調査レポート

農業分野における新しいビジネススキーム

最近農業に参入している企業には、農業をビジネスとしてとらえ新たな取り組みを行っている企業がみられる。農業への参入は一般的に収益化まで長い期間を要するが、こうした企業の中には短期間で収益化している例もうかがえる。

ビル屋上を有効活用した農産物生産

株式会社エコディアは2012年よりビルオーナーを対象に入居テナント向けの付加価値向上策として農業を活用したサービスの提案を開始した。このサービスのコンセプトは「究極の地産地消を目指した農業を支援する」としている。

エコディアはビルの屋上で農産物を栽培することができるプラントを販売している。プラント栽培の特徴はビル屋上での栽培に耐えられるよう設備を軽量化している点、栽培に関する特別な技術が必要とされない点にある。
「シリンダー」と呼ばれる塩化ビニールパイプのポットの中に、団粒構造の軽量で保水性・保肥性の高い土壌を敷くことにより、軽く組み立て容易なプラントを実現している。そのため屋上緑化といった大規模な工事や水耕栽培のような高い技術も必要ない。またシリンダーを多段的に組み上げることにより、単位面積当たりの収量を増やし屋上を効率的に活用することを可能にしている。

こうして収穫した農産物をテナントの飲食店に提供することで地産地消を実現している。ビルオーナーは農産物販売により新たな収益源を確保することができる。一方、テナント側としては鮮度の高い農産物を消費者に提供し、本業の付加価値を高めることができる。今後、エコディアは都市型農園としての本事業をフランチャイズ化し全国展開を考えている。 

生産者の「思い」を伝える営業マン

「手塩にかけて育てた農産物のすばらしさを消費者に伝えたいが、その術がない」。そのような農家の悩みを解決するサービスを行っているのが株式会社エムスクエア・ラボである。同社の手掛けるサービスの特徴は、生産者と購買者の情報・価値をつなぎ生産者に代わって売り先を探す点にある。

エムスクエア・ラボは2009年から生産者に対して2つのサービスを提供している。その1つは、種からの栽培情報~出荷までのトレーサビリティを営業ツールとして生産者に展開していることである。
そしてもう1つは生産者の思いを伝える営業活動である。生産者を直接訪問して得た農作物に対する思いや商品に秘められたストーリーを営業用資料としてまとめ、購買者に対して農作物にまつわる付加価値情報として提供している。これに購買者が興味を示した場合、生産現場で両者の顔合わせを行い生産者の思いを直接伝える機会をつくっている。

このようなプロセスを経ることによって、生産者は農作物の付加価値を高め、適切な価格での販売を促す交渉力を強めることができる。一方、購買者としては誰が栽培しているのか直接確認できることでトレーサビリティを担保するとともに、付加価値の高い農産物として消費者に販売することができる。エムスクエアは今後生産者と購買者をつなぐ仕組みをフランチャイズ化し、事業拡大することを目標としている。 

最近の参入例から見る農業ビジネスの特徴

前述2社はもともと農業の知識・ノウハウがあったわけではない。しかし、農業分野に参入し、成功している。その理由としては以下の点が挙げられる。
1.最終消費シーンをイメージし、生産者、消費者、企業それぞれのニーズを満たすための手段として農業を効果的に活用している
2.農業周辺領域も含めた俯瞰的な視点を持ち、ビジネスチャンスを見極めている

農業をビジネス機会ととらえるためには、企業ならではの「顧客視点での発想」と「既存農業の枠組みにとらわれない俯瞰的な視点」が必要である。
2社の取り組みは、「農産物を生産・出荷する」という従来の農業ビジネスモデルにとらわれることなく、農業周辺領域にビジネス機会を見出した結果生まれたものである。また、農業に従事したことがない企業だからこそ、先入観にとらわれることなくマーケットニーズをとらえることができた。
農業に眠っているビジネス機会を見出だすことができれば、参入企業の新たな収益源となる可能性を大いに秘めている。

※本文中の意見に関わる部分は私見であり、デロイト トーマツ グループの公式見解ではございません。

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