最新動向/市場予測

2014年度鉄道業界の振り返りと今後の展望

JRと民鉄の比較と今後の展望

2014年度の鉄道業界の業績は、景気回復基調や訪日外国人旅行者の増加などの影響により好調であり、今後についても整備新幹線や中央新幹線、東京オリンピックなど明るい話題が多くあります。ただし、安全管理・対策の徹底や自然災害への対策などの課題も抱えています。  著者:公認会計士 加納俊平

1.2014年度鉄道業界の振り返り

(1)鉄道業上場企業の業績概況
 2014年度の鉄道業上場企業は、期初の消費税率引上げに伴う駆込み需要の反動は一部みられたものの、景気回復基調や訪日外国人旅行者の増加などの影響により、ビジネス、観光利用がともに好調に推移し、また、周辺ビジネスも好調であったことから、営業収益は、鉄道業上場企業全体で前年比0.9%増加しています。
 また、主に営業収益の増加により経常利益は前年比6.8%増加しています。

(2)JRと民鉄との比較
 鉄道業上場企業全体としては好業績であったものの、新幹線を中心に長距離輸送を持ち運輸業の割合の高いJRと、近距離路線が中心であり運輸業以外の周辺ビジネスの割合の高い民鉄とでは、内容に相違が見られます。
 JR上場3社は、運輸業セグメントの外部売上が7割を占めており、主に新幹線(定期外)の輸送量の増加が増収に寄与しています。
 

JR上場3社の業績概況

(出所:各社の決算短信及び決算補足説明資料より著者が集計)

一方の民鉄は

 一方、民鉄は、近距離路線が中心であり、JRのように路線拡大による収益拡大は容易でないため、バスやタクシーといった鉄道以外の運輸事業、小売や飲食店などの流通事業、周辺の住宅開発やオフィス賃貸といった不動産事業、ホテルやレジャー施設の運営、広告代理など、多岐に及ぶ鉄道以外の事業を展開しており、鉄道事業の占める割合は大半の会社で5割を下回っています。

 そのため、大手民鉄上場14社を見ると、観光需要が好調であったことによるホテル・レジャー事業での増収、大型の不動産分譲に伴う不動産事業での増収など、鉄道以外での事業が好業績に寄与しています。

 

大手民鉄上場14社の業績概況

(出所:民鉄協ニュース27-No3(一般財団法人日本民営鉄道協会)及び各社の決算短信より著者が集計)

2.今後の展望

(1)2015年度の業績予想
 鉄道会社の業績予想は全体的に固めな傾向にありますが、鉄道事業を柱とするJRと周辺ビジネスを柱とする民鉄とではその内容が異なっています。

鉄道業上場企業(24社)の業績予想

(出所:各社の決算短信より著書が集計)

表から見えてくることと展望

上表のとおり、JR上場3社は、主に北陸新幹線の開業効果を見込んだ結果として増収増益予想となっているのに対して、民鉄上場21社では、2014年度に大型の不動産分譲があった会社などでその反動減を見込んだ結果として、増収ではあるものの減益予想となっています。

(2)中長期の展望
 鉄道業界では、国内の人口減少という課題を抱えていますが、整備新幹線や中央新幹線、東京オリンピックの開催など、収益規模の拡大に寄与するような明るい話題が多く、各社持続的な成長に繋げるような取り組みを計画しています。また、JRでは、日本の鉄道の安全性・安定性を武器に海外の鉄道プロジェクトへの取り組みも推進しており、今後の海外展開についても目が離せません。
 一方で、鉄道の安全管理・対策については、乗客が死亡するような事故は2005年の福知山線脱線事故以後起きておらず、新幹線では開業以来一度も乗客死亡事故は起きていないものの、最近でも車両や線路設備のトラブルなど安全管理・対策に懸念を生じさせるような事故や不祥事は起きており、世間の関心が高まっています。鉄道の生命線である安全管理・対策は、これまでも各社永遠のテーマとして最重視していましたが、どのようにマネジメントしていくかについて取り組みが加速していくものと考えられます。
 また、もうひとつの大きな課題としては、自然災害への対策が挙げられます。東日本大震災では、それまでの地震対策が一定の効果を上げましたが、その後も過去の経験を生かし、災害を克服するための弛まぬ努力が続けられています。ただし、最近増加傾向にある異常気象(集中豪雨など)や火山活動の活発化など、刻々と変化する自然災害への対応も必要となっており、今後も防災・減災、また、被災後の早期復旧を目指して様々な技術開発、取り組みの継続が必要になるものと考えられます。


※本文中の意見に関わる部分は私見であり、デロイト トーマツ グループの公式見解ではございません。
 

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