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新型コロナウイルス感染症:不確実性に立ち向かい、危機を切り抜け、突破する

シナリオ・シンキングによる意思決定力の向上

いかなる国、企業、経営者層またはリーダー個人も、新型コロナウイルス感染症の影響を免れることはできません。どのような戦略であれ、完全に無傷というわけにはいかないでしょう。さらに、新型コロナウイルス感染症収束後の事業環境を総合的に予測するならば、組織はより困難で複雑な選択を迫られることになるでしょう。

現代のビジネスリーダーは、不確実と言われるこの時代において、事業を行い、乗り越えてきました。デジタル化、テクノロジーの変革、地政学的変化、ビジネスモデルの進化といった絶え間ない変化、混乱、グローバルでのシフトや、グローバル化や商業に対するコンセンサスの変化は、何十年もの間、エグゼクティブの意思決定という概念そのものに挑戦を課してきました。

一方、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、不確実性について、これまで持っていた集合知としての分析方法を変化させようとしています。(あるいは、既に変化させてしまっています。)何故なら、私たちの記憶には、このような感染症がもたらす危機の参考になる事例は存在しないからです。過去には、インフルエンザのパンデミック、ブラックマンデー、リーマンショックが発生しました。その他にも、チェルノブイリの原発事故、イラクのクウェート侵攻、アメリカ同時多発テロ事件、ハリケーン・カトリーナ等、地域や国家に影響をもたらす局地的な脅威や災害が発生しました。しかし、俯瞰的にみると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの範囲はよりグローバルであるばかりでなく、影響は深刻かつ広範で、今日の意思決定者がこれまでに経験したことも考えたこともないくらい複雑で危機的な様相を呈しています。

 

不確実性に対する典型的な反応

不確実な時代において経営者は、重要な意思決定を行う責任から免れることはできません。文脈上の不確実性が意思決定を難しくしており、選択のための時間枠は短縮されています。

私たちの経験上、多くの経営者や取締役会は、不確実性に対して2つのうちいずれかの反応を示す傾向にあります。1つ目の傾向は、不確実性の存在、その深刻さ、複雑性を認識しているものの、それらに麻痺してしまい、意思決定が遅れがちになったり、臆病になったり、一貫性がなくなってしまう場合です。2つ目の傾向は、不確実性に直面した際に複雑性を排除したいと願うばかりに、強気になってしまう場合です。近年のビジネス史において、不確実性を見誤ったために、巨大企業が衰退した例が多く見られます。直近の金融危機のさなかに不意打ちをつかれた金融企業、スマートフォン革命とその後のiPhoneが業界を塗り替える可能性を予測できなかった携帯電話メーカー、1980年代にPC市場の急速な拡大に乗り遅れたコンピュータメーカーの例が挙げられます。これらの企業は、誤った情報に基づいた強気な姿勢と自己満足のために、下降局面を見落としたり、上昇局面の大きなチャンスを完全に見逃してしまったのです。

 

不確実性を受け入れる

不確実性に直面し、対処することは、マクロ経済の安定性と継続性という文脈の中でも、現在のビジネスに特徴的なテーマとなっています。一方で、今日の経営者は、不確実性の中で衝撃を受けにくくなってきています。一世代前にはブラックスワン現象と考えられていたものが、今日ではほとんどの戦略シナリオに組み込まれているからです。しかし、どのような基準から見ても、新型コロナウイルスのパンデミックは極端な異常値であると言えます。この根本的なフレームの再構築(「ネクスト・ノーマル」と広くいわれている)を受け入れることは、不確実性に真っ向から立ち向かい、それを自身の意思決定に組み込むことを意味します。それをどのように実践するかを考える時、デロイトは以下の視点を用います。

  • 様々な時間軸において不確実性を検討する
  • 業界およびビジネスにおいて最も顕著な不確実性を特定する
  • 不確実性から、異なる複数の未来を想定する
  • 多様な視点を追求する
  • シナリオを意思決定に組み込む
  • 様々な決定による影響を見極める
  • 選択と観察を行う

 

不確実性に組織全体で立ち向かう

CEOおよびマネジメントチームにとって極めて重要なことは、今日のストレス状況下のみならず、新型コロナウイルス感染症の収束後に様々な形で現れる業界や企業のポジションの変化を鑑み、リスクや機会を測ることです。同様に、CFOおよび財務のプロフェッショナルにおいては、シナリオのレンズを通して、流動性、バランスシートの強度および財務予測を測ることが必要不可欠です。

各部門のリーダーは、シナリオを利用することで市場やインプット要因の変化を予測できるようになります。

取締役会は、自らが管理する組織が不確実性に直面するのを支援する上で、極めて重要な役割を果たします。これは、マネジメント層が未来の可能性に敏感であること、また、異なるシナリオ大きく分岐するシナリオを積極的に検討していることを確認する必要があります。また、機会とリスクを測り、困難な選択であっても確信をもって決定し、シナリオや戦略の見直しや改善を長期的に行っていくためには、マネジメント層が様々な時間軸で物事を考慮していることを確認する必要があります。

新型コロナウイルス感染症のような異例な状況においては、勇気、明確性、そして謙虚さを同時に併せ持たなければなりません。深刻な危機的状況において、的確な意思決定の最大の敵は不確実性でも曖昧さでもありません。敵はむしろ、自信過剰、判断や行動の先延ばし、そして不完全または偏ったデータにあるでしょう。シナリオ・シンキングを賢明にうまく実行することで、将来の可能性を予測する際、自信過剰に陥るリスクを軽減することができます。また、根本的な前提条件を疑い、検証を行うための論理的なストラクチャーを提示することで、躊躇の気持ちを軽減させる、または、完全に解消することが可能になります。加えて、専門家の直観と客観的に測定した質的データを組み合わせることによって、不完全または偏ったデータに依拠するリスクを軽減することができます。

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