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中国における統括会社の設立(消費財セクター)

「変化が激しい中国市場において競合他社との競争に勝ち抜くには、現地に権限を委譲し、迅速な意思決定を行う体制を構築する必要がある」 中国市場において事業を展開している日系企業から良く聞かれる声です。 本稿では、そうした体制を構築する一つの手段である、中国における統括会社の設立について、そのメリットや留意点を解説します。

中国に統括会社を設立するメリット

中国における統括会社に最も適した会社形態は投資性公司である。投資性公司は、その他の会社形態とは異なり、資本性の資金を投資に回すことが認められており、持株会社として現地法人を資本関係上その傘下に置くことが出来る。かつては、中国政府が投資性公司に対してグループ企業が生産する商品の国内販売権を優先的に付与してきたという経緯があり、国内販売権を取得するために投資性公司を設立するケースが多かった。しかし、最近は、投資性公司を中国における統括会社と位置づけ、中国事業の規模拡大や効率性向上に向けて、日本本社からの権限委譲や役員派遣を進める、中国に複数ある現地法人のコーポレート機能を統括会社へ集約する、といった動きが活発化している。

投資性公司の制度上の大きなメリットとしては中国国内における効率的な再投資の実現がある。投資性公司が傘下の現地法人から得る配当収入は免税扱いとなるため、現地法人が稼いだ利益を、投資性公司が吸い上げる形にすれば、日本本社に配当する場合と比較して、税務コストを下げることが出来る。加えて、投資性公司は、中国政府が設立を奨励している会社形態であるため、誘致に積極的な地方政府が提供する税務上の優遇措置などを享受することも可能であり、また、地方政府とのネットワーク構築も容易になる。(但し、投資性公司を設立しても、例えば、許認可取得の期間が大幅に短縮できるといった甘い期待は禁物であることは指摘しておきたい)

さらに、投資性公司設立のメリットとして、優秀な中国人を惹きつける「箱」として活用出来る点も見逃せない。勿論、統括会社が権限を持っていること、競争力のある給与が提供されることが大前提ではあるが、中国人にとっても、販売会社や製造会社ではなく、中国の本社で働くことは魅力的であり、優秀な人材の応募が増える傾向がある。

中国統括会社を設立する際の留意点

先に述べたように、投資性公司は、中国国内で稼いだ利益を中国国内で再投資する場合にメリットがあるが、一方で財務・税務の面で一定の制約があることに注意する必要がある。

まず、外国投資者が、投資性公司を設立するには、一定の要件を満たした上で、登録資本金として3000万米ドル以上の新規投資が要求される。登録資本金は、その使途も定められているため、投資性公司を設立する企業は、登録資本金の活用方法を事前に検討し、その可否を見極めておく必要がある。筆者が付き合いのある日系企業においても、資本金が銀行口座に眠ってしまっているという残念な事例が存在している。

また、先に、投資性公司は、持株会社として現地法人を資本関係上その傘下に置くことが出来ると述べたが、日本本社が保有している中国現地法人の持分を投資性公司へ現物出資する際に、中国において譲渡益課税を回避するための特殊税務処理の適用が認められないリスクがあることも認識しておく必要がある。

さらに、資本再編を進め、投資性公司の傘下に現地法人を置いた場合も、「キャッシュトラップ」という問題がある。「キャッシュトラップ」とは、中国からの資金回収に制約が発生してしまうことを指すが、例えば、中国においては、親会社への配当に際して登録資本金の50%まで毎期の利益の10%以上を準備金として積み立てる必要があるため、資本再編を進め、投資性公司の登録資本金が増加した場合、相応の準備金を積み立てる必要が発生してしまうといったことが挙げられる。

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まとめ

筆者自身も、日々のコンサルティングの中で、中国市場で勝ち抜くには現地で迅速に意思決定を行う体制が必要であると感じている。そうした体制の構築に向けて、統括会社(投資性公司)を設置するのは有効な手段であるが、一方で、中国における統括会社設立に際しては留意すべき点も多く存在する。中国における統括会社の設立を検討している企業様においては、そのメリットをしっかりと見極めた上で、意思決定して欲しい。

なお、本文中の意見や見解に関わる部分は私見であり、様々な論点や視点があることをお断りしておく。

(著者:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 世界戦略室、シニアマネジャー 河原崎 研郎)

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