ワーケーション・リモートワーク・転籍、未来を変える「働き方三景」

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企業のデジタル化・DX推進で働き方にも変化が起きてきた。COVID19が加速させたリモートワークに加え、働き方はよりパーソナルにカスタマイズできる時代になりつつある。今回はワーケーション、リモートワーク、転籍を経験したデロイト トーマツ グループのメンバーから働き方の多様化について聞き、そこから会社が多様な働き方を提供する意義について考えていく。

ワーケーションで、クリエイティブ思考を高めてパフォーマンスを向上

2022年10月下旬、瀬戸内海に面した広島県三原市の須波・佐木島地域にデロイト トーマツ グループのメンバーはいた。ワーケーション導入に向けたモニターツアーで、10名程度の募集枠に120名を超える応募があったという。

「広島県三原市から、ビジネス・オフィス拠点の可能性を探り、ワーケーションの誘致につなげたいという要望もあり、それなら実際にやってみようと募集をかけました」

そう話すのはデロイト トーマツ グループ執行役員CTO(Chief Talent Officer)でDEIリーダーの大久保 理絵だ。

ワーケーションを実施した、広島県佐木島での業務の様子。
デロイト トーマツ グループ 執行役員 CTO(Chief Talent Officer)、DEIリーダー / 大久保 理絵
長年にわたりオペレーション改革コンサルティングに従事。業務、組織、ITの総合的なオペレーティングモデルの設計を強みとし、ロボティックプロセスオートメーション、シェアードサービスセンター構築、アウトソーシングアドバイザリーを含む豊富なサービス提供を幅広い業界で行っている。

デロイト トーマツ側としては、タレントエクスペリエンスの向上等を目的にワーケーションの正式導入を検討しており、実際に行うことでメリット・デメリットなどを整理したいニーズがあった。

「デロイト トーマツでは働く人たちの“時間”と“場所”の自由度をこれまで以上に拡げていこうという話は2021年度からありました。そんな中、場所の自由とは少し異なる、リゾート地やバケーションを過ごす場所として選ばれるような立地で仕事をすると、どんな変化が起きるのかも知りたかった。そこでデロイト トーマツがグループ全体として高い意識を持つ地方創生のエッセンスも組み込み、三原市でワーケーションのトライアルを行ったのです」

モニターツアー中のワーク環境のアンケートを取ったところ「well-beingであると感じられる」かつ「高いパフォーマンスの発揮につながっている」というポジティブな評価が多かったという。

「私自身も普段の働き方では、なかなかまとまって考える時間がとれず、ずっと進められていなかった将来像を描く作業もワーケーション中にすんなりできました。参加した方の中には同じような声も多く、やはり環境が変わり刺激があったのかもしれません」

クリエイティブ思考を活性化するためには、日常のルーチンとは異なる要素が求められるのかもしれない。電気技師で発明家のニコラ・テスラが交流電流という概念を思いついたのは、のんびりと散歩をしていたときであったし、哲学者のイマヌエル・カントは「哲学の道」を散歩しながら、考えを巡らせた。自然の中にいることで苛立ちやストレスから解放され、心が研ぎ澄まされる。

「気分が良くなることで、少し返信に躊躇していたメールを返せたり、後でやろうと思っていた心理的ハードルが高いタスクを何個もさばけたという声もありました」

仕事前にはヨガの時間も。

働き方の根本的なテーマについても参加者一同で考えを巡らせたという。

「瀬戸内海を臨む場所にあるゲストハウスやキャンピングカーで仕事をしていたのですが、ワーキングチェアでないこともあり、何時間も座っていると疲れがでてきてしまう。会社で働いていると、それなら椅子を変えましょう、という話になりますが、ここではそもそも快適な椅子を用意してまで8時間座り続けるべきなのか?という議論になりました。「場所を変える」ということは、居る場所を変えるだけでなく、座る場所を変えることも含まれる。デスクやソファー、ビーズクッションなど色々なバリエーションの場所がある方が、むしろ動きが生まれていいとか、広い視点で話せましたね」

