ナレッジ

中国における地域支社の強化

今、中国市場で磨くべき戦略視点(市場の選別に向けて)

中国市場の成長が鈍化する中、よりメッシュの細かい経営戦略が求められています。例えば、地域特性に応じたマーケティング・販売の展開、市場環境の変化に対するアンテナの強化、中国における地域支社の強化等が重要な経営テーマとなっています。本稿では、地域支社強化の必要性、実現に向けた課題、課題を克服するための施策などをご紹介します。

中国における地域支社強化の必要性

現在、中国経済は大きな転換期を迎えている。2015年第一四半期のGDPの実質成長率は前年同期比で7.0%増にとどまり、2009年第一四半期以来の低い水準となった。経済成長率の鈍化や将来見込まれる労働力の減少など、マクロ的な要因を踏まえ、中国政府も「新常態」をスローガンとして政策の舵を切った。
マクロ経済環境が変わる中で、経営アジェンダにも変化が起きている。広大な中国で事業を推進する上では、北京・上海等の大規模商圏をいくつかの地域に区切っていく必要があるが、地域経済の選別も重要となっている。中国市場全体の経済成長が鈍化する中、地方都市の成長機会にもバラつきがあり、その質を見分ける必要がある。また、それに伴う組織体制の変化にも注目する必要がある。中国事業における地域支社(分公司、営業所など)の強化が、現地で重要な経営テーマとなっている。広大な国土を誇り、地域ごとの特性が大きく異なる中国市場において、上海や北京などにある本社で中央集権的に事業運営することの限界が顕在化してきているのである。リスク管理の観点からも、地方経済の状況をどう分析し、随時、販売計画や生産計画に反映していくことが重要となっている。

中国における地域支社強化の課題

こうした状況を背景に、現地で日系企業の地域支社の強化を支援する機会が増えている。プロ ジェクトにおいて、業界ベンチマークを実施すると、競合他社(特に欧米系)が地域支社の役割拡大や権限委譲において先行しているケースが目立つ。先行企業では、地域支社が機動的に販売を拡大できるように、地域特性に応じた広告宣伝や店頭販促、地域における販売チャネル開拓などについて一定の権限・予算を与え、また地域支社の販売計画作成プロセスへの関与を高めることで、全体の需給計画の精度を向上させているのである。一方、日系企業においては、依然、役割や権限、人員配置が本社へ集中している傾向が強く、地域支社の強化を進めるに際しても、(1)地域支社のマネジメントを任せられる人材がいない、(2)地域支社を管理する仕組みが構築できていない、という課題に直面することが多い。

事例:欧米系消費財企業の本公司・分公司の機能分担
凡例:○:承認、△:起案

         機能             本公司       分公司   
事業戦略・
年度計画
中国全体     ○  
地域     ○     △
商品企画 企画     △  
市場調査       ○
価格政策 価格設定・調整     ○  
代理店管理 制度設計     ○  
新規開拓     ○     △
既存店フォロー       ○
販売店管理 制度設計     ○  
新規開拓 ○(全国チェーン) ○(全国チェーン)
既存店フォロー    
広告宣伝、
販促
企画  ○(全国共通)   ○(地域分)
執行  ○(全国共通)   ○(地域分)

 

  ○(地域分)
  ○(地域分)

地域支社の強化に向けて

強い地域支社を持つ企業はどのように前記の課題を乗り越えているのだろうか?人材については、本社の幹部或いは幹部候補生を地域支社へ一定期間ローテンションし、地域支社のマネジメントを任せているケースが多い。地縁の強い中国ではローテーション制度の運用が難しいという話もあるが、地域支社へのローテーションを選抜制度に組み込む、地域勤務を一定以上のランクへの昇進要件として定義するなどキャリアアップをインセンティブにし、加えて、適切な赴任パッケージを用意すれば、中国でもローテーション制度を効果的に運用することは可能である。また、地域支社のマネジメントにフォーカスしたトレーニングを提供し、地域支社のマネジメント層の能力開発を後押ししている企業もある。一方、地域支社を管理する仕組みであるが、地域支社への権限を委譲する中で、不正が起こるリスクをどのように抑制するかというのが重要なポイントとなる。地域支社へ権限委譲を進めている企業は、権限規定の詳細化、コンプライアンス教育の徹底といった対応は当然のこと、本社による定期的な監査の導入や地域支社への管理部門の設置という施策を実行している。

まとめ

中国で日々コンサルティングに従事する中、最近、中国経済が転換期を迎え、中国事業の経営の在り方に大きな変化が求められていると感じている。その中で、事業成長およびリスク管理の観点から、地域支社の強化は重要なテーマであり、今後、日系企業も地域支社の役割や権限、KPI、組織、人員配置を見直し、それを支える管理の仕組みの構築に取り組んでいく必要があると考える。なお、本文中の意見に関わる部分は私見である。

関連するサービス

東南アジアにおけるチャネル戦略

東南アジアのチャネル構造は日本と大きく異なります。例えばインドネシアではトラディショナルトレード(伝統的小規模小売店)が市場の8割以上を占め、そこにおける店舗数は100万軒以上と言われています。このような環境においては中間流通活用の巧拙が事業の成否に大きな影響を与えます。デロイト トーマツ グループでは東南アジアのコンサルタントも含めた体制により、現地の深い理解に基づいたチャネル戦略の構築、実行をご支援しています。

お役に立ちましたか?