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【連載コラム】FC今治~地方創生Next~ 第2回「Bari Challenge University」前編

なぜサッカークラブが次世代のチャレンジの場を創るのか?

デロイト トーマツ コンサルティングがソーシャルインパクト・パートナーとして支援するFC今治では、次世代の社会変革者を育成するためのインキュベーションプログラム「Bari Challenge University(バリチャレンジユニバーシティ:以下BCU)」を主導し、今治市や地元経済界と共に開催しています。事務局で全体企画を統括する今治.夢スポーツ 経営企画室の中島啓太さんに、BCU開催の背景や第2回となった今年(2017年)の企画についてお話を伺いました。

全国の若者が今治に集いチャレンジするきっかけを創る

Q なぜサッカークラブであるFC今治がBCUを開催するのでしょうか?開催のきっかけを教えてください

中島さん:FC今治を運営する今治.スポーツの経営理念は、「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」です。この理念に基づいて、サッカーを通じた人材育成や国際交流はもとより、サッカーにとどまらない自然塾を通じた環境教育にも取り組んでいます。BCUは、「FC今治アドバイザリーボードのメンバーの知見を、今治を中心とした若者に伝え、新しいチャレンジが生まれる機会を創りたい」という、岡田武史オーナーとアドバイザリーボードのメンバーの想いから始まりました。FC今治には、多摩大学大学院教授の田坂広志さんやニュースキャスターの国谷裕子さん、東京大学教授で文部科学大臣補佐官の鈴木寛さん、元プロ野球選手・監督の古田敦也さんら各界の有識者・著名人15名のアドバイザリーボードの方々がいます。

かねてから岡田オーナーには、「今の貨幣経済、民主主義はいずれ破たんする。次世代のために、社会を変革するリーダーを育てたい」という思いがありましたが、一昨年アドバイザリーボードの方々と岡田オーナーが議論した際に、「今治から次世代の社会変革者を生み出そう」という構想が生まれました。 

Q「社会変革者」はどのような人のことでしょうか?

中島さん:岡田オーナーから直接聞いたことはありませんが、“ビジョンを描ける人”のことだと理解しています。何のためにやるのか、何をするのかではなく、その人が掲げる夢やビジョンが共感を呼ぶ。岡田オーナーとリーダー像について話をすると、“高い山に一生懸命上り続けることをあきらめない人、その姿を見せられる人”といいます。これを、社会全体を巻き込んでできる人こそが、社会変革者なのだと思います。

Q 今年は2回目となりましたが、企画のポイントについて教えてください

中島さん:まず「BCUは何をする“場”なのか?」を、「全国の若者が今治に集い、夢や仲間や新たな考え方に出会い、世界中で躍動する"きっかけ"を創り出すこと」というビジョンに込めて、明確化しました。そして、これを具現化するためのアクティビティも再定義しています。

次世代を担う若者が、新たな夢や目標に共に挑戦する仲間や方法に出会う場所としてのワークショップ、生み出した新しいアイデアや目標を実際に世の中で挑戦し、夢を実現するための場所として、クラウドファンディングやアドバイザリーボードの助言によるプロジェクト化支援(Project “Challenge”)、そして、卒業生同士のつながりを醸成するための同窓会ネットワークです。

「議論する場所」「アイデアを実現する場所」「OBが集う場所」を創ることで、若者がチャレンジできる継続的な仕組みを作りたいと考えています。昨年参加した15組のうち1組がBCUの後も隔週でビデオ会議等をして、内閣府の地方創生政策アイデアコンテストに参加して賞をもらったり、市の事業に申請をしたりとチャレンジを続けています。周りのサポートを仕組化することで、若者が実際の社会で“バリチャレンジ”ができるのではないか。煮え切らない思いを持ち続けるよりも、若い人たちが思い切ってチャレンジできる、実行できる仕組みを作りたいと思いました。

BCUを通じ「議論する場所」「アイデアを実現する場所」「OBが集う場所」を全国の若者に提供する事で、若者がチャレンジできる継続的な仕組みを作ります
【Bari Challenge Universityにおける活動の全体像】
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FC今治を運営する今治.夢スポーツ 経営企画室の中島啓太さん
Q 5月末に初めてのOB会も開催しました。どのような内容だったのでしょうか?

中島さん:卒業生同士が近況を報告しあい、今年のBCUのワークトピックスについてもアイデアを出し合うことを目的にOB会を開催し、昨年の参加者約100名のうち、25名が今治に戻ってきてくれました。古田敦也さんや建築家の鈴木エドワードさんらFC今治のアドバイザリーボードの皆さんも参加してくださいました。

先ほどのグループの例もありますが、BCUの参加をきっかけにNPO法人や事業を立ち上げた人等、みんなそれぞれに新しいチャレンジをしていることがわかりました。また、OB会がきっかけとなり、卒業生チームも1組今年のBCUに参加し、ファシリテーターとしても運営をサポートしてくれました。卒業生同士が交流する場を作ることによって、将来的には卒業生自身がこのサイクルを回していける仕組みを作りたいと思います。

この地域では、高校を卒業したら半分くらいは就職や進学で今治を出てしまう若者が多い中、BCUを卒業した全国の若者が今治に戻ってきてくれたら、地域にも貢献できると考えます。                

Q 今後の期待やこれからBCUに参加する方へのメッセージをお願いします

中島さん:“できないこと”に立ち向かうには、できるロジックをたてるのではなく、ありたい姿や共感できるビジョンを描けるかが大事だと思います。BCUが、夢や仲間や新たな考え方に出会い、一歩を踏み出す"きっかけ"になることを期待しています。来年以降も志を持った若い人たちがBCUにチャレンジしに来てくれることを楽しみにしています。

5月に開催したバリチャレンジユニバーシティOB会の様子