1人ではできなくても、メンバーの多様性で変革を実行できる期待感がWell-beingにつながる
―木村CEO×長川COO対談
国際幸福デーに、デロイト トーマツ グループの木村研一CEOと長川知太郎COOが社員・職員に向けて、「組織が目指すWell-being社会の実現」について語った。そのセッションについてレポートする。
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要約
- デロイト トーマツが3つのレベルで描くWell-being社会の実現とは
- 働くメンバーが輝く会社になるためには貢献実感とオリジナルな挑戦がカギ
- 社員・職員に向けたPersonal Well-being推進の取り組みは「Well-being活動に参画できる様々な機会や環境の創出」と「社内コミュニケーションの更なる活性化」
- 仕事のパフォーマンス向上に資するWell-beingは「1人で社会は変えられないけれども、デロイトの集合体であれば変革を起こすことができる」という期待感から始まる
3月20日は国連によって定められた国際幸福デー。デロイト トーマツ グループはこの日にあわせ「幸福Weeks」イベントを開催した。3月20日から2週間に渡り、グループおよび各ビジネスのリーダーや、Societal / Planetary Well-beingの活動に携わるメンバー、外部講演者などを招きそれぞれの活動や思いをメンバー向けに語った。
今回は幸福Weeksイベントの最初を飾った、「デロイト トーマツ グループのリーダーと考えるWell-beingのこれまでとこれから」と題して行われた木村CEO(以下、木村)と長川COO(以下、長川)の対談をレポートする。
デロイト トーマツが3つのレベルで描くWell-being社会の実現とは何か
デロイト トーマツ グループは、「Planetary/プラネタリー」、「Societal/ソシエタル」、「Personal/パーソナル」という3つのレベルで、Well-being社会の実現をAspirational Goalとして掲げている。セッションでは、なぜデロイト トーマツがこれらのWell-beingに包括的に取り組む必要があるのかという問いから講演が始まった。
最初に、木村が口を開く。「まずPersonal Well-beingが満たされないと、次のSocietalにいきません。そしてSocietalが満たされればPlanetaryまでいくと考えています。だからまず一番大事なのは、個人のWell-beingが満たされることです。
デロイト トーマツがなぜPlanetaryレベルまで目指すのかというと、我々にはある意味そういったところに社会的責任があるのかなと思います。規模感もそうですし、領域の広さとか、何より社会からの期待感というのもある。そして我々は手を伸ばせば貢献できる立場にいるというのも大きいと思います」
長川も続ける。「デロイト トーマツ グループは、社会からの信頼を得ることを常に考えています。そのため社会の公益に資するようなテーマ、難易度が高いテーマにも、率先して取り組む姿勢を見せることで、世の中から更なる信頼をいただけるようでありたい。この姿勢は我々のブランドやパーパスに色濃く反映されていると思っています」
Well-being社会の実現のために、二人が話すのはPlanetaryまでを見据えたバックキャスティングでSocietal、PersonalのWell-beingがあるということだ。このAspirational Goalに向けて、今現在どのような変化や歩みを感じているのだろうか。
「私たちグループの中と外、どちらかと言うと外のステークホルダーの皆さまの期待値の変化をより強く感じています。だからこそ、私たちはその期待に応えるために、もっと前に出て行かなければならない。グループのマインドは一定程度その意識を持てています。ただ、それがアクションになり、インパクトに繋がっていると日々感じられるかというと、まだという印象です。さらに前へ進んでいく必要があるように思いますね」
働くメンバーが輝く会社になるためには
グループ全体で、社会貢献活動やWell-being活動に注力していくという方針は固まった。しかし、会社の風土が追いついていない、業務が多忙で実現が難しいのではと危惧する声もある。実際そうしたメンバーの声に対して経営層はどのように考えているのだろうか。Well-beingを実感し、変化を生み出してゆくために必要な仕掛けを、二人が語る。
「Personal・Societal・Planetaryを分けて議論はできない。仕事を通じて、Personal Well-beingを感じる時を増やすところからではないでしょうか。我々は多くの時間を仕事に費やしていますので、働く時の気持ちの問題でも、自分がやっている業務自体が社会とか地球のために役立っていると思えることがひとつの大きな要素かなと思います。そういったところで業務従事できれば、実感がもうちょっと上がってくるのではと思っています」木村はこのように話し、個人のWell-beingはSocietal、Planetaryと繋がり合う以上、業務の中でそれらが実現できるような仕組みの重要性を説いた。
では、そもそもWell-beingを目指すデロイト トーマツはどのような会社なのか。長川が話す。
「木村さんがよく使われる表現として“メンバーがキラキラと輝いている会社”というのがあります。それは何かというと、ひとつは自身が、他者のために貢献できているという実感を持ってキラキラしているという部分。もうひとつは、周りの人が見て、この人キラキラしているなと感じるような状況を作るという部分があると思っています。それは自分自身が充足しているだけではなかなか生まれません。それぞれの人がユニークかつ世の中にとって新しいチャレンジをしている、それを一つひとつ超えていっている様が、周りの人に知らしめられる環境を作ることが大事かなと思っています」
