最新動向/市場予測

2015年度鉄道業界の振り返りと今後の展望

~鉄道業界の業績動向と2016年度の取り組み~

2015年度の鉄道業界は、上半期において、国内景気の緩やかな回復傾向が続いたことに加え、北陸新幹線の開業効果、インバウンド効果などもあり、JR・民鉄ともに期初の業績予想を上回る進捗となっていましたが、下半期においても好調な輸送量が続いた結果として、昨年度に引き続き好業績となりました。今後についても足元の好調な業績をてこに持続的な成長に繋げるような取り組みが各社で計画されています。著者:公認会計士 加納俊平

1.2015年度鉄道業界の振り返り

(1)鉄道業上場企業の業績概況

 2015年度の鉄道業上場企業は、旅客輸送量(旅客輸送人キロ)が景気回復基調やインバウンド効果に加え、JRでは北陸新幹線の開業効果もあり、ビジネス、観光利用がともに好調に推移したことにより、営業収益は、鉄道業上場企業全体で前年比2.8%増加しました。
 また、主に営業収益の増加により経常利益は前年比26.1%増加しており、多くの会社で過去最高益を更新する結果となりました。

(2)JRと民鉄との比較

  JRでは、新幹線を中心に長距離輸送を持ち鉄道事業の割合が高いのに対し、民鉄では、近距離路線が中心であり鉄道事業以外の周辺ビジネスの割合が高いという特徴を有していますが、2015年度の好業績は、いずれも輸送量が好調に推移したことによる鉄道事業の収益増が寄与している点で共通しています。
 JR上場3社は、鉄道事業を含む運輸業セグメントの外部売上が7割を占めており、主に昨年3月に開業した北陸新幹線の影響で新幹線(定期外)の輸送量が増加したことが大きく寄与しています。
 

JR上場3社の業績概況

(出所:各社の決算短信及び決算補足説明資料より著者が集計)

民鉄の業績

 民鉄は、近距離路線が中心であり、JRのように路線拡大による収益拡大は容易でないため、バスやタクシーといった鉄道以外の運輸事業、小売や飲食店などの流通事業、周辺の住宅開発やオフィス賃貸といった不動産事業、ホテルやレジャー施設の運営、広告代理など、多岐に及ぶ鉄道以外の事業を展開しており、鉄道事業の占める割合は大半の会社で5割を下回っています。
 そのため、鉄道以外の事業の状況が業績に与える影響は大きいですが、2015年度の大手民鉄上場14社を見ると、鉄道事業を含む運輸業において国内の観光需要とインバウンド効果を取り込んだ結果として増収となったことが好業績の下支えとなっています。
 

大手民鉄上場14社の業績概況

(出所:民鉄協ニュース28-No.4(一般財団法人日本民営鉄道協会)及び各社の決算短信より著者が集計)

2.今後の展望

(1)2016年度の業績予想

 鉄道会社の業績予想は全体的に固めな傾向にありますが、鉄道事業を柱とするJRと周辺ビジネスを柱とする民鉄とではその内容が異なっています。
 

03

鉄道業上場企業(24社)の業績予想

(出所:各社の決算短信より著者が集計)

業績予測と取り組み

 上表のとおり、JR上場3社は、主に北陸新幹線の開業効果が一段落することにより営業収益は前年並みの予想となっていますが、JR東日本とJR西日本で2016年度から新幹線大規模改修引当金を積み立てることにより経常利益は減益予想となっています。なお、親会社株主に帰属する当期純利益については、2015年度に計上した特別損失の反動や法人税率の引下げ等による税金費用の減少もあり増益予想となっています。
一方、民鉄上場21社では、一部の会社で大型の不動産開発関連や連結子会社の増加等鉄道事業以外の要因で増収予想となっているものの、利益面では大きく寄与するようなものではなく、運輸収入も伸び悩み、減益予想となっています。

(2)2016年度の取り組み

 鉄道業界では、長期的には国内の人口減少という課題を抱えており、鉄道の生命線となる安全対策に加え、持続的な成長に繋げるような取り組みを各社継続しています。
 2016年度のJR上場3社と大手民鉄上場14社の設備投資額の計画は下表のとおりであり、足元の好調な業績をてこに地震対策等の安全投資や車両更新を維持・加速させつつ、成長投資を積み増していることが窺えます。
 ここでも鉄道事業の割合の高いJRではJR東海が進めている中央新幹線建設など鉄道事業における設備投資が主な増加要因となっているのに対し、鉄道事業の割合の低い民鉄では鉄道事業以外のホテル業や不動産業での設備投資が主な増加要因となっています。

2016年度の設備投資計画(JR上場3社と大手民鉄上場14社)

(出所:各社の決算説明会資料等公表資料より著者が集計)

※本文中の意見に関わる部分は私見であり、デロイト トーマツ グループの公式見解ではございません。

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