ニュースリリース
「自治体コミュニケーションの未来を展望する調査 2019」発表
8割の市町がIT技術を活用した新たな住民参画の手法に関心を持つ
・8割の市町がIT技術を活用した新たな住民参画の手法に関心を持つ
・住民参画の手法の課題は「参加者の年代の偏り」(8割)、「参加人数の確保」(6割)
・過半数の市町で18歳未満の住民が地域への意見表出する場がなく、意見収集が困難
2019年7月8日
有限責任監査法人トーマツ(東京都千代田区、包括代表 國井泰成、以下トーマツ)は、慶應義塾大学SFC研究所上席所員、岩田崇氏の監修の下、全国の市町を対象に実施した「自治体コミュニケーションの未来を展望する調査2019」の結果を発表します。本調査は、住民と地方自治体のコミュニケーション(住民参画や広報・広聴)の現状や課題、地方自治体の問題意識を明らかにし、今後あるべき地方自治体におけるコミュニケーションの未来を展望することを目的に実施し、565件の有効回答を得ました。
今回の調査で、9割を超える地方自治体において、住民との双方向のコミュニケーションが政策形成に有効と認識されていることが確認できました。その一方で、現状の住民参画の手法は参加年代の偏りや参加人数の確保などで課題があり、住民から得られた意見を施策の検討に活用するには難しさがあることがうかがえます。また、ターゲットに合わせた広報・広聴の実施や、IT技術を活用した住民との意見交換などを実施している市町は限定的であり、課題の改善に向けた取組みは十分ではありません。しかしながら、8割の市町がIT技術を活用した住民参画に関心を示しており、今後テクノロジーを活用して住民参画の手法が大きく変化していく可能性があると考えられます。
慶應義塾大学SFC研究所上席所員、岩田崇氏のコメント
現状の住民参画の課題を解決し、住民の意見を施策形成に活用していくことは、内閣府が発表した「Society 5.0」*の文脈にも沿うものです。今後、地方自治体におけるAI活用など、先端技術を導入する場面では一層、住民意見の尊重が求められてくると考えられます。また、この住民参画の変化は、改めて住民自治の在り方を問う重要な論点と認識しています。
*Society 5.0: サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)
■主な調査結果
1.地方自治体は住民とのコミュニケーションの有用性を認識している
住民との双方向のコミュニケーションは政策形成に有効だと思うか質問したところ、296件、52.7%が「とても感じている」、223件、39.7%が「やや感じている」と回答し、9割超の市町が住民との双方向のコミュニケーションが政策形成に有効であると考えていることが分かりました。
自治体組織として、どのような存在であるべきかについては約6割の市町が「市民と共に、地域の課題に対処するプラットフォーム型の役所」と回答し(図表1)、地域をあげて住民に聞きたいテーマや課題については約7割の市町が「ある」と回答しました(図表2)。価値観や生活スタイルが多様化する今日では、住民のニーズを直接確認することや、住民と共に課題解決に向かう「協働・協創」を重要と捉える認識の高まりがうかがえます。
図表1 自治体組織としてどのような存在であるべきか
図表2 地域をあげて住民に意見を聞きたいテーマや課題
2.地方自治体は現状の住民参画の手法に多くの課題を感じている
現状の住民参画の手法について、課題と思うことを聞いたところ、79.6%が「参加者の年代の偏り」、63.4%が「参加人数の確保」との回答でした(図表3)。住民の意見収集において、意見の収集が困難な住民層について質問したところ、72.5%が「大学生」、48.2%が「就労者」、40.2%が「中高生」と回答しています(図表4)。地方自治体は住民の意見収集の場面において、偏りが生じていることを認識するなど、現状の住民参画の手法に多くの課題を感じていると言えます。
図表3 現状の住民参画の手法の課題(複数回答可)
図表4 意見収集が困難な層(複数回答可)
3.住民とのコミュニケーションの課題改善に向けた取り組みは不十分
年代、属性ごと等に対象を分けた広報・広聴の実施状況については、「実施していないが必要性を感じる」との回答が約7割を占めました(図表5)。また、選挙権を持たない18歳未満の住民の地域経営、政策形成への参加、意見表出の場の有無については、半数が「ない」と回答しています(図表6)。多くの市町が住民とのコミュニケーションの必要性を感じている一方で、18歳未満の住民の意見表出の場を設けていないなど、課題改善に向けた取り組みは不十分と言えます。
図表5 ターゲットに合わせた広報・広聴を実施しているか
図表6 18歳未満の住民の地域経営、政策形成への参加、意見表出の場があるか
4.今後IT技術を活用して住民参画のあり方が変化していく可能性がある
