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荷主企業が輸配送の共同化を成功させるために検討すべき3つのこと

荷主企業の物流コストのうち輸配送コストは約6割とウェイトが大きいため、輸配送効率化が物流コスト削減に及ぼす影響は大きいといえます。各企業は、自社単独での輸配送効率化に取り組む一方で、輸配送共同化については試行錯誤中あるいは未着手なケースが多いです。本稿では、荷主企業が、輸配送の共同化を成功に導く上で、重要な検討項目を3つ取り上げ、それら内容を解説します。

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荷主企業が輸配送の共同化を成功させるために

1. はじめに

物流コストを削減する物流効率化施策は、1.輸配送効率化、2.保管効率化、3.庫内作業効率化の3つに大別することができる。わが国荷主企業の物流コスト内訳は、輸配送コスト60%、保管コスト20%、庫内作業コスト10%、その他コスト10%が一般的な水準と考えられる。荷主企業の物流コストにおける輸配送コストのウェイトは大きく、従って、荷主企業の物流コスト削減に、輸配送の効率化が及ぼすインパクトは大きい。各企業は、自社単独での輸配送効率化に取り組む一方で、様々な困難がつきまとう輸配送の共同化については試行錯誤中あるいは未着手なケースが多い。業種にもよるが、輸配送コストのうち、10から20%は、単独輸配送から輸配送の共同化に切り替えが可能である。従って、輸配送の共同化への取り組みによって、荷主企業は、物流トータルコストの10%弱に対し、新たな改善機会を創出できる。本稿では、輸配送効率化の中でも、新たな改善機会となり得る輸配送の共同化に焦点を当てる。

 

2. 何故、輸配送の共同化に、荷主企業は強い関心を示すのか

物流コスト削減を目指し、わが国荷主企業の多くが、継続的な物流改善に取り組んできた。その結果、わが国全業種の売上高対比物流コスト率は、1996年から2005年までの10年間で1.75%低減した(*1) 。しかし2005年を境に、売上高対比物流コスト率は下げ止まり傾向にある。この一因として、物流事業者とのコスト削減交渉に依存した機能別・拠点別の個別最適がもはや限界に達しつつあることが挙げられる。特に、輸配送では、荷主企業自らが配車権を持ち、日々効率輸配送に取り組んできた一部のロジ先進企業を除けば、運送事業者との運賃削減交渉のみが、荷主企業が輸配送コストを削減する唯一の手段であったと言ってもよいであろう。しかし運賃低減による運送収入減少を運送事業者独自の効率化で吸収することが困難となってきた今、運送事業者に依存する形で、輸配送コストを削減するのは極めて難しくなってきている。今後、輸配送コストの削減余地を新たに見出していくためには、荷主自らが効率輸配送を考え、実施していく必要がある。効率輸配送の一つに、輸配送の共同化がある。輸配送の共同化とは、輸配送業務のサプライチェーンの川上川下との垂直統合、同業・異業との水平統合を志向するものである。

 

*1 日本ロジスティクスシステム協会、『2011年度物流コスト調査報告書(概要版)』、5頁、2012年3月。

 

3. 共同化対象領域の設定を誤らなければ、荷主企業が主導する輸配送の共同化でも成功を収めることは出来る

一般的に、荷主企業が主導する輸配送の共同化は、運送事業者が主導する輸配送の共同化と比べ、成功事例が少ないとされる。確かに、全国規模での輸配送の共同化については、成功事例はほとんどない。一方で、特定エリア(北海道、大阪市、新宿副都心等)での輸配送の共同化については、様々な業種業態で、多くの成功事例が存在する。

多くの荷主企業は、自社輸配送全てを共同化しようとは考えていない。自社単独で効率輸配送できるエリアは、自社単独で輸配送をし、単独では輸配送が非効率となるエリアについて、輸配送を共同化すべきと考えている。自社輸配送のどの領域が効率的で、一方、どの領域が非効率なのかをしっかり見極めた上で、非効率な領域について、共同化を検討していけば、荷主主導であっても、十分成功を収めることは可能である。

 

