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不確実な時代に強みを再定義-「現場エコシステム」で確実なる底力

増大する不確実性の背景にある3つの世界的潮流に対して、日本企業はどのような強みを意識して新たな競争優位を構築するのか――。そのための3つの指針とは何か?


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日本を取り巻く3つの潮流

ついには「失われた30年」に突入

米中貿易戦争の勃発、デジタルエコノミーの到来、地球温暖化の進展―。近年、日本を取り巻く外部環境はますます不確実性を高めている。破壊や淘汰をもたらすような地殻変動が起きているともいえる。そんな状況下に置かれ、日本企業は先手を打ってビジョンを示して行動しているだろうか?問題解決に向けてリーダーシップを発揮しているだろうか?残念ながら、現状では対応が後手に回っていると言わざるを得ない。

「日本企業は周回遅れ」とよく言われる。「失われた10年」が「20年」になり、ついには「30年」になろうとしている。もはや、手をこまぬいているわけにはいかない。実のところ、日本企業は外国企業には真似できない独自の強みを内包している。今こそ、自らの足元を見つめ、何が強みなのか認識し再定義することで、逆境をはね返しチャンスをつかむ方向性を打ち出すべきだ。不確実性の時代だからこそ「確実なる底力」を基軸として、日本企業が進むべき指針を示すことが求められている。

背景にポストグローバル化・デジタル化・ソーシャル化

不確実性が高まっている背景には、三つの潮流がある。一つ目はポストグローバル化。現在、自由貿易体制を軸にしたグローバル化への反動が起きている。米国は「米国第一主義」を掲げ、欧州各国ではポピュリズム旋風が吹き荒れ、英国は欧州連合(EU)離脱を決めた。米中貿易戦争は深刻化する一方だ。つまり、グローバル化とは正反対の「フラグメント化」が進んでいる。日本企業はこれまで貿易立国としてグローバル化を成長エンジンにしてきた。今後はグローバル化の果実を追求していくと同時に、フラグメント化への対応も求められる。

二つ目はデジタル化。デジタルエコノミーの到来に伴って、国家や業種といった枠組みを越えてさまざまなステークホルダーが相互につながりを深めている。ここにはフラグメント化とは逆の力学が働いている。現にGAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)の台頭が象徴するように、データを握るグローバルプラットフォーマーが圧倒的な支配力を保持するようになっている。デジタルエコノミーで米国・中国・欧州勢が先行するなか、日本企業は立ち位置を確立しなければならない。

三つ目はソーシャル化。国際社会が共通して直面する社会課題が深刻さを増している。地球温暖化に伴う環境破壊やプラスチックによる海洋汚染が代表例だ。そんななか、国連が中心となって「SDGs(持続可能な開発目標)」が設定されたり、グローバル投資家の間で「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」が盛んになったり、国際的な取り組みが進んでいる。企業が持続的な成長を遂げるうえで社会課題解決への貢献が欠かせない要素になりつつある。