオンライン会議も、まさに「私たち」の体験と共創を感じることができました。テーマは「セルフヘルプグループの社会的認知を広げるには」。セルフヘルプグループとは、「共通の悩みや生きづらさがある当事者が運営しているグループ」のことです。自助グループ、当事者会、家族会、患者会などと表現されていることもあります。病気や障害、依存症、不登校、引きこもり、子育て、介護、性的マイノリティなど取り扱う内容はグループによって様々にあり、本人や家族を対象にして、当事者同士ならではの困難をわかちあう場を運営する団体が全国各地に存在しています。しかし、悩みを抱える本人がすぐにアクセスできるほどに存在が知られていないのが現状です。

JDIオンライン会議にて、セルフヘルプグループのプラットフォームを運営する一般社団法人wreathの下村真代さんから、こうした現状と課題をシェアいただきディスカッションをしました。グループに分かれ一人ひとりの個人的体験もシェアしながらアイディアを出し合うなか、いち参加者としての筆者の私が感じたのは、「悩みを共有し語り合うセルフヘルプグループ」と「JDIのプロボノ活動」の共通点でした。

<第74回JDIオンライン会議 困難を仲間とわかちあう「セルフヘルプグループ」を広めよう!の様子>

 

JDIの活動では、「自分ゴト」として社会課題や地域課題を捉えることを大切にしています。ただ、社内外から広く集るJDIの活動には多様な社会課題・地域課題があるため、一人ひとりにとっては「社会ゴト」にしかみえない課題もあるのではないでしょうか。

「社会ゴト」だと感じるテーマでも、参加していく中で変わりゆくことがあります。「自分ゴト」として取り組む仲間の課題を聞き共に考える中で、アイディアが浮かんだり手を挙げたくなったりと、主体的な動力が生まれてくることがあるのです。それはセルフヘルプグループに参加する中で、一人ひとりの話を聞き、自身の困難と重ねながら仲間と分かち合う中で、悩みが軽くなったり、解決の糸口をつかむ体験にも似ています。

 

「ボランティア」という言葉に奉仕やサポートのイメージが強く、プロボノ活動をしていると人に説明すると一方的に支援をしていると思われがちであることに、いつも私は違和感を抱いていました。JDIの活動は、一方的なものではなく双方向の取り組みです。社会課題・地域課題に取り組む個人・団体と、課題を「自分ゴト」として捉える人々が集まる、「社会課題・地域課題の解決を目指すセルフヘルプグループ」と説明したほうが、参加者目線ではしっくりくるのでは、と共通点から感じたのでした。

 

「社会ゴト」からでも「自分ゴト」からでも、共に解決を目指す仲間として

筆者の私自身は、「自分ゴト」半分、「社会ゴト」半分の気持ちで障がい者サービス部会に参加を始めた、障がいをもつ当事者の一人です。参加当初は、私はあくまでもいち当事者でしかなく、「自分ゴト」に思える社会課題は部分的だと感じていました。しかし参加を重ねる中で、障がい者サービス部会に限らずJDI全体の活動全体がすっかり「自分ゴト」になり、事務局の運営にも携わるようになりました。それは、私が「障がいがある人」「支援を受ける人」と分け隔てられるのではなく、「解決を目指す私たち」として場に参加し、共に時間を過ごしたからです。仲間として意見を交わす中で「自分ゴト」に思える課題が増え、仲間との協力で解決に向けたアクションが広がりました。

どんなに言葉で説明をしても、場に参加してみるまでは、「自分ゴト」に変容するまでは、ピンと来にくいものではないかと、個人的体験からは思います。なのでまずは、多様な社会課題・地域課題を扱うJDIのさまざまな活動の中で、「なんだか興味がある」「ちょっと気になる」といった気持ちが動いたものがあったら、その気持ちひとつでいつでもご参加ください。

そして、JDIの動力はたくさんの「自分ゴト」として取り組む社内外の仲間がいてこそ、でもあります。自分ゴトとして解決したい社会課題・地域課題の取り組みを、JDIで共に考えたいという参加も歓迎しています。

「あなた」と「私たち」が交じり合うJDIの活動の場で、共に過ごす時間と解決に向けた共創を、楽しみにしています。

執筆者

Just Do It‼地域イニシアチブ
メンバー 天池 とも子(デロイト トーマツ グループ合同会社)
※ 執筆者の社名・肩書は執筆時のものです。

 

JDI活動に関するお問い合わせはこちらから:info_jdi@tohmatsu.co.jp

 

     

    JDI活動紹介動画

     

    Well-beingについて

    人とひとの相互の共感と信頼に基づく『Well-being(ウェルビーイング)社会』」の構築を目指す──。デロイト トーマツ グループが掲げているAspirational Goal(目指すべき社会の姿)です。Personal/ Societal/ Planetaryのそれぞれについて、Well-beingすなわち健全な状態を目指します。わたしたちは今後も継続的に、デロイト トーマツ グループの財産であるメンバーのPersonal Well-being実現のための取り組みを進め、それぞれのメンバーがSocietal well-being、Planetary Well-being実現のために、よりサステナブルな将来を構築するべく、共に取り組んでまいります。

    人とひとの相互の共感と信頼に基づく 「Well-being 社会」

    デロイト トーマツ グループのCSRについて