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インフラマーケットのビジネス機会と実務ポイント(1)

2015年の主なトピック

海外インフラ輸出やPPP(Public Private Partnership)を、財務の観点を中心に連載で解説。本稿では、2016年の新年第1回ということで、2015年の重要なトピックを簡単に振返りたい。

I. はじめに

2012年12月に現政権が発足し、海外インフラ輸出やPPP(Public Private Partnership)の活用拡大が成長戦略として明確に位置づけられるようになってから3年間が経った。この間、継続的に施策の検討・追加が行われ、インフラストラクチャー(以下、「インフラ」)やPPPといった言葉が新聞紙上を賑わす事も増えてきたと感じている。当社もアドバイザー、コンサルタントとしてこの業界にいる立場にあり、業界の活性化は大変喜ばしいことである。

これを機に、当社では改めてインフラやPPPを、財務の観点を中心に連載で解説する試みを行いたい。本稿では、新年第1回ということで、昨年(2015年)の重要なトピックを簡単に振返りたい。

II.インフラストラクチャーとPPPとは

過去の当社記事でも何度も記載しているが、念のため簡単におさらいしておく。インフラにはさまざまな定義があるが、本稿では、経済成長に必要な社会資本として定義する。インフラの分類の仕方にはさまざまなものがあり、タイプによる分類(経済インフラと社会インフラ)、ステージによる分類(グリーンフィールドとブラウンフィールド)、収入による分類などがある。現在、日本を含む先進国では過去に整備した膨大なインフラの維持更新の必要に迫られており、新興国では経済成長を促進するためインフラの新規整備が不可欠となっているが、いずれにおいても公共セクターにとっては当該財源の確保が1つの重要な財政課題となっている。こうした背景で注目・活用されているのがPPPである。PPPとは、Public Private Partnershipの略称であり、官民連携と訳される。インフラの文脈では、インフラの整備・運営に関して、各種役割およびリスク・リターンを適切に官民で分担し、最適な事業とするかの検討手法の1つである。インフラをビジネス面から捉えた場合の特徴として、長期間の事業運営、資本集約的、高い公共性、が挙げられるが、こうした特長からは、公共のみならず民間の力を活用する余地が大きいとされている。いかに民間の経営ノウハウや資金を上手く活用することができるかが重要である。

 

III.2015年の主なトピック

以下、2015年でのいくつかのトピックを取り上げる。

(1) 東京証券取引所が上場インフラファンド市場を整備(5月)
東京証券取引所は、上場インフラ市場研究会などを通じて検討を進めてきた「上場インフラファンド市場」を2015年4月に開設した。当該市場では、太陽光を含む再生可能エネルギー発電設備および公共施設等運営権を対象として、インフラ投資を行う民間企業の資金調達環境を整備するとともに、インフラ投資に関する2次流通市場(セカンダリー・マーケット)創出への道が出来たと評価される。具体的な案件上場はまだないが、昨年末の税制改正要望の動きを受けて、太陽光発電設備に関するファンド上場の動きが出てくるとの報道がある。

(2) 日本政権が「質の高いインフラパートナーシップ」を提唱(5月)
2015年5月、アジア地域の膨大なインフラ需要に応え、「質の高いインフラ投資」を推進すべく、安倍総理が5月に「質の高いインフラパートナーシップ」を提唱した。大きな柱は、「JICAの支援量の拡大等」「ADBとの連携」「JBIC等によるリスクマネー供給拡大」「質の高いインフラ」のグローバル展開の4つであり、今後5年間で約1,100億ドルの「質の高いインフラ投資」実施を支援することとした。これは、日本のインフラ輸出における1つの強み・ポジションを明確に打ち出したものであり、評価できるものである。
アジア地域でのインフラ輸出に関しては、2015年9月のインドネシアでの高速鉄道案件の中国による受注など、難しい問題もでてきているが、2015年12月にインドでの高速鉄道案件(ムンバイ・アーメダバード間)に関する基本合意といった明るいニュースもあり、引き続き政府のトップセールスや公的ファイナンスの強化などによる民間企業の後方支援は重要な意義を有している。

