Posted: 21 Jul. 2022 4 min. read

AI活用によるデータドリブン経営に向けた取り組みへ

SOMPOグループにおける導入アプローチとは

デロイト トーマツ グループは、企業におけるAIの利活用状況やリスク管理・ガバナンス構築の実態調査を目的とし、AIガバナンスに関するサーベイを実施しています。3回目となる今回は「人材」と「データ」にフォーカスをあて、AI利活用を推進するための情報を提供することを目指しました。そこで、AI利活用が進んでいるユーザー企業と座談会形式でお話を伺います。

——AIサーベイの結果を見ると、PoCや本番運用などAI活用が進んでいる企業が増えているといった結果が出ています。これについての感想を聞かせてください。
 各フェーズの到達割合
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西野:これについては特に不明点はなく、「そうですよね」という印象です。今の時代、デジタルは必要不可欠。AIについても推進しなければいけません。しかし事業会社の多くはデジタル化のハードルが高く、さまざまな「壁」に躓いているのではないかと思います。

 

—我々は、AIの活用を「ステージ」という概念で捉えています。PoCを実施していたり、本番運用していたりするステージの企業や、PDCAを回してAI活用するステージの企業があります。次のステージに移行するには、様々な課題を乗り越えなければなりません。AIを活用している御社の場合、ステージアップの壁をどのように乗り越えていったのか教えてください。

AI活用ステージ
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西野:まず押さえておかなければいけないのは、昔のITと現在のデジタルとの大きな違いです。現在の「デジタル」は、自分たちで開発していかなければ大きな時代の変化に追いつけなくなります。そのため、開発部門は社内に必要不可欠となります。ステージという視点で考えると、本番運用するステージでは必ず開発が必要になるでしょう。

当社の場合、開発部門は「Research and Development(R&D)」と「スプリント」という2つのチームに分けています。内製開発が必要と考えた結果、それが適切と判断して分けました。実際、企画や各ビジネス部門との連携はR&Dが行い、そこと連携しながらスプリントが開発をするという流れができています。

 

—PoCというステージではベンダーを使うこともあるけれども、本番運用に至るには内製チームがないと進まないということでしょうか。
 

西野:それを含め、色々とチャレンジすることが必要でしょう。運用がクリティカルでなければ、一旦ベンダーに任せて本番運用するという方法も不可能ではありません。しかし、本質的には内部の社員に任せていくべきでしょう。

森:先行事例が色々と出てきていますよね。デザイナーやデータサイエンティスト、エンジニアなどクロスファンクションなチームを作り、ユーザーの反応を見ながら開発していくケースもあります。御社の場合にはどのようにしていますか?

 

西野:もちろん、デザイナーやエンジニア、AIエンジニアも社内におります。PoCを行いながら、適材適所に配置していく状況です。デザインチームとエンジニアチームは分かれていますが、一緒にスクラムを組んでやっているので、フィードバックなどもきちんとできています。たとえば、「デザイン上はA案がいいと思うが、実現可能性などを考慮するとB案がいい」というように、デザインやプロダクトの進捗、本質的な利点などを検討してすり合わせしています。そういった点では1つのチームとして動いていると思います。

 

—内製開発できるからこそのメリットだと思います。御社ではベンダーに委託して開発するケースはありますか?

西野:「ベンダーへの委託」という表現が適切かどうか分かりませんが、AIなどについては、スタートアップの企業と連携しているケースもありますね。しかし、そういった取り組みをするには、社内のプロジェクトマネジャーがデジタル技術や知識を身に付ける必要があります。当社の場合、そういったデジタル人材を育成する研修なども行っています。そうすることによって、スタートアップへ丸投げではなく、自分たちが必要としているシステムを開発できるようになります。

 

—サーベイを見ると、PoCが進んでいない企業もみられます。そのような中、SOMPOグループはステージを進めることに成功しています。大きな違いは、データの扱い方なのではないかと思うのですが、データをどのように扱っているのか、また仕組みなどがあれば教えていただけますか。

西野:当社グループは、保険事業や介護事業を通じ、お客さま・ご利用者の行動や生活に紐づくリアルな情報(リアルデータ)を得ており、これら広範・膨大なリアルデータを統合・分析することで新たなソリューションを生み出していく当社独自の仕組みが「リアルデータプラットフォーム(RDP)」です。このRDPを駆使して新たに生み出すソリューション・エコシステムを様々な領域で展開し、当社グループの課題解決力にさらなら磨きをかけていこうとしております。

いくらビッグデータがあっても、それへのアプローチ方法(可視化・分析)と活用力がないと宝の持ち腐れにしかなりません。当社では「データ統合→見える化→課題の抽出・解決→分析・解析」という流れでデータドリブン経営を実践すべく、チャレンジしております。

松本(清):多くの企業は「全社で標準化したくても難しい」という課題を抱えています。そこで、標準化の進め方について、どのようにされているか教えていただけますか。


西野:
取り組みをしていくなかで「これは標準化しないと難しい」というものがあれば、そこから標準化していくようにしています。なんでもかんでも標準化してしまうと、状況が変わったときに変更ができず、障害となるケースもありますからね。

それと、「ユーザーが嬉しいかどうか」という点も重要です。ユーザーが喜ばない限り使われませんから、この視点はとても重要だと思います。

松本(清):自社でノウハウを蓄積したいという目的を持ちつつベンダーと協業するケースもありますが、うまく協業できなかったり、ノウハウが蓄積できなかったりするケースもあります。そういった企業へのアドバイスはありますか?

西野:ブラックボックスを減らすことが重要です。ベンダーに丸投げするだけでは、ノウハウが溜まりませんからね。やはり勉強をして、AIは何のモデルを使っているのか、評価基準は何か、なぜそのモデルを採用しているのかなどについてもプロジェクトマネジャーが理解できるようにしておく必要があるでしょう。それが分かってきたら、自分たちができることを増やしていくといいと思います。

「知財」についても重要です。モデルなどの知財の帰属がベンダーだと資産になりませんからね。「人」と「知財」の観点を捉えることが重要だと思います。
 

—ありがとうございました。

AIガバナンスサーベイ

Deloitte AI Instituteが2021年下期に実施した「AI利活用促進に関するサーベイ」の結果をレポートにまとめ、PDFデータを公開しています

 

■レポートの内容(目次)

p.03 序論
p.04 エグゼクティブサマリー
p.05 AIの利活用状況
p.07 AIの利活用を阻害する課題
p.10 AI固有のリスク識別・コントロール状況
p.12 業種別詳細分析
p.15 結論
p.16 付表

 

デロイト トーマツからの参加者

プロフェッショナル

松本 清一/Seiichi Matsumoto

松本 清一/Seiichi Matsumoto

有限責任監査法人トーマツ マネージングディレクター

SIベンダーから、事業会社を経て現職。主に、金融機関、小売業、製造業を対象として、システム設計やデータ分析業務に従事。 システムアーキテクチャ設計やDB設計、分析プラットフォーム構築、AIやIoTの導入、デジタルマーケティングやマーケティングオートメーションによるCRM業務高度化、分析組織立ち上げなどの経験を通じて、End to Endでのデータ分析に強みを持つ。