瀬戸内に浮かぶ島に移動すると、通信環境も会社や自宅と比べて決していいわけではない。回線が不調で途中で終わらせた社内ミーティングもあったという。しかし、そこでもそもそも回線の不調で欠席しても進められた会議は、本当に参加が必要だったのかという議論も起きた。瀬戸内海の温暖な気候と風光明媚な景色が、より本質的な議論を可能にしたのかもしれない。

「私たちが目指しているのは、まさにこうしたパフォーマンスを上げていくことです。そういう意味で、今回のワーケーションは最初から福利厚生を前提に検討しているのではない。リラックスできる環境でパフォーマンスが上がれば、会社全体の成長のために積極的に実施していくべきだし、自治体と連携することで地域活性に繋がれば、同時に社会貢献にもなります」

リモートワークで、全国の優秀な人材を仲間に

デロイト トーマツ グループのデロイト トーマツ アクト(DTakt)は企業のDX戦略実現支援を担う。東京と福岡にオフィスを構え、end to endのシステム導入、運用保守活動などを行っている。

「日本のデジタル人材不足は喫緊の課題です。DTaktでも多くの引き合いが見込まれる中で、将来的にこのままの採用手法では質の高い人材を必要な数だけ採用するのは難しいと感じていました。COVID19のまん延で在宅の仕事も増えてきた中、首都圏に限らなくても日本全国にいる優秀な人材を、リモートワークでなら確保できるのではと考えたのです」

わずか1年でメンバーは300名を超え、居住地域は北海道から沖縄まで39の地域にまたがる。DTaktでフルリモートワークを管轄する福岡拠点のリーダーも 「COVID19の影響もあり、首都圏で働いていた方が地元にUターンしたり、Iターンで移住するといったことも追い風になりました。各地の優秀な人材が入社してくれるようになりましたが、東京勤務、福岡勤務だったら入社の選択肢には入らなかったでしょう」と話す。

宮崎県在住の中武 大輔は、2022年4月にDTaktに入社した。生まれも育ちも宮崎で、新卒の勤務先も同県の地銀だった。

「銀行員として、5年程営業を経験し、その後は7年程勘定系システムのエンジニアとして勤務していました。よりシステムに関わっていきたいという気持ちが高まり転職を検討していたのですが、SAPなどERPの導入や設計、支援といった業務を行える企業が宮崎にあまりなかった。そこで宮崎県というエリアを外して探していたところ、リモートワークが可能なDTaktを見つけたのです」

中武の仕事は、オンラインによるDTaktの朝会から始まることが多い。それぞれの状況を報告したり、相談したいことなどを語り合う。「分からないことがあれば、先輩にチャットで聞いたりもできる」と話す。「中途入社の私にも、数カ月の研修制度があってとても大切にされていると感じています」

チームメンバーが集まるモーニングミーティングの様子。
最上段中央:デロイト トーマツ アクト株式会社 シニアソリューションスペシャリスト / 中武 大輔

中武はストレスなく充実していると話すが、皆がフルリモートワークで不安を感じないよう、DTaktでは通常の会社以上にコミュニケーションに力を入れているという。

具体的には入社式はリアルで開催し、懇親会を行う。オンラインのランチ会を行って親交を深めたり、チャットで一人ひとりの相談事に答えたりもしていく。メンバーが日本全国にいるので、地方サミットと銘打って各地の魅力を各地のメンバーがプレゼンテーションするイベントも実施している。

DTaktが運営する国内初のデジタル人材育成・ソフトウェア開発地域拠点、「デロイト キューキャンパス」(2021年福岡に設立)の 新卒メンバー。オンライン研修が一段落し、懇親会とDivision Lead面談を兼ねて全国より集合した。

