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ナレッジ
アフターコロナを捉えたコンシューマー企業の取組 第2回
サステナブル経営の実現に求められるデジタルトランスフォーメーション
COVID-19パンデミック下で加速する顧客ニーズに対応すべく、Food & Beverage/食品・飲料企業が取り組むべきデジタル活用について解説する。
はじめに
日本のFood & Beverage/食品・飲料業界(以下、F&B業界)は、新型コロナウイルスの影響を受け、顧客ニーズの多様化が加速している。そのような市場変化を追随し、サステナブルな経営を実現するためにデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を推進するなどの様々な対応が求められているが、他の業界と比較すると遅れをとっていることも否めない。その結果、製品データから実用的なインサイトを得る機会、つまりは収益改善や製品開発の質、リードタイムを向上する機会を逸失してしまっている可能性がある。多様化する消費者の行動変化の把握や、商品開発・サービス提供にスピード感を持って対応すべく、本編ではDXを活用することで、どのように価値のある情報を入手し、インサイトへの導くことができるか、事例と共に解説する。
企業におけるデジタル成熟度モデル
米国内のF&B企業は過去3年間でテクノロジー予算が8%増加したと報告されており、デジタルテクノロジーへの投資が増加していることを示している。しかし、これらの企業の多くは、デジタルテクノロジー投資を生かすための重要な要素である一貫したデータマネジメントを欠いており、データの現状に目が向けられていない。そのため多くの場合、インサイトに満ちた結果が得られず、デジタル化によって享受し得るメリットが薄れてしまう可能性を孕んでいる。
組織のデジタル成熟度のモデルは以下のように定義され、企業は強固なデータ基盤を構築するためのステップを踏み、ネットワークテクノロジー投資によるEnd to EndのDXを推進する体制を整備する必要がある。
組織体制の整備により、社内リソースが付加価値の低い作業から解放され、企業の成長やイノベーションのための戦略的活動に注力することが可能になるだろう。
F&B企業が今後デジタル変革によるIT基盤強化で投資収益率の向上を達成するには、段階的なステップが存在し、実行可能なデジタル組織になるための基盤は以下のように定義される。
エンタープライズデータ変換からインサイトを導く
未曽有のパンデミックにより、日本企業も、変化する外部環境や消費者像を正しく捉えた変革が求められている。国内の食品・飲料業界におけるサステナビリティデジタル化によるインサイトの導出は、コスト削減とリスク軽減、さらには製品開発力の向上をもたらし、今後の競争優位を保つうえで大きな役割を担う。
領域については、従来から、各社積極的な投資を行っていたが、特にコロナ禍においてその潮流が加速される動きがある。コロナ禍に見舞われている現在、F&B業界の消費者ニーズの多様化は加速しており、アフターコロナ時代には、多くの多様性が当たり前になることが予想される。何の手も打たなければ、消費者ニーズに対応したサービスや商品提供をスピーディーに行うことができずに商機を逃し、やがては市場から淘汰されてしまう可能性が高い。こうした変化に対応するためには、消費者とのあらゆるタッチポイントを横断的活用が必須となり、卸・リアル店舗に依存しないD to C(Direct to Consumer)のビジネスモデルを確立することが必要である。
D to Cを実現する大きな目的は、消費者の情報や声(VoC)を聞いて、その情報の利活用強化により商品企画精度の向上を図りながら商品・サービスに活かし、ファンを作ることで顧客のLTV(Lifetime Value:生涯価値)を向上させることである。F&B業界の企業は、販売チャネルを拡大し、消費者の情報を得るという画一的なアプローチを捨て、これまで醸成した企業価値、知名度、ブランド力等の資産を生かしつつ、ファンの増加や異業種間の提携など柔軟な発想での取り組みがLTVを向上させる近道となるのではないかと考える。
無計画な「点」での取り組みでは、限定的且つインサイトを得るための消費者情報を得るには至らない。自社の体力や商品の特性を見極め、様々なサービスを組み合わせるなど、将来を見据えた戦略を構築したうえでの「面」での取り組みがインサイトを得るには重要になるだろう。
本レポートはDeloitte Touche Tohmatsu Limited が発表した内容をもとに、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社が翻訳・加筆したものです。和訳版と原文(英語)に差異が発生した場合には、原文を優先します。
デロイト トーマツ 消費財セクターでは、コロナ禍における国内外の最新トレンドの分析・発信をしています。
プロフェッショナル
松岡 和史/Kazufumi Matsuoka
デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員
消費財メーカー、飲料・食品メーカーを中心としたコンシューマービジネス業界を対象に10年以上に渡るコンサルティング実績を持つ。企業・事業戦略、組織戦略、海外進出・展開、新規事業創出といったストラテジー領域を中心に数多くのプロジェクトを手掛けており、直近は、市場の変化と未来像を捉えた形での戦略テーマなども実施している。
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著者
菊地 真司/Shinji Kikuchi
デロイトトーマツコンサルティング シニアマネジャー
プロジェクトマネジメントに強みがあり、多岐にわたる業種においてシステム再編、導入等の大・中規模プロジェクトをリード。また小売業界においてのDX、IT組織改革、基幹システムのグローバル導入等も手掛けている。
(2021.2.15)
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