最新動向/市場予測

2015年度鉄道業界の動向

~鉄道業界の上半期の業績動向と最近の取り組み~

2015年度上半期の鉄道業界の業績は、国内景気の緩やかな回復傾向が続いたことに加え、北陸新幹線の開業効果、インバウンド効果などもあり、JR・民鉄ともに期初の予想を上回る進捗となっています。ただし、安全管理・対策の徹底などの課題も引き続き抱えています。 著者:公認会計士 加納俊平

1.2015年度期初の業績予想の振り返り

 鉄道会社の業績予想は全体的に固めな傾向にありますが、鉄道事業を柱とするJR各社では、主に北陸新幹線の開業効果を見込んだ結果として増収増益予想となっているのに対して、民鉄上場21社では、2014年度に大型の不動産分譲があった会社などでその反動減を見込んだ結果として、増収ではあるものの減益予想となっていました。

鉄道業上場会社(24社)の業績予想

(出所:各社の決算短信より著者が集計)

2.2015年度上半期の業績動向(1)

(1)旅客輸送量の動向

 2015年度上半期の旅客輸送量(旅客輸送人キロ)は、景気回復基調やインバウンド効果に加え、JRでは北陸新幹線の開業効果もあり、ビジネス、観光利用がともに好調に推移し、JRと民鉄ともに8月までの各月とも前年同月比プラスを維持しています。
 

旅客輸送量(旅客人キロ)の推移

(出所:国土交通省公表資料より著者が集計)

2015年度上半期の業績動向(2)

(2)第2四半期決算の状況

 旅客輸送量が好調に推移しており、特に鉄道事業の割合が高く、北陸新幹線の開業効果もあるJR上場3社では、各社とも前年比、期初予想比ともに100%を上回り、過去最高益を更新しています。JRと異なり近距離路線が中心の民鉄でも、鉄道事業での収入に大きな伸びはないものの、旅客輸送量は前年比増で推移したことに加え、周辺ビジネスも全体として好調であったことにより、期初の減益予想に対して、増益に転じている模様です。
 

JR上場3社の第2四半期の業績概況

(出所:各社の決算短信及び決算補足説明資料より著者が集計)

3.鉄道各社の今年度の取り組み

(1)サービス

 各社新製車両の投入等による輸送量の増強や沿線の活性化の取り組みを継続していますが、国内、特にシニア世代の観光需要に対する取り組み、訪日観光客需要に対する取り組みを推進しているようです。
 国内の観光需要については沿線にある観光資源を活用するためのキャンペーン強化のほか、観光列車の導入による需要の喚起にも力を入れています。
 訪日観光客需要に対する取り組みとしては、特に外国人旅行客の利用の多い駅構内等における無料Wi-Fi等の通信環境整備など受入れ環境の整備や利便性の向上も推進しています。 

(2)安全対策

 最近では様々な業界で安全性を揺るがす不祥事が起きています。鉄道業界では、2014年度のインシデント(運転事故が発生するおそれがあると認められる事態)報告件数が50件と、前年の67件や過去5年の平均68件と比較し減少していますが、2015年度に入って安全・安定輸送を揺るがす事象が続発しており(うち、重大インシデントは3件。2014年度は1件)、安全への世間の関心は高まっています。安全管理・対策は、鉄道の生命線であるため、直ちにその教訓をハード面・ソフト面への対策につなげていますが、今後の着実な取り組みが注目されます。


2015年度鉄道重大インシデントの発生状況

発生年月日  

発生場所

事故等種類

2015/4/12

山手線・京浜東北線 神田駅~秋葉原駅間

重大インシデント
施設障害

2015/5/17

函館線 八雲駅~山越駅間

重大インシデント
車両障害

2015/5/22

長崎線 肥前竜王駅構内

重大インシデント
信号冒進等


(出所:国土交通省HP)

※本文中の意見に関わる部分は私見であり、デロイト トーマツ グループの公式見解ではございません。

 

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