フェンシング・サーブル 日本代表 徳南堅太選手インタビュー

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スポーツが生み出す力で、社会に“Impact”を

〜フェンシング・サーブル 日本代表 徳南堅太選手インタビュー〜

デロイト トーマツ コンサルティング(以下DTC)は、スポーツ文化振興の社会貢献の一環として、フェンシング男子サーブル日本代表の徳南堅太選手をサポートしています。2016年8月にブラジル・リオデジャネイロで開催された第31回オリンピック競技大会への出場を経た現在、2020年東京大会とその先を見据え、今後のフェンシングの未来に必要なことやスポーツの生み出す価値について、徳南選手が語ります。

オリンピックが与えてくれたものーフェンシング界の未来への視点

「リオ五輪では目標にしていたメダル獲得には至りませんでしたが、自分の中で大きな変化がありました。これまでは『自分だけ強ければいい、勝てばいい』という考えを持っていたのですが、リオの経験を経て、個人だけでなくチームやフェンシング界全体のことを考えるようになりました。

オリンピックはアスリートであれば誰もが目指す 4 年に 1 度のスポーツの祭典。そこで味わう空気感や感動を自分だけでなく、チャンスのある多くの選手に経験してほしいですし、チームでメダル獲得を成し遂げられたらその喜びは何倍にもなると思います。2020年の東京大会は、個人戦だけではなく団体戦もあるので、オリンピアンとして、出場経験者の立場として、今後はチームを牽引する役割を担うべきだと自覚しています。

また、東京大会に向けてレガシーの必要性がさかんに議論されていますが、フェンシング界の未来のために子供たちに今よりも良い環境で競技に専念できるようにすること、スポーツが生み出す力で社会に対して貢献し、インパクトを生み出すことにもチャレンジしたいと考えるようになりました。」

スポーツが目指すべき持続可能なエコシステムー新たな機会や価値創出の仕組みづくりの必要性

「リオ五輪という大きな大会を終えたのを区切りに、1年間ほど抱えていた足の怪我の治療に専念しました。もちろん東京大会でメダルを獲る為の治療です。

競技復帰までの間、会社で勤務しながら、これまで以上にコンサルタントをはじめとする社員のみなさんと意見交換をする機会があり、自分が取り組む競技、フェンシング界を変えていくために必要なことをいままでとは異なる視点から考えることができました。

DTC では、持続可能な社会の構築という観点から、個々のクライアントへのサービスの提供という枠をこえて、様々な社会課題の解決につながる新たな事業機会や価値の創造を目指しています。そのために、民間企業、政治家、行政・国際機関、 NGO ・ NPO 、学術機関などと幅広く連携し、グローバルな視座から社会課題解決を加速する持続可能なエコシステムの創出を進めています。この考え方は、日本のフェンシングが強くなるため、そしてフェンシング界の未来を持続可能なものにするためにもあてはまる考え方なのではないか、ひいてはそれが選手個々の力を強めていくことにも繋がるのではないか、と考えるようになりました。」

フェンシング強豪国・韓国の事例-自治体を核としたスポーツのエコシステム

「例えば、私がフェンシング留学をした強豪国・韓国では、市などの自治体レベルで多くのフェンシングの実業団チームが存在します。競技に専念しながら、公務員またはそれに準じた職員として採用され、一定の待遇が保証されています。私が滞在した際にも街の至る所にフェンシングの練習場が見られました。子供たちは、幼少期からトップアスリートの存在を身近に感じることができ、練習場や指導者もいることから、競技を始めるきっかけも十分ある。指導者も一定の需要があることから、引退後のセカンドキャリアの不安感も比較的薄いといわれます。スポーツに対する国としての考え方やサポート体制には違いはありますが、これから専門的にスポーツを始める子供たちも身近に目指すものがあれば頑張れますし、長期的に競技を継続させるにあたって親も背中を押しやすいです。

一方現在の日本のフェンシング界の構図を見てみると、小学校以下、中学校、高校、大学までは部活動または地域のクラブチームに属しながら競技をするのが主ですが、社会人なった途端、競技を続けていく環境が一気に減り、ほとんどの選手が競技をメインに活動できないのが現状です。」 

スポーツが生み出す力で、社会に“Impact”を -アスリートやスポーツが社会に還元できる価値

「韓国は、自治体が中心となって、アスリートと地域をつなげエコシステムを形成していますが、競技継続、競技力向上やセカンドキャリアといったアスリート自身のメリットはもちろん、トップクラスの選手が地域の子供たちと共に練習や交流をし、身近に触れ合える環境ができることで、競技が地域に根付き、地域一体となって応援ができたり、その地域にも良い循環を生み出せると思います。

私自身、現在出身の福井県からお話を頂き「希望学」というテーマで、地元の中学生のみなさんに、夢を持つことの大切さについて講演を行いながら、フェンシングを紹介しているのですが、自分の体験を通して、次世代のみなさんが夢を持つ、なにかにチャレンジするきっかけに少しでもなっていることにとてもやりがいを感じますし、目には見えない価値ではあるものの、トップアスリートが社会に貢献できることのひとつだと感じています。

また、子供たちだけでなく、シニアの方にもフェンシングが貢献できることはあると思っています。意外に思われるかもしれませんが、フェンシングはシニアになってからでも始められる競技です。経験者が少ない為、皆ほとんど同じレベルで始められるという事もありますし、フェンシングは「戦いのチェス」といわれる程、頭を使う競技なのです。若手ほど機敏に体を動かせなくても戦術を使って勝利する事ができます。頭と体を同時に使いながら楽しめる生涯スポーツと言えるでしょう。街に練習場やアスリート、指導者がいれば、健康促進を兼ねてセカンドライフの趣味のひとつとして始めてみるきっかけにもなりますし、シニア世代向けの国際大会も世界各国で開催されていますから、フェンシングをきっかけに海外にいったり、世界中に新たな仲間を作るきっかけにもなるかもしれません。」
 

福井県 希望学「若者の夢応援プロジェクト」での講演の様子(福井県敦賀市立気比中学校)

”ポテンシャルスポーツ“フェンシングのレガシーやエコシステム形成のために

「スポーツが目指すエコシステムとは、単に競技力向上やメダル獲得だけでなく、社会に対する貢献、競技の普及や発展に繋がる新たな事業機会やスポーツの価値(スポーツに学び人生に活かしていく事)そのものを高める事を目指すものではないかと考えます。

そのためには、政府・自治体・学校・JOC・民間企業・スポーツ団体などが幅広く連携し、各競技や機関の枠を超えて、スポーツの価値の底上げを行い、人づくり・地域に貢献することで社会全体に好影響をもたらす仕組みが必要だと思っています。こうした仕組み(エコシステム)のベースの上に、選手をはじめすべての関係者が力を合わせて取り組むことで、結果として個々の選手の実力も上がり、メダル獲得にもつながっていくのだと信じています。

2020年に向けて自身ができることとして、まずはフェンシングという競技をさらに世の中に認知してもらうことから取り組みます。昔よりは認知度は上がりましたが、フェンシングはまだまだマイナースポーツです。マイナーだとネガティブなイメージがあるので、私はポテンシャルスポーツと呼んでいます(笑)。「フェンシングって何のポテンシャルがあるの?」「実はね~」 というところから話も膨らみます。

東京オリンピックまであと 3 年になりますが、自身のため、そして日本のフェンシング界のため、何が残せるのかという事を考えながら、自らがこのモデルを実証できるように取り組んで行きます。最終的にはフェンシング競技を、スポーツ界全体をリードする様な存在にしたいとまで考えています。」

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