IT技術を活用した、住民との双方向の意見交換手段を行政運営・政策形成に活用しているかについて質問したところ、81.0%が「活用していない」と回答しました(図表7)。また、IT技術を活用した、新たな住民参画の手法に関心があるかという質問には、25.3%が「とても関心がある」、53.1%が「やや関心がある」と回答し、約8割の市町がIT技術を活用した新たな住民参画の手法に関心を示していることが分かりました(図表8)。現状ではIT技術を活用できていないものの、その関心の高さから、今後IT技術を活用して住民参画のあり方が変化していく可能性があると言えます。
図表7 IT技術を活用した、住民との双方向の意見交換手段を行政運営・政策形成に活用しているか
図表8 IT技術を活用した、新たな住民参画の手法に関心があるか
■「自治体コミュニケーションの未来を展望する調査2019」 概要
調査目的 |
住民と地方自治体のコミュニケーション(住民参画・広報・公聴など)の現状や課題、地方自治体の問題意識を明らかにし、今後あるべき地方自治体におけるコミュニケーションの未来を展望すること |
調査主体 |
有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部 パブリックセクター |
調査期間 |
2019年2月20日~2019年3月15日 |
調査対象 |
全国の市・町1535 (792市、743町) |
調査方法 |
郵送によるアンケート調査 |
有効回答件数 |
565件 |
設問数 |
20問(記述除く) |
報道機関の方からのお問い合わせ先
有限責任監査法人トーマツ 広報担当 新井、内山
(デロイト トーマツ コーポレート ソリューション合同会社)
Tel: 03-6213-2050
Email: audit-pr@tohmatsu.co.jp
デロイト トーマツ グループは、日本におけるデロイト アジア パシフィック リミテッドおよびデロイトネットワークのメンバーであるデロイト トーマツ合同会社ならびにそのグループ法人(有限責任監査法人トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、デロイト トーマツ税理士法人、DT弁護士法人およびデロイト トーマツ コーポレート ソリューション合同会社を含む)の総称です。デロイト トーマツ グループは、日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループのひとつであり、各法人がそれぞれの適用法令に従い、監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務、法務等を提供しています。また、国内約40都市に1万名以上の専門家を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はデロイト トーマツ グループWebサイト(www.deloitte.com/jp)をご覧ください。
Deloitte(デロイト)とは、デロイト トウシュ トーマツ リミテッド(“DTTL”)ならびにそのグローバルネットワーク組織を構成するメンバーファームおよびそれらの関係法人のひとつまたは複数を指します。DTTL(または“Deloitte Global”)および各メンバーファームならびにそれらの関係法人はそれぞれ法的に独立した別個の組織体です。DTTLはクライアントへのサービス提供を行いません。詳細は www.deloitte.com/jp/about をご覧ください。
デロイト アジア パシフィック リミテッドはDTTLのメンバーファームであり、保証有限責任会社です。デロイト アジア パシフィック リミテッドのメンバーおよびそれらの関係法人は、オーストラリア、ブルネイ、カンボジア、東ティモール、ミクロネシア連邦、グアム、インドネシア、日本、ラオス、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、ニュージーランド、パラオ、パプアニューギニア、シンガポール、タイ、マーシャル諸島、北マリアナ諸島、中国(香港およびマカオを含む)、フィリピンおよびベトナムでサービスを提供しており、これらの各国および地域における運営はそれぞれ法的に独立した別個の組織体により行われています。
Deloitte(デロイト)は、監査・保証業務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、リスクアドバイザリー、税務およびこれらに関連する第一級のサービスを全世界で行っています。150を超える国・地域のメンバーファームのネットワークを通じFortune Global 500®の8割の企業に対してサービス提供をしています。“Making an impact that matters”を自らの使命とするデロイトの約286,000名の専門家については、(www.deloitte.com)をご覧ください。