調査レポート

農業関連分野企業参入の実態

農業ビジネス実態調査 2013

有限責任監査法人トーマツ農林水産業ビジネス推進室で実施した「2013年 農業ビジネス実態調査」の結果から、今回は農業の生産・流通以外の農業周辺ビジネスへ参入した企業の実態に関する調査結果について述べる。

農業ビジネス「関連分野」の定義

トーマツグループでは、農業参入企業を以下の3通りに分類している(図1参照)。そのうち、農産物の生産・流通には直接関わらないものの、農業に密接に関わっている商品・サービスを提供する事業分野を「関連分野」と定義づけている。 

図1: 弊社の定義する農業ビジネス分野

関連分野参入企業の特徴と事業展開

関連分野は、生産分野や流通分野と異なり、比較的最近になって参入した企業が、多様なビジネスを展開している傾向がある。
まず、関連分野へ参入した企業の参入時期を生産分野、流通分野の参入企業と比較したところ、生産分野、流通分野では2000年以前から参入している企業が半数以上である一方、関連分野では2000年以降に参入している企業が77%にのぼる(図2参照)。
また、関連分野でのビジネス領域は多岐にわたる。生産分野、流通分野では事業内容がそれぞれ5種類、8種類であるが、関連分野での事業内容は12種類にも及んでいる(図3参照)。
また、関連分野の特徴として、参入企業の展開する事業は当該企業の本業と関連性の深い傾向にある。農林水産業から関連分野へ参入した企業の42%は休耕田の活用といった「地域資源の利活用促進」を行っている(図4参照)。また、「農業を通じた教育(食育)」や「グリーンツーリズム・町おこし」、「観光農園」といった農業をテーマにサービス業を展開する例が多く見られる。これらは農林水産業者は関連分野において、農商工連携事業、6次産業化事業を展開していることがうかがえる。また、金融・保険業は新たな投資対象として農業関連事業に対する投融資を促進するために、関連分野へ参入している(図5参照)。 

図2: 参入年次

図3: 企業参入における農業ビジネス

図4: 農林水産業における参入事業(上位4事業)

図5: 金融・保険業における参入事業(上位4事業)

関連分野参入企業の収益状況

続いて、関連分野に参入した企業の収益状況について、生産分野、流通分野への参入企業と比較しどのような違いがあるか述べる。
売上高については、どの分野に参入している企業も増加傾向にある企業が約5割以上を占めており、農業ビジネスが各分野で拡大傾向にあることがうかがえる(図6参照)。
一方、経常利益が増加していると回答した企業は、生産分野、流通分野では3割程度に留まっているのに対し、関連分野では5割を超えている(図7参照)。また、黒字化に要した年数でも、生産分野、流通分野では約半数の企業が5年以内に黒字化していると回答しているのに対し、関連分野では約半数の企業が3年以内に黒字化している(図8参照)。
これらのことから、関連分野の事業は他分野の事業と比較して、利益を確保しやすい傾向が伺える。これは、関連分野の事業が生産分野、流通分野のような設備投資を必要としない事業が多く、また本業の延長線上で展開でき、新たな設備投資を多く必要としない事業が多いためであると考えられる。 

図6: 売上高増減傾向

図7: 経常利益増減傾向

図8: 黒字化までに要した期間

最後に

関連分野で展開される事業は多岐に渡り、本業との関連性が高いビジネス領域への参入例が多く見られた。これまで、農業ビジネスと言えば、農家による生産から流通・販売に至るバリューチェーンでの事業を指していた。しかし、近年では農業の持つ多面的機能(景観保全、貯水機能等)や新たに認識された機会(農作業によるリハビリ効果、ビッグデータの活用等)に着目した関連分野への進出が増えている。関連分野では、これまで農業とは関係のなかった企業が「農業」の持つ潜在的可能性に着目し、「○○事業×農業」から新たなビジネスの機会が生まれている。またこの分野の事業は、他分野と比較して着実に収益化を実現していることが本調査からうかがえた。今後も、農業を中心として様々な産業と結びつくことでイノベーションを起こし、新規市場が創出されていくことを期待する。

※本文中の意見に関わる部分は私見であり、トーマツグループの公式見解ではございません。 

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