最新動向/市場予測

わが国外航海運業界の事業の動向

~2015年度海運業界の振り返りと2016年度の展望~

本稿執筆時点で入手可能なわが国上場海運企業6社の2016年3月期の決算発表等に基づき、2015年度の決算概況と2016年度の見通しについてまとめました。なお本稿に含まれる意見は執筆者の私見であり、デロイト トーマツ グループの公式見解ではありません。

1. 2015年度の決算概況

2015年度のわが国海運企業の決算は、本稿執筆時点で入手した6社中すべての会社で前年度比で減収となり、経常利益ベースでは1社を除き減益となりました。当年度は原油安に伴う燃料費の低下、および円安効果もありましたが、バラ積船市況の歴史的な低迷、コンテナ船運賃市況の悪化等の影響がこれらを上回ったことによる減収、減益と考えられます。
さらに、市況低迷の長期化をうけ、減損損失、傭船解約損、構造改革費用等の構造改革に伴う特別損失の計上が目立ちました。
 

2. 2016年度の見通し

2016年度の業績予想に関しては、本稿執筆時点で入手した6社中すべての会社が2015年度比で減収見込み、経常利益ベースでも6社中5社が減益の見込みとなっており、依然として厳しい事業環境は続くと予想されています。

3. 事業環境の動向

以下では市況及び需給環境など、海運企業の業績に影響を与える可能性のある主な要素についてまとめました。

(1) バラ積船の運賃市況と需給環境

バルチック海運指数(BDI、1985年=1000)は2016年2月に史上最低の290ポイントを記録しました。BDIは4月の最も高い数値で715まで回復していますが、依然として低水準となっています(図表1参照)。一部報道によれば、船主からはマイナス運賃のオファーもあるなど、厳しい環境が続いています。この背景には新興国の経済成長の減速感をうけ、需給が緩んでいる状況が考えられます。
また、中国は鉄鋼の過剰生産能力の削減政策を推進しており、船腹需要への影響が懸念されます。中国国家統計局の発表によると、粗鋼生産は2016年1~3月累計で前期比 3.2%減少 しています。ただし、中国の粗鋼生産量の減少が中国の鉄鋼原料の輸入量、ひいては船腹需要をどの程度押し下げるかについては、中国国内の鉄鋼原料生産の動向も影響するため現時点では不透明です。
このような状況をふまえ、(わが国のみならず世界中の)海運各社及び船主は古い船舶の解撤を促進しています。一部アナリスト等によると、2016年内に4千万-5千万dwtのバラ積船が解撤されるとの見通しもあるようです。一方、一定量の新造船の竣工も予定されており、解撤による減少と新造船の竣工による増加の影響を合わせると供給全体はそれほど変わらないのではないかとの見方もあるようです。
2016年度の業績予想において、ケープサイズの市況見込みに関しては会社によって-4%~+38%となっており、各社間の予想には比較的大きな幅がある状況となっています。この背景には現在各社が進めている構造改革等の影響も想定されますが、いずれにしても見通しの難しい局面であることがうかがえます。
 

(図表1)

【公益財団法人 日本海事センター企画研究部作成  (公益財団法人 日本海事センターwebサイト http://www.jpmac.or.jp/relation/trend.html?id=19より引用)】

運賃市況と需給環境

(2) コンテナ船の運賃市況と需給環境

大手海運企業の決算説明等を総合すると、2015年度のコンテナ船運賃単価は前年度比でアジア積-北米航路揚の航路(以下、北米航路)において10%前後、アジア積-欧州航路揚の航路(以下、欧州航路)において30%前後の落ち込みとなっており、全航路ベースでも十数%の下落となったようです。
この背景には、2013年度以降加速した大型船の投入の影響があると見られます。大型船は主に欧州航路を中心に投入されています。そして、欧州航路で余った船が北米航路等の他の航路に流れる玉突き現象により、さまざまな航路で供給スペースが余っている状況がうかがえます。
2016年度の業績予想において、国内大手海運企業では北米航路に関しては運賃単価の見通しを下げているようです。一方、欧州航路に関しては上昇と下落両方の見方があり、バラ積船と同様見通しの難しい局面にあると思われます。
同じく、各社の2016年度の業績予想において、積高については北米航路、欧州航路とも回復を想定しているようです。
さらに、そのような環境下でパナマ運河の拡張が予定されています。2015年12月のパナマ運河省のプレスリリースによると、拡張されたパナマ運河は2016年第2四半期頃に開通が見込まれています。拡張後、従来よりも大きなコンテナ船によるアジアから北米東岸への輸送も可能になると考えられます。しかしながら、4.海外の海運企業の動向に記載しているように、今後アライアンスの再編が予測されることもあり、航路の改変や運賃等への影響についての予測は現時点では難しい状況と思われます。

 

燃料と為替相場

(3) 燃料相場

世界銀行によると、2016年の原油相場は前年比19%減の$41$/bblと予測 されています。これに対応して、海運企業各社は2016年度の業績予想において、燃料単価を前年度比 5~35%程度低く見ています。(会社により指標が異なる等の理由により、バラつきがあるものと思われます。)
当然のことながら、燃料価格の下落は海運企業にとって運航費を下げる効果があります。影響が大きい会社では10ドル/MTの燃料単価の下落は十数億円の増益効果があるようです。
しかし、資源価格の下落に連動して生産や消費が落ち込むと、物量そのものが減少し海運市況にとっては需給ギャップ拡大要因となる可能性もあります。資源価格の動向には引き続き注目されます。

(4) 為替相場

わが国の主要な金融機関等の予測によると、2016年度の為替相場は101~113円/ドルで推移すると見込まれています。これに対して、海運企業各社の業績予想における為替前提は期中平均で108~110円/ドルとなっています。
わが国の大手海運企業では1円/ドルの為替変動が利益に与えるは±5~10億円程度と見込まれています。
 

4. 海外の海運企業の動向

海外海運企業では、コンテナ船事業で再編の動きがありました。2015年12月には、いずれも海外のコンテナ船社どうしによる、二つの大きな経営統合が発表されました。コンテナ船の運航各社はアライアンスによるスペースの融通を前提に事業を展開しており、統合後のアライアンス再編のゆくえにも注目されます。

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