調査レポート

農業生産分野参入企業の実態と成功要因

農林水産業ビジネス推進室では、2013年8月から9月にかけて「農業ビジネス実態調査」を行った。今回は農業生産を行う企業の実態と成功要因に関する調査結果について述べる。

生産分野へ参入した企業の実態

生産分野へ参入している企業の業種は多岐にわたることが明らかになった。農林水産業(48%)を除くと、製造業(16%)、卸売・小売業(15%)、建設業(9%)と、多様な業種が生産分野に参入している(図1参照)。また、参入目的も業種によって多様であることがわかる。製造業、建設業といった製造業系業種の参入目的は、「新規事業参入による利益の獲得」と回答した企業が41%と最も高く、卸売・小売業等の非製造業系の業種では、「本業の強化」と回答した企業が35%と最も高かった(図2参照)。これは、卸売・小売業にとって重要な経営課題である、原材料の安定的確保を目的として参入しているためであると考えられる。また、「地域農業への貢献」と回答した企業は、製造業系の業種ではわずか6%であったのに対して、農林水産業及び非製造業系の業種では24~30%にものぼっている。

このように、生産分野への参入は業種や特定の目的に関わらず、幅広い領域からの参入を促しやすい傾向がある。しかし一方で、生産分野へ参入を果たした企業は多くの課題を抱えている。業種問わず課題として挙がっているものは「人材の確保」「生産経費の最適化」「農産物の生産に関する技術・ノウハウの確保」「販路の確保」である。また、業種毎に特徴的な課題もある。製造業では「販売単価の設定」に課題を抱えている企業が41%にものぼっており、非製造業では「投資対効果」に課題を抱えている企業が50%であった(図3参照)。

このことから、製造業では農産物の販売ノウハウが不足している企業が多く、非製造業では、生産分野参入が自社にどのような効果を生み出しているか明らかにできていない企業が多いことがうかがえる。

次に、各参入企業は生産活動においてどのような特徴的な活動を行っているのか業種別に見る。農林水産業では「生産コストの削減(22%)」「人件費の削減・業務の効率化(20%)」といった「コスト削減」に関する活動が重視されている。一方、製造業では「高付加価値な農産物の栽培(33%)」といった「農産物の付加価値の向上」に関する活動が重視されている。また、非製造業では「安全性の確保(31%)」に関する活動が重視されている。これらの業種毎に見られる活動の違いは、参入目的の違いや参入後に抱える課題が反映されているものと想定される。農林水産業ではこれまで農産物の高品質化を進めており、既に一定水準の品質を達成できているため、コスト削減を優先的に行っているものと考えられる。また、製造業では農産物生産に関する知識・経験が乏しいため、市場での差別化・競争力強化を図るために、農産物の高品質化を志向しているものと考えられる。非製造業では自社販路での販売する高品質の商品、サービスの確保を課題としており、競合小売店との差別化を実現するために「安全性の確保」を重視しているものと考えられる(図4参照)。 

図1:生産分野に参入した企業の業種(N=67)

図2:参入目的(N=61)

図3:生産分や参入後における課題(上位8位)(N=67)

図4:生産・栽培時に行っている活動(N=67)

成長している参入企業に共通している傾向

生産分野で売上高を伸長させている企業(以下、成長企業)とそうでない企業を比較し、売上高を伸長させている企業に共通の傾向を分析した。その結果、以下の共通する傾向が見られた(図5参照)。
特に、異業種から参入している成功企業は、販売面を強化している傾向が見られる。例えば、成長企業は栽培品目の選定基準について販路の安定確保、高単価での販売・利益確保を重視する傾向が見られる(図6参照)。

また、成長企業においては、農業生産分野内での協業だけでなく、物流・卸売・加工・販売・関連分野それぞれの企業との協業を進めている傾向が見られる(図7参照)。
農業生産分野において協業が進む理由として、異業種は生産に関する知識・ノウハウが不足しているため、自社独自で参入することのリスクを感じていることが想定される。さらに、成長企業では生産だけではなく、物流・卸売・加工・流通・販売に至るバリューチェーンの下流工程でも協業を推進することで事業拡大を実現している。また、成長企業では農産物の海外輸出や流通・事業計画等の知識・ノウハウを有した人材を登用している傾向があり、農産物の販路拡大を重視していることがうかがえる(図5参照)。 

図5:成長企業におけるビジネス活動の特徴(成長分野)

図6:販売品目選定基準×売上高増加傾向のクロス分析

図7:生産分野参入企業が協業している相手先の事業分野×売上高増加傾向のクロス分析

終わりに

生産分野へ参入した企業は事業を拡大するために、販路の確保を重視している。販路確保のために、成長企業が行っている取り組みは以下の3点に集約される(図8参照)。

1. 生販が一体となる経営戦略・計画を策定
2. 販売先との情報共有や協業を推進し、強固な販売網を構築
3. 高付加価値かつ高単価で販売できる品目における競争優位の構築

成功企業は農産物生産を軸としながら、上記3点に取り組み販路を確保・拡大することにより、バリューチェーン全体における競争優位を構築している。異業種からの新規参入業者が既存農業生産者に対抗するためには、安定した供給先を構築することが重要である。

※本文中の意見に関わる部分は私見であり、トーマツグループの公式見解ではございません。 

図8:参入分野別の成功要因(生産分野)

お役に立ちましたか?