(3) 国内空港に関して、コンセッション方式で民間事業者を選定(11月~12月)
国内インフラの民間開放の第1陣として、公共施設等運営権方式(いわゆるコンセッション方式)での民間委託が検討されてきた関西国際空港・大阪国際空港、仙台空港の入札が終わり、それぞれ民間事業者のコンソーシアムが選定された。これにより、来年度から民間事業者による空港事業運営が始まる。
コンセッション方式の導入を可能する各種法改正を踏まえ、ようやくの実現である。国を始めとする関係者各位の多大な努力の賜物である。課題も残されているが大きな前進であり、民間事業者の参入が空港運営や地域経済に与える影響を注目している地方自治体も多く、今後の案件形成に弾みがつくかが注目される。

(4) アジアインフラ投資銀行(AIIB)が発足(12月)
中国が構想を提唱、設立を主導してきた、アジアのインフラ整備や投資環境改善を行うAIIBが12月に発足を迎えた。アメリカ、日本は参画を見送ったものの、ASEANや欧州各国も参画し、アジア開発銀行(ADB)に比する機関になるのでは、とも称されている。
アジア地域におけるインフラの整備需要は膨大であり、アジア開発銀行のみだとカバーし切れないこともあるため、ニーズにマッチするものとして新興国では概ね歓迎ムードである。日本では、AIIB脅威論が一時期盛んに議論されたが、いたずらに恐れることはせず、上記(2)で記載した「質の高いパートナーシップ」の促進や、ADBや世界銀行(WB)との強調を強化する動きが進むきっかけにもなった面もある。2016年1月に開業式も行われたAIIBの動向には注目が必要である。

(5) 国内PPP/PFIに関してユニバーサルテスティングの導入の方向性(12月)
2015年12月、民間資金等活用事業推進会議にて「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針」が決定された。一定規模以上の自治体がインフラ整備を検討する際には、PPP/PFI手法を活用可能性の検討を行うことを義務付けようというものである。政府の案件形成促進の方針明確化という意義はある。ただし、実効性を持たせるためには、義務化というムチだけでは負担感を高めるのみになってしまう可能性があり、地方自治体へのキャパシティビルディングやインセンティブ付与といったアメも具体的に準備していく必要があると思われる。

IV.終わりに

以上、非常に簡単ではあるが簡単に2015年のインフラ・PPPに関するいくつかのトピックを振返った。今年2016年も、国内においては、電力市場における小売全面自由化、愛知県有料道路や高松空港といったコンセッション方式での民間事業者選定開始、海外に関しては、財政投融資でのインフラ分野への振り分けや国際協力銀行(JBIC)法の改正など、引き続きさまざまな動きがあると想定される。まだまだ、インフラ投資やPPP/PFIの先進国である英国のような規模になるには時間がかかると思われるが、かの国でも、政府による各種施策や民間企業による幾度ものトライアンドエラーを経て、現在の興隆に至ったと最近現地で聞いたところである。

インフラビジネスは、機器・EPC、O&M、事業運営といったさまざまなレイヤーが組み合わさった市場において、公共と民間の役割分担や、民間同士でのコンソーシアム形成戦略を含めた戦略が重要になるため、日本企業にとってある種新しいマーケットであり、そこでどのように自社の強みを発揮するかの戦略が重要となる領域でると筆者は考えている。引き続き弊社も業界の一員として、インフラビジネス、PPP/PFI事業の拡大・発展に貢献していきたいと考えている。

次回以降は、インフラ・PPPに関する実務的な論点を解説していきたい。

以上

本文中の意見や見解に関わる部分は私見であることをお断りする。 

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 
インフラ・PPPアドバイザリーサービス
シニアヴァイスプレジデント 手計 徹也

(2016.01.27)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

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