調査レポート

コンシューマービジネス業界における植物工場の現状と今後の展望

今後、国内で確立した植物工場の事業モデルを海外展開する動きが活性化すると予想

2014.10.08 - 過去2回にてマクロ視点(国内、海外)での植物工場を取り巻く現状と今後の展望について解説した。今回はミクロ視点に切り替えて、コンシューマービジネス業界(食品・流通、不動産・鉄道)の植物工場の取り組み事例(事業目的、事業概要、成功要因)を取り上げる。個別具体的な事例の紹介を通じて、植物工場ビジネスへの参入にあたっての具体的なポイントを解説する。

1.コンシューマービジネス業界(食品・流通、不動産・鉄道)における国内の植物工場の取り組み事例を通して、参入にあたっての具体的なポイントを紹介する

著者: 
デロイト トーマツ コンサルティング株式会社  マネジャー  大和田 悠一
デロイト トーマツ コンサルティング株式会社  コンサルタント  竹谷 明泰

過去2回にてマクロ視点(国内、海外)での植物工場を取り巻く現状と今後の展望について述べてきた。今回は視点をミクロに切り替えて、コンシューマービジネス業界(食品・流通業界、不動産業界、鉄道業界)における国内の植物工場の取り組み事例を中心に取りあげる。個別具体的な事例を紹介することで、コンシューマービジネス業界の各企業が植物工場事業に参入する際に、どのような狙いで参入すべきかという議論の一助になればと考えている。

2-1.食品・流通企業は「(1)食材の安定調達・差別化」「(2)施設の有効活用」「(3)雇用の受け皿」を主な目的に参入している

食品・流通業界での植物工場の主な参入目的と成功要因は、収益化・CSRの観点を合わせて以下の3つが挙げられる。

第1に、食材を定時×定量×定品質×定価格で調達すると共に、安心・安全を売り物に商品差別化の実現を目指して参入している。自社製品として使用する原材料の消費量の見極め、商品差別化による販売先に対する主導権を持ったプライシングが収益化の鍵となる。

 第2に、店舗内または隣接施設の空きスペースを活かすために参入している。施設を有効活用することで、リードタイムの圧縮(新鮮な野菜の供給)、物流コストの削減に貢献できる。

 第3に、CSRの観点として、工場のオペレーション要員として高齢者や障害者等を雇用する雇用の受け皿としての機能がある。この場合は、植物工場の特徴である誰でも簡単に作業可能なオペレーション設計を活かし、企業側のCSRのニーズを充足することができる。

次に食品・流通業界での植物工場の取り組み事例を紹介する。

(事例1)大手食品メーカー

(事例2)大手飲食店企業

2-2.不動産・鉄道業界は「(1)遊休地活用」「(2)物件のバリューアップ」「(3)グループチャネルの活用」「(4)雇用の受け皿」を主な目的に植物工場ビジネスに取り組んでいる

不動産・鉄道業界での植物工場の主な参入目的と成功要因は、収益化・CSRの観点を合わせて以下の4つが挙げられる。

第1に、遊休地活用として、未利用の土地や建物を活用して植物工場を誘致または建設するケースがある。この場合、遊休地を活用した安定的な賃料の収受(不動産企業)、イニシャルコストの削減(鉄道企業・誘致企業)が鍵となる。
第2に、物件のバリューアップがあげられる。オフィスビルや住宅内または近隣に植物工場を誘致して、自産自消(自社物件内での消費)を売り物に安心・安全かつ新鮮な食材を入居者等に供給することで物件価値を向上させる狙いがある。
第3に、植物工場で生産した商品をグループ会社のチャネル(小売等)を通じて販売するグループチャネルの活用である。この場合、流通の中間マージンをカットした商品の販売が重要となる。
第4に、CSRの側面として、現地オペレーション要員として高齢者や障害者等の雇用の受け皿として機能している。

次に不動産業界、鉄道業界での植物工場の取り組み事例をそれぞれ紹介する。

(事例3)大手鉄道会社

(事例4)大手不動産会社

3.今後、コンシューマービジネス業界では国内で確立した植物工場の事業モデルを海外展開する動きが活性化することが予想される

最後にコンシューマービジネス業界(食品・流通、不動産・鉄道)における植物工場ビジネスの今後の展望について述べたい。
今回概観した通り、国内の植物工場は各企業が自社資産(生産ノウハウ、遊休地、グループチャネル等)や外部企業(植物工場ベンダー、小売等)を活かしながら、生産及びチャネル(販売先)を構築するケースが多い。これがステップ1である。
現在はステップ2として、国内と比較して成長が期待される海外での植物工場事業の展開を検討する段階に入っている。具体的には2つの方向性がある。第1に、従来の露地栽培では生産が困難な国(Ex.中東、ロシアなど)をターゲットとして、自社で植物工場を建設して市場を開拓する「自社のビジネスと一体で進出する形態(事業者として進出)」である。

第2に、植物工場ノウハウなど「他社へのインフラ提供で進出する形態」である。植物工場パッケージ(技術、設備、生産ノウハウ、人材等)を販売するケースとなるが、付加価値(G-GAP、ハラール、トレーサビリティ等)を上乗せすることで、事業として大きな植物工場ビジネスに成長することが期待される。
2つの方向性のどちらの場合にも、スピーディーな海外展開には国内と海外を別々に考えずに、海外展開を見据えたパッケージ化(ノウハウ蓄積や人材育成)を進めておくことが欠かせない。国内ビジネスをリーンスタートで開始しながら、ステップを踏んだ海外展開が必要になるものと考える。
なお、本文中の意見や見解に関わる部分は私見であり、様々な論点や視点があることをお断りしておく。

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