4. 輸配送の共同化には様々なタイプが存在し、荷主企業の設定した共同化の目的次第で、採択すべきタイプは異なる

輸配送の共同化と言えば、混載をイメージすることが多い。しかし混載以外にも輸配送の共同化には、いくつかのタイプがある。共同化のタイプを「まとめる」、「ならす」、「稼働させ続ける」の三つの観点から検討していきたい。

最初に「まとめる」だが、混載と配送車輌集約の二つがある。車輌積載容量に空きがある際に、他荷主の貨物を取り込み、自貨物と積み合わせ配送するのが、混載である。車輌積載を高めることで、1単位当たり配送コストを低減することができる。一方、届先が同一である複数荷主の貨物をまとめ、少ない車輌で配送するのが、配送車輌集約である。配送車輌集約は、荷受人の荷受作業負荷の軽減を主な目的とする。

次に「ならす」だが、需要波動が異なる複数荷主の貨物を組み合わせ、物量を平準化することで、車輌積載の安定を図るものである。

最後に「稼働させ続ける」だが、復路の実車化と配送車輌の共有化がある。往々にして、配送車輌は、往路は実車だが、復路は空車であるケースが多い。往路最終届先の近傍で帰り荷を確保し、復路を実車化すると、往復トータルでの積載貨物の増分と比べ、往復トータルでの配送コストの増分は小さいため、1単位当たり配送コストを低減させることができる。これが復路の実車化である。一方、配送車輌の共有化とは、配送時間帯が異なる複数荷主で、配送車輌を共有することである。これにより、配送車輌の稼働を高め、その結果、積載貨物を増加させることができる。高稼働となっても、配送車輌1日当たりイニシャルコストは大きく変わることはないので、積載貨物の増加を通じて、1単位当たり車輌イニシャルコストの低減が可能となる。

「まとめる」、「ならす」、「稼動させ続ける」のうち、一つを採択し、荷主企業が、輸配送の共同化に取り組んでいるケースは多数見掛けるが、二つ以上を採択あるいは状況に応じてそれらを組み合わせ、輸配送の共同化に取り組んでいるケースはあまり見掛けることがない。また混載にこだわっている荷主企業が非常に多い。

輸配送の共同化に積極的な荷主企業であっても、着眼点を変え、異なるタイプの輸配送の共同化に取り組むことで、新たな共同化メリットを発見できる可能性が未だ十分にある。そのためには、共同化の目的を明確に設定すること、そして目的を実現するのにふさわしい輸配送の共同化のタイプあるいは組み合わせを採択することが必要である。

 

5. 安易に輸配送の共同化に向け、舵を切るのではなく、自社単独での輸配送効率化に遣り残したことはないか振り返ることが必要である

いろいろな可能性を秘めているとは言え、輸配送の共同化は、輸配送コスト削減の特効薬ではない。共同化によるメリットもあるが、デメリットもある。他社の動向に、自社の輸配送活動が左右されてしまうということは、思いの外、困難が付きまとう。コスト負担や利益配分について、関係者全てが満足できる結論を出すことはできない。そのため関係者間で利害調整を行う必要があるが、これには相当な労力が掛かる。共同化スキームに参加すると脱退することは容易ではない。その一方、共同化スキームから他社が脱退し、物量が確保できなくなり、輸配送の共同化が立ち行かなくなってしまうこともリスクとしてあり得る。

安易に共同化に舵を切るのではなく、その前に、一度、自社単独での輸配送効率化に遣り残したことはないか、まだ効率化余地はないか、振り返ってみることが必要である。この振り返りをして初めて、単独のまま行くのか、共同化に舵を切るのかが判断できるようになる。徹底した輸配送効率化は、荷主企業に運送事業者と伍して戦えるコスト構造を保持させる。これは共同化の成功に必要な条件の一つであり、取り組んでおいて損はない。

 

6. 最後に

参考までに、輸配送の共同化に向けた作業ステップの一例を示す。

 

