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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策には親会社コーポレート部門の迅速な関与が不可欠
親会社コーポレート部門に求められる対応
新型コロナウイルスによる肺炎(以下、「新型肺炎」)の拡大は、企業活動に重大な影響を及ぼしています。中国に事業拠点を有する企業はもちろん、サプライチェーンの寸断により企業グループ全体の生産・販売活動に影響が生じている企業もあります。以下では、このような状況において親会社のコーポレート部門に求められる役割や対応について考えます。
グループ経営に与える影響
<新型肺炎の拡大が企業活動に及ぼす影響>
新型肺炎の拡大は日本企業のビジネスにも重大な影響を及ぼしています。中国に事業拠点を持つ企業においては、現地における販売・生産の減少により業績への悪影響が生じており、現地工場の操業停止や物流の停滞の影響が企業グループ全体に及んでいるケースもあります。また、中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、特に、製造業等、サプライチェーンの依存度が高い業種に属する企業では、その影響が広範に及ぶ可能性があるため、自社の顧客や仕入先を含めて現状を調査・分析し、対応策を迅速に決定して実行することが必要となります。
<経営トップのリーダーシップが不可欠>
日々、状況が変化する中、この困難を乗り越えるためには、グループ会社を統括する日本の親会社の対応が重要です。特に経営トップのリーダーシップが問われる局面であり、労務、法務、税務等、各領域において必要な対策を立案して指示を出すとともに、各ステークホルダーに対するタイムリーな情報提供も求められます。
経営者が先頭に立って対応方針を明確に示し、各種施策を実行するためには、その意思決定に必要な情報をコーポレート部門が中心となって収集し、対応策が円滑に実行されるように準備を進めることが必要となります。
親会社コーポレート部門に求められる対応
(1) 中国子会社に対する支援(労務、法務、税務)
中国に子会社がある場合、労務、法務、税務の各領域における対応が必要であり、親会社コーポレート部門としてこれを支援する必要があります。
<労務面>
現地における従業員の安全確保が最優先であることは当然ですが、事業の継続の観点からは、必要な従業員の確保、あるいは、逆に生産停止が長引くようなケースでは、労務コストの管理も課題となります。勤務条件や処遇について現地で求められる労働者保護に関する規則を遵守しながら、労務対策を立案・遂行する必要があります。また、拡散防止のために課された義務についても誠実に履行することが求められます。
<法務面>
現地における法務面の対応として、上記労働関係の権利義務に関する処理や、現地労働者が新型肺炎の感染者あるいは濃厚接触者となった場合の対応が必要となりますが、加えて、取引先との契約関係についての対応も重要となります。
新型肺炎蔓延の状況は「中華人民共和国民法総則」及び「中華人民共和国契約法」に示される不可抗力事由に該当する可能性があります。工場の生産停止等により中国子会社が取引先と締結した契約を履行できないケースが想定されますが、これが不可抗力によるものと認められれば、責任の減免が認められる可能性があります。
<税務面>
中国政府による租税優遇政策として、防疫のために重要な製品を供給する企業に対する措置(企業所得税、増値税、関税)、交通運輸・旅行等、特定産業の負担軽減のための措置(損失の繰り越し期間の延長)等が公表されています。また、地方政府による優遇政策も公表されています。
【親会社コーポレート部門の対応】(労務面の支援) (法務面の支援) (税務面の支援) |
(2) ステークホルダーとのコミュニケーション
企業グループを取り巻く様々なステークホルダーに対して、新型肺炎が企業活動に及ぼす影響や対応策等に関する情報を提供することが必要であり、特に以下の項目については親会社コーポレート部門の重要な役割となります。
【親会社コーポレート部門の対応】1. リスク情報の提供 2. 適切な財務報告 3. 決算スケジュールの管理 |
以上のとおり、新型肺炎拡大への対応として、親会社がグループ全体の方針を定め、経営者がこれを迅速に実行していくことが求められます。対応すべき事項は多く、実務上、これを担うコーポレート部門の役割は重要です。必要な情報をタイムリーに把握し、グループ経営を円滑に進められるように十分な準備が求められます。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するデロイトの知見
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