デロイト トーマツ、日米英における企業の経営テーマの動向を投資家向け開示情報から分析 ブックマークが追加されました
ニュースリリース
デロイト トーマツ、日米英における企業の経営テーマの動向を投資家向け開示情報から分析
- 日本は原材料価格の高騰、地政学、サステナビリティ、サプライチェーンといった記載が急増
- TCFD提言が開示を推奨する4項目について開示した企業は、プライム市場に上場する企業の8%
- 人的資本に関して日本の上場企業の約2割が多様性について言及、開示義務化の米国では6割に
- 事業等のリスクでのサイバーセキュリティに関する記載率は米国で高く、日英においては半数程度にとどまる
2022年8月19日
デロイト トーマツ グループ(東京都千代田区、CEO:木村 研一)は、日本、米国、英国企業の経営テーマにおける注力分野の動向を把握する目的で、有価証券報告書やForm 10-K、Annual reportをテキストマイニングで分析したレポート「テキストマイニングを用いた日米英における有価証券報告書・年次報告書の開示動向調査」を発表します。
日本は原材料価格の高騰、地政学、サステナビリティ、サプライチェーンといった記載が急増
有価証券報告書にて経営方針や経営戦略などを説明する項目「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」において記載があったワードを分析したところ、2021年においてはCOVID-19に関連したワードが多かったものの、2022年においては変異株というワードが見られた程度となっていました(図表1)。それに代わり、原材料価格の高騰、地政学、サプライチェーンといった観点が急増しており、新たに注目を集めていることが分かります。また、気候変動、TCFD、カーボンニュートラルなどのサステナビリティ関連のワードは昨年に引き続き増加しており、社会課題に関する関心はさらに高まっている様子が見て取れます。
TCFD提言が開示を推奨する4項目について開示した企業は、プライム市場に上場する企業の8%
プライム市場に上場する調査対象企業1,743社のうち、 2022年決算の有価証券報告書の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」または「事業等のリスク」にて社会的価値・SDGs・ESGに言及した企業は1,282社(74%)、TCFDに言及した企業は504社(29%)であったところ、TCFD提言が開示を推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目に分けて自社の状況を開示した企業は137社(8%)に留まっていました。また、 JPX400に含まれる企業に限っても10%となっていました。企業の気候変動への取り組みは、経営方針、対処すべき課題、事業等のリスク、コーポレートガバナンス等と関連付けて理解されることが重要であり、これらを合わせて有価証券報告書において開示することが投資家による企業理解に資するため、今後さらなる開示企業数の増加が望まれます。
なお、TCFDに言及する上場企業の割合は英国で38%、日本で16%、米国で3%となり、 TCFD提言に基づく開示の義務化が進んでいる英国と日本において記載割合が増加傾向にありますが、日本の記載割合は英国の半分以下に留まっています。
人的資本に関して日本の上場企業の約2割が多様性について言及、開示義務化の米国では6割に
日本では2021年6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂され人的資本に関する開示が求められるようになり、また、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(2022年6月)において、有価証券報告書にサステナビリティ情報の記載欄を新設すべきであること、 「人材育成方針」 や「社内環境整備方針」について同記載欄の開示項目とすることが示されました。こうした状況下における開示状況を調べるため、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の項におけるダイバーシティ、インクルージョンなどの多様性関連ワードの記載を調査したところ、2022年時点で625社と上場企業の2割程度が言及していました。
米国では2020年に米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対して人的資本に関する開示を義務付けており、事業を理解する上で重要な範囲で会社の人的資本についての開示が求められています。これを受けて、「Item1 Business」の項における多様性関連ワードの記載は2020年時点ではわずか4%でしたが、 2021年を境に急増し、 2022年において米国上場企業の60 %が記載していました。
英国では2020年に英国財務報告評議会(FRC)が人的資本に関する報告書を公表し、投資家との対話を進めるための開示の内容を解説しました。また、2022年には上場企業に対して取締役の40%以上を女性にするといったルールを公表しました。年次報告書の「Strategic Report」または「Governance Report」の項を調査したところ、2020年の段階から4割近い企業が多様性関連ワードを記載しており、その後も着実に記載率は上昇し、2022年においては58%が記載していました。
事業等のリスクでのサイバーセキュリティに関する記載率は米国で高く、日英においては半数程度にとどまる
日本では、「事業等のリスク」でサイバーセキュリティに言及する企業は46%(1,526社)でした。業種別でみると、金融(除く銀行)において記載率が75%(57社)と最も高く、次いで情報通信・サービスその他が58%(528社)となりました。これらの業種には、価値が高い顧客情報を預かっている企業が多く含まれており、サイバー攻撃を受けるリスクが相対的に高いものと思われます。
一方、米国では、「Item1A Risk Factors」でサイバーセキュリティに言及する企業が88%(2,990社)でした。これらは日本の2倍近い割合となっており、米国ではサイバーセキュリティの重要性が幅広い業種で浸透していると言えます。
■テキストマイニングを用いた日米英における有価証券報告書・年次報告書の開示動向調査
調査期間 |
2022年7月1日~2022年7月31日 |
調査目的 |
日本・米国・英国上場企業の経営戦略、事業リスクへの対応における注力分野の動向の把握 |
調査対象企業 |
【日本企業】 |
対象となる書類 |
【日本企業】 |
対象となる書類の項目 |
【日本企業】 |
■調査結果の詳細
調査結果の詳細については、こちら(PDF, 1.51MB)よりご覧いただけます。
報道機関の方からの問い合わせ先
デロイト トーマツ グループ 広報担当 内山、菊池
Tel: 03-6213-3210 Email: press-release@tohmatsu.co.jp
デロイト トーマツ グループは、日本におけるデロイト アジア パシフィック リミテッドおよびデロイトネットワークのメンバーであるデロイト トーマツ合同会社ならびにそのグループ法人(有限責任監査法人トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、デロイト トーマツ税理士法人、DT弁護士法人およびデロイト トーマツ コーポレート ソリューション合同会社を含む)の総称です。デロイト トーマツ グループは、日本で最大級のプロフェッショナルグループのひとつであり、各法人がそれぞれの適用法令に従い、監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務、法務等を提供しています。また、国内約30都市以上に1万5千名を超える専門家を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はデロイト トーマツ グループWebサイト(www.deloitte.com/jp)をご覧ください。
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