社会課題は一人で解決できるものではない。オリジナルな挑戦と貢献実感に目を輝かせるメンバー一人ひとりによって彩られた組織により、知恵や勇気が湧き、数倍力が発揮できる会社。両氏はそんな絵をWell-beingな会社として描いているのだ。
社員・職員に向けたPersonal Well-being推進の取り組み方
Well-beingな会社については見えてきたが、その会社はメンバーに対して具体的には何を届けようとしているのだろうか。
長川はファームとしてメンバーがWell-beingなどの社会貢献活動により参画しやすくするために、「Well-being活動に参画できる様々な機会や環境の創出」と「社内コミュニケーションの更なる活性化」の2点を整備する考えを示した。
「メンバーが、PlanetaryやSocietal Well-being、またそれらを内包する社会貢献系の活動に参画いただけるような機会や環境をファームとして準備する議論をしています。その成果やフィードバックを社内でも共有することで、実際にやってよかったと感じてもらう。まだやっていない方には、自分もやってみたいっていう風に感じていただける社内コミュニケーションの活性化を図っていきたいと思っています。
メンバー一人ひとりに、仕事を通じたやりがいや充実感、適職感のようなものを持ってもらうのがWell-beingの目指したい姿です。精神的な充足感、あるいはそこから得られる自己肯定感や成長実感のほうが、時には大事であると思います。一つひとつ環境整備に向けた施策は展開していきたいと思います」
長川はこうした活動への参加が適切に「評価」されるべきという考えを示した。一方で、評価を目的とした参加はあるべきマインドではないとも話す。
「私のこだわりポイントで、自ら思いを持って、その戦略をちゃんと正しく理解して、自ら思いを持って参加している方は高く評価したいですし、されるべきだと思っています。逆に評価ポイントが付くのだったら嫌々だけど参加してみようかな、というのは私たちの望む姿ではありません。できれば共感を持って、Well-being 活動全般に自ら参加していただくような様が望ましいと思っています」
そして、それが結果的に仕事のパフォーマンスにも好影響を与えていくという。
仕事のパフォーマンス向上に資する必要なWell-beingとは何か?
個人のWell-beingを達成していくことで仕事のパフォーマンスも向上し、それがPlanetaryやSocietal Well-beingへと拡がっていくというわけだが、個人がWell-beingを達成できている状態とは具体的にはどのような状態なのだろうか。講演でも同じような質問がメンバーから寄せられ、木村が答える。
「目標となっている姿は、朝は仕事に就くのが楽しいとか、みんなと一緒にやって力が湧いてくるとか、色んなアイデアが出てくるとか、 1人じゃできないことができるっていう、そんな期待感をもって仕事と向き合える状態が、Well-beingを実現している状態だと思います。デロイトには、例えばコンサルタント、エンジニアも会計士も税理士も弁護士もいる。金融やアナリティクスの専門家、博士もいる。力をあわせるとすごい集団です。力を合わせることによる期待感をもって仕事と向き合える状態をWell-beingとした時、それを後押しするためには、どうしたらいいのか。それはそのチームの雰囲気だったり声のかけかただったり、Educationの方法だったり、いろんなやり方がありますよね。細かい色々な施策を組み合わせて成り立つものだと思います」
長川も「デロイトはグローバルで40万人規模の集合体です。ここは多様な専門性と価値観と技術があり、セレンディピティな出合いも含め刺激を得たり、自分だけでは解決できないことにアプローチできたりする場でもあります。1人で社会は変えられないけれども、デロイトの集合体であれば変革を起こすことができる。言い換えれば、クライアントと共にその会社やその先にある社会、そして世界を変えていくためには、こうしたデロイトのMDM(Multi-disciplinary Model)があってこそ。多様性を持つからこそ、世の中に対して価値を提供できるのではないでしょうか」と続け、木村の話す「後押し」のためには、3つのバスケットで分けた施策をスピーディーに実施していくことが重要だと説いた。
「Well-being実現を後押しするための細かい施策を、我々は3つのバスケットに分けています。1つ目は肉体的なWell-being、2つ目は精神的なWell-being、3つ目が社会的なWell-being実現のための施策です。
よくWell-beingというと、ワークライフバランスの所にばかりスポットライトが当たりがちなのですが、それは実は1つ目のバスケットに入る施策でしかなくて、それがどんなに満たされていても、そのチームの中での人間関係が悪いっていう精神的なバスケット、また自分が社会に貢献できているっていう社会的なバスケットのこの2つの要素が実現されてなかったら全然Well-beingではないわけですよね。
3つのバスケットそれぞれがバランスよく実現された状態を達成するべく、3つそれぞれにその施策を立案し、スピード感を持って実行できる部分から、ビジネス一体となって導入していっています。現状は、働き方改革でスポットライトが当たりがちな時間のところが一番先行しているかな。精神的なところ、社会的なところのアクションがまだ足りていないという感覚を持っています」
デロイト トーマツではトップ自らが社員・職員と共に考えるこうした機会を設けており、日本だけでなく海外ファームも含め、個人からはじまり社会、そして世界を変えていくWell-beingを今後も追求していく構えだ。
※本ページの情報は掲載時点のものです。
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