ナレッジ

2017年度鉄道業界の振り返りと今後の展望

JRと民鉄の比較と今後の展望

2017年度における鉄道業界の経営環境を踏まえ、主要な鉄道会社の業績を参考に、鉄道業界の動向をご紹介します。著者:有限責任監査法人トーマツ 公認会計士 堀場 喬志

2017年度鉄道業界の振り返り

(1)2017年度の鉄道業界の動向

2017年度の鉄道業上場企業は、国内景気が堅調に推移したことや過去最高を更新した訪日外国人客のインバウンド需要の影響等により、ビジネス、観光利用がともに好調に推移し、また、周辺ビジネスも好調であったことから、営業収益は、鉄道業上場企業全体で前年比2.8%増加しています。


また、主に営業収益の増加により経常利益は前年比4.6%増加しています。

(2)JRと民鉄との比較

鉄道業上場企業全体としては好業績であったものの、JRでは、新幹線を中心に長距離輸送を持ち鉄道事業の割合が高いのに対し、民鉄では、近距離路線が中心であり鉄道事業以外の周辺ビジネスの割合が高いという特徴を有しており、内容に相違が見られます。

JR

JRは鉄道事業を含む運輸業セグメントの外部売上が7割を占めています。このうち、東海道新幹線を運営するJR東海は運輸業セグメントの比率が比較的高く、JR九州は鉄道以外にも積極的な事業展開を推進し、運輸業セグメントの比率が比較的低くなっています。
2017年度においては堅調な国内景気、インバウンド需要の増加、2016年の熊本地震発生の影響による減収の反動増などにより運輸業を中心に堅調に推移し、営業収益は過去最高水準となりました。
 

JR上場4社の業績概況
※クリックで画像を拡大
民鉄

民鉄は、近距離路線が中心であり、JRのように路線拡大による収益拡大は容易でないため、バスやタクシーといった鉄道以外の運輸事業、小売や飲食店などの流通事業、周辺の住宅開発やオフィス賃貸といった不動産事業、ホテルやレジャー施設の運営、広告代理など、多岐に及ぶ鉄道以外の事業を展開しており、鉄道事業の占める割合は大半の会社で5割を下回っています。

そのため、2017年度の大手民鉄上場14社を見ると、インバウンドによる観光需要が引き続き好調であったことによるホテル・レジャー事業での増収、大型の不動産分譲に伴う不動産事業での増収など、鉄道以外の事業が好業績に寄与しています。
 

大手民鉄上場14社の業績概況
※クリックで画像を拡大

今後の展望

(1)2018年度の業績予想

鉄道会社の業績予想は全体的に固めの傾向にありますが、鉄道事業を柱とするJRと周辺ビジネスを柱とする民鉄とではその内容が異なっています。
 

鉄道業上場企業(18社)の業績予想
※クリックで画像を拡大

2018年度の鉄道業上場会社の業績は、JR・民鉄ともに、増収・減益のトレンドが予想されています。

JR上場4社は、2018年も堅調な国内景気とインバウンドによる新幹線需要により運輸収入が堅調に推移する見込みとしており、営業収益全体としては1.8%の増加を見込んでいます。ただし、費用面では、燃料価格の上昇などに伴う動力費の増加や修繕費の増加により収入の伸びほどは利益に貢献せず、周辺ビジネスでも沿線開発における大型物件関連経費の発生等により営業費用の増加が見込まれ、経常利益は0.6%の減益予想となっています。

一方、大手民鉄上場14社においても、全体として堅調な国内景気に下支えされ運輸収入が堅調に推移するほか、不動産開発による分譲物件販売数の増加やインバウンド需要取込によるホテル・レジャー事業の売上増等の要因により、営業収益全体としては2.6%の増加を見込んでいるものの、関連費用の増加により利益面では大きく寄与せず、一部の会社では百貨店のリニューアルに伴う店舗休業の影響もあり、経常利益は0.6%の減益予想となっています。

 

(2)旅客人キロの状況
 

旅客人キロの状況
※クリックで画像を拡大

足元の旅客人キロの状況として、6月まではJR、民鉄ともに前年同月比で上回って推移しており、堅調なスタートとなりました。ただし、7月は集中豪雨による災害の影響等により前年同月比98.1%と減少した結果、7月までの累計ベースではほぼ前年同水準の旅客人キロとなっています。(7月末までの累計 2018年:1,495億人キロ、2017年:1,494億人キロ)

その後も大型台風や地震の発生が相次いだことにより、業績予想で見込んでいた輸送量に対し少なからず影響が生じていると考えられます。

2018年上期は台風や集中豪雨、地震の発生など、多くの自然災害に見舞われました。また、自然災害以外にも、車両故障や人為的ミスによる運行トラブルなど、安全・安定輸送に対する信頼を揺るがしかねない事案が発生しています。

このような不測の自然災害や重大インシデントの発生に備え、十分な安全対策を講じることが鉄道事業者に対する社会的な要請として高まっており、各社の重要施策として災害対応や事故防止のための訓練・安全投資を強化しているほか、最近は台風や豪雨による被害が予想される場合には計画運休により利用者の混乱を避け、運行再開をスムーズに行うための対応が定着しつつあります。これら鉄道事業者の使命である安全・安定輸送の確保に向けた各社の取り組みが着実に遂行されることに社会の注目が集まっています。

お役に立ちましたか?