最新動向/市場予測

2014年度海運業界の振り返りと今後の展望 

日本の大手海運企業の業績を比較しながら2014年度を振り返り、2015年度の業績予想や取り組みを紹介します。

1.2014年度海運業界の振り返り(1)

(1)海運企業の業績概要
 2014年度の日本の大手海運企業であるA社・B社・C社(以下、「邦船3社」という)の業績は、ドライバルク船運賃市況の低調な推移、日本発完成車輸出台数の減少等の影響が見られた一方、原油タンカー運賃市況の回復や円安、燃料油価格の下落が追い風となり、売上高は前年比7.3%増加、経常利益は前年比26.4%増加しています。

 

邦船3社の連結業績(合算)          単位:億円

 

2013年度  

2014年度   

増減額   

増減率   

売上高  

51,908

55,713

3,804

7.3%

経常利益     

1,458

1,843

384

26.4%

(出所:各社の有価証券報告書より著者が集計)

 

バルチック海運指数の推移

資料:日本海事センター企画研究部作成の「バルチック海運指数の推移」
 (http://www.jpmac.or.jp/relation/trend.html)の月次推移データを元に作成
 

WS(ペルシャ湾→日本、20-30万DWT)の推移

資料:日本海事センター企画研究部作成の「ワールドスケール(WS)の推移」
 (http://www.jpmac.or.jp/relation/trend.html)の月次推移データを元に作成

ドル・円為替相場の推移

資料:日本銀行「外国為替市況」(http://www.boj.or.jp/statistics/market/forex/fxdaily/index.htm/)
     から集計したドル・円スポットレートの時系列データを基に作成

原油価格の推移

資料:Department of Energy of the US government, U.S. Energy Information Administration公表のPetroleum
     Plices data(http://www.eia.gov/petroleum/data.cfm)から、WTI、BrentのFOB daily spot priceを集計し作成
 

2014年度海運業界の振り返り(2)

(2)邦船3社の比較
 邦船3社においては、コンテナ船の運航を中心とするコンテナ船事業と、ドライバルク船・自動車船・油槽船等の運航を中心とする不定期専用船事業を営むという点で共通しています。一方で、各社はコンテナ船事業・不定期専用船事業及びその他の事業のポートフォリオに相違が見られ、各社の収益性はこのポートフォリオの影響を受けます。また、それぞれの事業においても各社のポートフォリオは異なることから(例えばコンテナ船事業であれば地域ごとの配船状況、不定期専用船事業であればドライバルク船・原油タンカー等の船種ごとの運航隻数等)、邦船3社は同一の事業を営んでいるものの、各種市況変動の影響は各社で異なります。
 

邦船3社の2014年度事業別売上高ポートフォリオ

出所:各社の有価証券報告書より著者が集計

邦船3社の比較

図1:(出所:各社の有価証券報告書) 
図2:(出所:各社の2014年度決算説明資料より著者が集計)

2.今後の展望(1)

(1)2015年度の海運市況
 2015年4月から9月にかけて、コンテナ船とドライバルク船の運賃市況は低迷しています。コンテナ船は、特に欧州向けの荷動きが低調に推移する一方で、海運各社による大型コンテナ船の投入が相次いでいることで、供給過剰の状態が継続しています。ドライバルク船は、中国向けの大型船の荷動きの弱まりが見られるなか、引き続き新造船の大量竣工が見込まれ、需給ギャップが大きい状況が続いています。

(2)邦船3社の業績予想
 海運市況は低調ですが、2015年4月から9月においては、2014年度と同様に円安と原油安が続いており、邦船3社による2015年度の売上高と経常利益の予想は、合算で2014年度と概ね同水準です。

 

邦船3社の連結業績予想(合算)               

単位:億円

 

  2014年度

(実績) 

 2015年度(予想) 

     増減額      

     増減率    

売上高           

55,713

55,560

△153

△0.3%

経常利益

1,843

1,900

56

3.1%

(出所:各社の2014年度有価証券報告書、2015年度第1四半期決算短信より著者が集計)


 

今後の展望(2)

(3)海運業界各社の長期的な取り組み
 国内の海運業界各社は、運航コストの削減や長期の契約船の割合を高めること、収入と借船の契約期間のミスマッチの解消等により、競争力の強化と業績の安定化を図っています。さらに、邦船3社は、それぞれの中期経営計画において、LNG(液化天然ガス)船や海洋事業といった安定した成長を見込む分野での事業拡大により、市況耐性のある安定収益体質になることを目指しています。

 

邦船3社の成長分野への投資計画    

A社          

2014年度から2018年度までの5年間で、LNG船と海洋事業に5,300億円を投資し、2018年度末のLNG船の運航規模100隻超(対2013年度末比+33隻超)を目指す。

B社                    

2014年度から2019年度までの6年間で、LNG船と海洋事業に7,000億円を投資し、2019年度末のLNG船の運航規模120隻(対2013年度末見込み比+54隻)を目指す。 

C社      

2015年度から2019年度までの5年間で、LNG船、LPG船、海洋事業、ケープ船・電力炭船事業などに1,200億円を投資し、2019年度末のLNG船の運航規模61隻(対2014年度末比+18隻)を目指す。 

(出所:各社の中期経営計画)
     

 

 海運業界各社のコンテナ船やドライバルク船の運航事業は、海運市況によって業績が大きく左右されます。今後、各社が事業ポートフォリオの見直しを円滑に行い、業績を安定化することができるのかが注目されます。

※本文中の意見に関わる部分は私見であり、デロイト トーマツ グループの公式見解ではございません。  

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