調査レポート

フードバリューチェーン

次世代への挑戦

フードバリューチェーンとは、農場から家庭までの、食料の供給と消費に関わるステークホルダーのネットワークです。食品に対する安全性とトレーサビリティへの要求の高まりに伴い、ステークホルダー間での連携が不可欠となっています。本稿では、農産事業者、生産・加工事業者、小売・流通業者、消費者、規制機関といった各ステークホルダーの直面する課題について分析・考察していきます。

フードバリューチェーン 抄訳版のご紹介

フードバリューチェーンを取り巻く環境

フードバリューチェーンについての考察を行うにあたり、まず影響を与える環境変化について整理する。環境変化は、大きくマクロレベルの変化、消費者行動の変化、流通構造や要件の変化、そして生産・供給面での変化に大別できる。

マクロレベルでは、人口増大が最大の変動要因である。人口増大によって食料供給能力が逼迫することがフードバリューチェーンにおける課題となる。

消費者行動の変化は、開発途上国と先進国の両方で起こっている。開発途上国では、所得増や都市部への移住を伴う中間層の拡大により、肉や乳製品を中心とした食生活へとシフトしている。それらの生産にはより多くの穀物や資源を必要とすることから、供給面での課題が大きくなる。一方先進国においては、食に対する意識の変化が大きい。原材料、原産地、鮮度、安全性といった食品そのものに関するものばかりでなく、食品の生産方法における持続可能性や環境配慮にまで目を向けるようになっている。これらは食品供給に対する品質管理要件を高度化させるとともに、コストや販売価格をアップさせる要因にもなる。

流通面ではチャネルや業態の多様化が挙げられる。例えばコンビニエンスストアの拡大は、需要と供給をマッチングさせた円滑な商品補充を求める。またオンラインチャネルの急成長に対応するために、外部のロジスティクスパートナーと共同での体制作りが進むなど、より柔軟で効率的なサプライチェーンの運営が必要になっている。

生産・供給面では、従来の資源集約的な農業から脱却し、設備投資など効果的な資本投下を通じた、生産性の向上が求められている。一方で様々な技術革新によって、生産・供給能力面での制約が解消してきている。遺伝子組換技術や病気の予防による収穫量の増大、温度管理技術による保管・輸送時のロス発生防止など、以前に比べ生産・供給能力は改善されてきている。

フードバリューチェーンとは何か

フードバリューチェーンとは、農場から家庭までの、食料の供給と消費に関わるステークホルダーのネットワークである(図1 参照)。

食品に対する安全性とトレーサビリティへの要求の高まりに伴い、ステークホルダー間でのコラボレーションが不可欠となっている。各ステークホルダーは、原材料のソーシングや食品のハンドリングに関する品質管理責任と説明責任を求められており、単なる機能間連携だけでなく、ネットワーク全体での協業が必要である。またバリューチェーンの効率的な運営には、ナレッジとデータの共有がポイントとなる。例えば垂直統合型のコラボレーションを行う場合には、個々のステークホルダーには単体で機能している時とは別個の役割も持つ必要が出てくる。

Producers (農産事業者)

世界の人口は今世紀末までに100億人を突破すると見込まれており、そうなった場合、開発途上国における食料の生産量を2倍にする必要がある。しかしながら、フードバリューチェーンにおけるProducersとは、無数の小規模農家と僅かな数の国際的な事業者から構成されているのが実態である。彼らは、原材料や資材・農業機器を供給サプライヤーに比べ小規模であり、かつこれまであまり市場経済には晒されて来なかった。過去30年に起きたサプライチェーン統合化の波も、農産事業者にまでは及んでいなかった。

農産事業者にとって穀物価格の上昇も課題であるが、穀物農家もまた低収穫量や肥料のコストアップといった問題を抱えている。食料価格のアップは誰にとっても望ましいものではなく、サプライチェーンに対してコスト抑制圧力が掛かり、結果として農産事業者の利益を侵食していく。

Producersが直面する課題は、主として以下の5つである(詳細はPDFファイルご参照、以下同じ)。

 課題 #1: 生産面における効率性の向上

 課題 #2: 市場の変動性に対応したリスクマネジメント

 課題 #3: 運転資本面でのリスクコントロール

 課題 #4: 情報活用によるイノベーション

Processors (生産・加工事業者)

Processorsには、生鮮食品の供給事業者と加工食品の製造事業者の両者が含まれる。食肉処理、果実・野菜加工、製粉、種油圧搾、魚介製品加工、精糖、菓子・パン加工、乳製品加工といった事業者である。

Processorsが直面する課題は、主として以下の5つである。

 課題 #1: フードバリューチェーン全体の成長を支えるイノベーション

 課題 #2: 食のグローバリゼーションへの対応

 課題 #3: 食の安全性を支えるサプライチェーンの構築

 課題 #4: エネルギー効率性の向上

 課題 #5: 廃棄ロスを抑制するための管理体制構築

Retailers and Distributors (小売業者/流通事業者)

Retailers and Distributorsが直面する課題には、以下の4つが挙げられる。

 課題 #1: 高品質に対する責務の拡大

 課題 #2: 多様なチャネル・業態における複雑性に対応した管理体制の構築

 課題 #3: eコマースチャネルの重要性の高まりへの対応

 課題 #4: パッケージング革新による効率性と差別性の追求

Consumers (消費者)

Consumersの食品に対する関心事は、食料保障、食料価格、食の安全性に集約される。しかしながら、たとえ問題が山積みになっているとしても、消費者は消費に対する習慣を急激に変えることはできない。特に、先進国においては、消費者は食料があるのは当然のことと捉えているし、食料問題も政府や食品業界が解決しているものと考えている。

Consumersが直面する課題には、以下の3つが挙げられる。

 課題 #1: 食糧供給保障と高価格化

 課題 #2: 肥満、健康とウェルネスへの対策

 課題 #3: 食の安全性に対する懸念の高まり

Regulators (規制機関)

食品市場やシステムは、成長し、より裕福になる世界人口に対し食料を供給していくために、グローバル化していく。食料製品は、今や前例の無いほど地球規模で生産、分配されており、安全で、入手可能かつ持続可能な食品供給を保証し得るシステムを強化するために、より多くの参画を全てのステークホルダーに求めている。その結果、伝統的な規制や貿易振興の責任は変わりつつあり、フードバリューチェーンにおける、公共機関と民間部門との新たな関係構築が進んでいる。

Regulatorsが直面する課題には、以下の3つが挙げられる。

 課題 #1: 食のグローバル化に伴う、輸入国と輸出国との取引関係の変化

 課題 #2: 食の安全性および農業・生物テロリズムに対する緊張の高まり

 課題 #3: グローバルな農地買収の拡大とその対応

(485KB, PDF)

フードバリューチェーンの枠組み

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