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DTC CSR Report 「被災地のまちづくりにおけるPro Bono活動の意義と役割」

岩手県陸前高田市 久保田崇 副市長へのインタビュー

はじめに

人口減少の進む日本社会において、いかに復興後の人口を維持していくか。2011年3月11日、東日本大震災による津波で多大な被害を受けた岩手県陸前高田市では、復興事業完了後に顕在化するであろう課題の解決に向けて取り組んでいます。2014年4月より、デロイト トーマツ コンサルティング(DTC)のProBono支援メンバーと市の職員の方々との間で、当該課題に対応すべく、まちづくりの施策を検討する協働プロジェクトが始まりました。今回は、プロジェクトのパートナーとしてDTCを選んだ背景、協働により感じた職員の変化、今後期待する役割について、久保田崇 副市長(当時)にお話を伺いました。

復興後のまちの姿を見据え、人口問題に取り組む

2015年7月25日当時の岩手県陸前高田市 副市長 久保田崇氏にお話を伺いました。

‐ まず始めに、プロジェクトを実施することになった背景についてお伺いできますでしょうか。

貴社とのプロジェクトが始まったのは、2014年の4月でした。震災から3年が経過し、震災復興の計画ができあがった頃です。瓦礫処理が完了し、大きな課題である高台移転・住宅再建を実行に移す段階になっていました。このように復興計画が実行に移されていく一方で、震災前からの懸念事項であった少子高齢化やそれに伴う人口減少及び人口の流出が、課題として浮き彫りになってきていました。
もちろん復興には最優先で取り組まねばなりません。他方で、人口減少・人口流出にも手を打っておかなければ、インフラが将来戻ってきても人が残っておらず、何のために復興したのだろうということになりかねない。そういった懸念に対し、何らかの策を打たなければと考えていました。

‐ 復興した先に町が直面するであろう課題に着手する、という狙いがあったのですね。ではDTCとはどのようなきっかけでプロジェクトを実施することになったのでしょうか。

先にあげた人口問題への対応を考えていた折に、「Work for 東北*1」というイベントで貴社の方とお会いして、当市が抱える課題について一緒に考えて行きましょうという提案をいただきました。貴社のようなグローバル企業とお仕事をさせていただくのは当市にとって初めてのことだったのですが、課題解決のために挑戦しようということで、プロジェクトを実施することにしました。

*1 Work for 東北(外部サイト):
官と民間企業、そして個人の能力をマッチングさせることで、東北の復興を支援し、より強く、柔軟な地域づくりを目指すプロジェクト。(Work for 東北ホームページより)

陸前高田らしい暮らしのあり方を未活用資源に見出す

‐ プロジェクトではどういったことされてきましたか。

少子高齢化や人口減少を踏まえ、定住人口の増加という観点でアイデアをいただきたい、ということで始めさせていただきました。色々なリサーチを行っていただく中で、当市が持っている未活用資源に着目し、それを活用するのが良いのではないかという示唆をいただきました。当市は基本的に海の町として認識されていますが、実は海から少し離れるともう、山なのです。海の町であり、山の町でもある。ところが海は震災による津波で被害を受けました。山についても、以前は林業が割合盛んで戦後にはかなり植林もされていましたが、木材価格の低下など様々な要因が重なって林業自体が停滞していました。資源としては市の面積の8割を占めているのに、全然活用できていないという状況に陥っていたのです。この資源をうまく活用できないか、ということで議論を進めていきました。結果として古くて新しい林業、いわゆる「自伐型林業*2」を順次取り込んでいくというアプローチに辿り着きました。

現在貴社には、当市がその古くて新しいやり方を取り入れながら、どのように林業を活性化させていくか、どのように林業であるいはその関連産業で生活していく人を増やしていくか、延いてはどのように経済基盤の確立を人口増加へつなげていくか、という点で戦略の構築と実行支援をしていただいています。

*2自伐型林業:
大型で高性能な機械を利用せず、チェーンソーや小型ユンボ、軽トラックなどの低投資で個人あるいは少人数が参入できる林業。間伐材からの収入を得るのと同時に、間伐を定期的に実施することで森林を整備し、質の良い木材や副産物を生産することを目標とする。

肌感覚を可視化していく

‐ この一年プロジェクトを実施して、全体的なご感想はいかがでしょうか。

プロジェクトには地元の職員が参加させていただいています。やはり地元のことなので、指摘されることについて肌感覚では分かっていることが多くありました。ただ貴社は、それを「数字の上でこうなっているとか、近年の動向としてはこうだとか、業界全体でどうだ」という風に、一つ一つ押さえてくださるので、検討の過程や根拠を可視化することができました。市役所では普段そこまで詰めずに意思決定していることもあるので、仕事の進め方や思考方式は非常に勉強になりました。

‐ プロジェクトを実施したことで、プロジェクトメンバーの皆様に変化はありましたか。

特に若い職員は、論理的に筋道を立てて結論を導いていく経験をして、非常に刺激を受けているように思いました。また本プロジェクトは町の新しい方向性や可能性を見出すプロジェクトであるため、どの職員も高いモチベーションを維持してここまで来ているなと思います。

‐ 特に若手の方は、以前に比べて積極的に発言されるようになりましたね。

そうですね。以前は若年者が年長者に遠慮してなかなか発言できないこともありましたが、貴社は若手の方が積極的にリードされていく文化なので、そういった点でも刺激を受けていたと思います。

思考方式を地方行政の中に移植する

‐ 最後に、地方創生・震災復興の文脈で、今後DTCのようなコンサルティング会社や民間企業に期待される役割についてお教えいただけますでしょうか。

考え方ですよね。こういう風に考えていけば、こういう結論が出せるという、考え方。市町村が特にそうだと思います。地方創生はどこの町でも取り組まなければならない課題ですが、きちんとその町が持っている資源を分析して、活用できるように組み立てることができていない部分があります。そういった意味で、コンサルティング会社や民間企業から学ぶところが市町村にはあると思います。

また、現在はCSRという形で当市の支援をしていただいていますが、震災から今年で4年経過したことを踏まえ、今後は企業にも一定のメリットがあるような関係を構築し、協働できればと思っています。そうすれば、お互いにとって利益につながり、結果として地域も発展できるのではないでしょうか。

‐ 久保田様、本日は貴重なお話をありがとうございました。
 

*写真左から 陸前高田市 農林水産部農林課 主事 松夏生 氏、陸前高田市 農林水産部農林課 課長補佐 山本郁夫 氏、DTC 執行役員 CSR推進室長 長川 知太郎、陸前高田市 前副市長 久保田崇 氏、DTC コンサルタント 三輪和子、陸前高田市 農林水産部 部長 千葉徳次 氏

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