【表】輸配送の共同化に向けた作業ステップ

項目

論点

自社単独での輸配送効率化の振り返り

•自社単独での輸配送効率化で遣り残しことはないか
•共同化に取り組むに当たって必要な 1.運送会社と戦えるコスト構造と 2.外販力を持っているのか

共同化目的の明確化

•何故、輸配送を共同化したいのか
•自社輸配送のどの領域を共同化したいのか(メーカー引取り、拠点間移動、店舗配送等)

共同化タイプの決定

•共同化目的、共同化対象領域を考慮すると、どのような共同化タイプが好ましいのか
•輸配送の共同化のみならず、共同保管、共同荷役も必要か
•共同運営拠点は必要か

共同パートナーの選定

パートナー要件の明確化
 •サプライチェーンの川上川下との垂直統合、同業/異業との水平統合どちらを志向するのか
 •物量を確保するために、パートナー数はどの程度必要となるのか
パートナー候補へのメリット提示
 •パートナー候補に対し、輸配送の共同化によるメリットをしっかり提示できるか
 
パートナーの選定
 •アプローチをかけられるパートナー候補は十分にあるか
 •どのようにパートナー候補にアプローチをかけるのか

共同化目的の共有

•パートナー選定時に、共同化目的のすり合わせはしっかり出来ているか
•すり合わせが出来ていなかった場合、目的の相違をどう解消するのか

利害調整モデルの構築

利害調整コーディネーターの選定
 •第三者によるパートナー間での利害調整が必要となるが、適任はいるか
 •利害調整コーディネーターが提示する利害調整アプローチは皆が納得できるものか
 責任所在の明確化
 •輸配送の共同化にて生じる責任は全てリストアップされているか
 •各責任の責任所在は明確にされているか
コスト負担ルールの設計
 •コスト実績の集計は誰が行うのか
 •パートナー間でのコスト負担は誰がどう配分するのか
 •負担コストの請求は誰がどう行うのか
利益配分ルールの設計
 •利益(改善効果)の算定は誰がどう行うのか
 •パートナーへの利益配分は誰がどう行うのか
物流条件の調整
 •現行物流条件の把握は詳細レベルで出来ているのか
 •物流条件の優先順序付けは出来るのか
 •物流条件の調整は誰がどう行うのか
関連各所との折衝
 •仕入先、社内他部署等、関連各所との折衝は個社で行うのかそれとも共同で行うのか
 •得意先との折衝は個社で行うのかそれとも共同で行うのか

ネットワークモデルの構築

輸配送ネットワークの設計
 •既存ネットワークを活用するのかそれとも新規にネットワークを整備するのか
 •新規の場合、ゼロベースでネットワークを設計できるか
拠点の設計
 •拠点形態はどうするか(DC、TC、DC+TC)
 •DCおよびDC+TCの場合、在庫責任は誰に持たせるのか
輸配送ルートの設計
 •個々の与件を取り除き、ゼロベースでルートを設計できるか
配車・配送管理の設計
 •配車と配送管理は誰にどう任せるのか
 •イレギュラー対応へはどの水準まで対応するか。またそのコスト負担はどうするか
物流情報の標準化・共有化
 •物流情報の標準化・共有化は可能か
 •可能な場合、仕様はどうするか
 •物流情報処理は誰にどう任せるか
 •情報漏洩リスクにどう備えるか
ユニットロードの標準化・共有化
 •物流情報の標準化・共有化は可能か
 •可能な場合、仕様はどうするか
 •回収スキームはどうするか

物流委託業者の選定

委託要件の明確化
 •RFPとして明確に委託要件は打ち出せるか
 •委託要件に漏れはないか
 •物流管理はどこまで委託業者に任せるのか
委託業者の選定
 •業者の評価基準は明確なものか
 •高い専門性を持つ新規業者の参入はあり得るのか
 •継続的改善について委託候補から提案はあったか

移行計画の立案

•移行計画に十分な時間を確保できるか
•移行計画の進捗管理は誰が行っていくのか

 

本稿では、この一連の作業ステップのうち、輸配送の共同化を成功させるために十分な検討が必要となる「自社単独での輸配送効率化の振り返り」、「共同化目的の決定」、「共同化タイプの決定」の三項目について言及した。なお本文中の意見にかかわる部分は、私見である。

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