諦めないで課題に向き合えば、答えは出てくる。

「会社の制度というのは、なかなか一人で調べても調べきれないことが多い。デロイト内部はキャリアプランが多様化していてフレキシブルなので、声をあげたらどうにかなる。失うものはなにもないというスタンスで、どんどん相談しています」

デロイトオーストラリアで働くマネジャーの川口 侑子は、オンラインの取材でこう答えた。彼女は東京の有限責任監査法人トーマツに務めていたが、夫がシドニーへ転勤することになった際にキャリアについて考えた。

「元々シアトルのオフィスで2年間働いた経験があり、その後結婚し、夫の転勤話と同時期に妊娠したので、夫婦でオーストラリアに行く方法を考えました。会社の制度として帯同休暇もありましたが、それだと2年(配偶者が同社所属の場合は4年)しかない。夫の転勤は4年から5年程度ということだったので、帯同休暇では足りませんでした」

退職か休職しかないのだろうか?しかし、川口は諦めずに上司に相談をしてみた。

「そうしたら、いいじゃないか!と言われて。でも制度が、と話すと、それなら転籍制度があるということを教えてくれました。もちろんデロイトオーストラリアの需要があるかどうか次第ではありましたが、相談をしたことで新しい道が見えてきました」

結果として、彼女は仕事を辞めずに家族でオーストラリアに向かうことができた。まさに失うものはなにもないスタンスで声を上げた成果だろう。

3連休で家族と弾丸旅行したウルル(エアーズロック)にて。
デロイト オーストラリア所属 監査マネジャー / 川口 侑子

「私の業務は監査ですが、デロイトはグローバルでその手法が統一されているしマニュアルもあります。日本語が英語になっただけなので、トランジションもスムーズです。一般的な企業だと配偶者が海外転勤になると、現地で働けないケースも多いと思いますが、デロイトは世界中にオフィスがあり、人材をフレキシブルにアレンジしてもらえるのが嬉しかったですね」

働き方の自由度を高めて、企業の成長を加速させていく

川口の話を聞いて、大久保が次のように話す。

「デロイト トーマツ グループではジョブポスティングシステムを変革してより多様なキャリアデザインの実現に向けて取り組んでいます。将来的にはアジアパシフィックやグローバルにも広げ、もっと自由にグループ内の仕事を経験できるようにしたい。だから諦める前にまず誰かに相談するというのはいいですね。ゆくゆくは相談しなくても様々な選択肢が見えるようにしたいです」

デロイトでは、働き方の改革を今まで以上に推進していくつもりだと大久保は話す。それはなぜだろうか?

「日本は人口減少や働き手不足といわれています。だから人数を3倍にして3倍のビジネス成長を目指すといったことは難しくなっていきます。しかし、ピンチはチャンス。私たちは、例えば2倍の人数で3倍のビジネス成長を目指すように考え方をシフトする。もちろん、それを実現するには今と同じ働き方では到底追いつかない。メンバーが自分にとって最適な働き方を選択でき、その中でパフォーマンスを最大限上げていく。そしてワーケーションなどで刺激を受けて、イノベーティブなアイデアを出す。そんな世界観をイメージしているのです。福利厚生を拡充するのではなく、パフォーマンスをあげるための選択肢を広げるチャレンジをどんどんしていきたいと考えています」

ワーケーション中は広島県内屈指の紅葉の名所としても有名な佛通寺で坐禅も体験。

過去には、少ない人数で大きい成果をあげるなら、全員が馬車馬のように働けばよいという時代もあったかもしれない。しかし、今はDXも進み単純作業はAIやロボットが自動的に行ってくれる。現行のテクノロジーを用いて想定以上の成果を上げるためには、本質的な変革が求められるが、その発想は人からしか生まれない。大久保らがデロイト トーマツの働き方変革を進めることでメンバーにWell-beingを届けるだけでなく、グループ全体の成長を促すシステムが形成されていくのかもしれない。

※本ページの情報は掲載時点のものです。

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