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カテゴリー別の採算管理を徹底するためのポイント

食品メーカーがカテゴリー別の採算管理への取り組みを一歩でも前進するためのヒントとして、採算管理を徹底するためのポイントを解説します。

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カテゴリー別の採算管理を徹底するためのポイント

1.食品メーカーが、NB商品を小売の棚に並べ続けるのは難しくなっている

最近、スーパーやコンビニなどに食べ物を買いに行くと、あらゆるカテゴリーの棚でPB(プライベートブランド)商品を目にする。日本では、まだ欧米ほどではないものの、小売の売上高に占めるPB商品の比率は10%前後まで高まっており、今後もこの傾向は続くとみられる。特に、牛乳、食パン、菓子、飲料、インスタント食品などのカテゴリーでは、消費者のPB商品購入経験率は70%と、すでに高い水準となっている。また、中長期的に見て、胃袋の数や胃袋あたりの消費量の増加も見込みづらいため、どのカテゴリーにおいても市場のパイが大きくなることは期待できない状態にある。

 

このように、市場のパイが頭打ちとなり、小売の限られた棚に占めるPB商品比率も高まる中、食品メーカーが、NB(ナショナルブランド)商品を小売の棚に並べ続けるのは難しくなっている。

 

2.食品メーカーは、カテゴリー別に競争力のある取引価格を提示できなければならない

食品メーカーが、NB商品をスーパーやコンビニの棚に並べ続けるためには、消費者に対して、競争力のある価値か価格を提示できなければならない。しかもこれには、カテゴリー別の対応が必要である。なぜならば、カテゴリーが異なれば、消費者が求める価値や価格が異なるだけでなく、比較購買の対象とする競合品や小売のバイヤーも異なるためである。

 

この点、食品メーカーは、カテゴリー別に商品開発力を強化し、消費者に対して、競争力のある価値を訴求できるようになることが必要である。しかし、これまでにない市場を切り拓く画期的な新商品を開発し、市場に投入するまでには、どうしても時間がかかる。また、市場に投入しても、必ずしもヒットに結び付くとは限らない。一方で、カテゴリー別に営業提案力を強化し、小売に対して、競争力のある価値を訴求できるようになることも必要である。しかし、既存商品を前提に訴求できる価値にはどうしても限界がある。むしろ、小売のバイヤーからは、1円でも安い取引価格を提示してくれ、と言われかねないであろう。

 

画期的な新商品が生まれるまでの時間をしのぎ、営業マンによる小売への提案活動を援護するためにも、食品メーカーは、小売に対して、カテゴリー別に1円でも競争力のある取引価格を訴求できるようにならなければならない。

 

3.競争力のある取引価格を訴求するためには、カテゴリー別の採算管理の徹底が必要である

食品メーカーが、小売に対して、カテゴリー別に1円でも競争力のある取引価格を訴求できるようになるためには、カテゴリー別の採算管理を徹底する必要がある。すなわち、ブランドより大きな括りであるカテゴリーを管理会計上の業績管理単位として位置付け、開発・生産・販売といった各機能に横串を刺す形で採算を把握し、PDCAを回し続ける。この採算情報をもとに、組織的かつ継続的な収益性改善活動に取り組むのである。

 

なぜカテゴリー別の採算管理の徹底が必要なのか。それは、ある特定の小売からの取引条件の変更要請に対して、“自社と小売の双方にとって売れて儲かる仕組みを構築する”という観点から、「PBを受託するか?」「商品構成をどう組み替えるか?」「商品の価格をいくら下げるか?(あるいは販売促進費をいくら増やすか?)」などを的確に判断するためには、あるカテゴリー全体における各機能横串での採算を把握した上で、採りうる代替案ごとの採算をシミュレーションできる必要があるためである。特に、参入カテゴリーや展開ブランドが多岐にわたる企業においては、ブランド別では単位が小さすぎ、全社や事業別では単位が大きすぎる可能性が高いため、その中間レベルとなるカテゴリー別の採算管理の徹底が非常に重要となる。 

 

4.カテゴリー別の採算管理を徹底するためには、組織の変革に切り込む必要がある

カテゴリー別の採算管理を徹底するためには、まずカテゴリー別の採算を管理するための指標や帳票を定義するとともに、PDCAを回すためのサイクルや、計画策定・実績測定・評価・修正の各プロセスを設計し、整備する必要がある。特に、「カテゴリー別の採算をどの指標(限界利益、貢献利益、営業利益など)で判断するのか?」「計画策定や実績測定においてカテゴリーに直課できないコスト(製造原価、物流費、販売促進費、広告宣伝費など)を配賦するのか?」「配賦するならどういうロジックで配賦するのか?」は大きな論点となる。この際、正確さや精緻さにこだわるのではなく、管理可能性や比較可能性に力点を置いて結論を導くことが、収益性改善に役立つ仕組みづくりのポイントとなる。

 

ただし、これだけでは、カテゴリー別の採算が見えるようになるだけで、管理を徹底することはできない。管理を徹底するためには、組織の変革に切り込む必要がある。例えば、カテゴリー別の採算に責任と権限を持つ組織をつくる。カテゴリー別の採算の改善実行を、開発・生産・販売の各機能に落とし込む責任と権限を持つ組織をつくる。これらの組織を実際に機能させられるだけの経験、能力、スキルを擁する人材を配置する。必要な人材は、内部で育成するだけでなく、外部からも採用する。これら人材の評価や報酬のあり方も変える必要があるであろう。

 

5.組織の変革に切り込むには、組織の変革プロセス自体を管理する必要がある

最後に、食品メーカーが、カテゴリー別の採算管理を徹底する上で非常に重要となるポイントを指摘しておきたい。それは、組織の変革に切り込むためには、組織の変革プロセス自体を管理する必要があるということである。

 

採算管理の仕組みを変えることは、予算や人に関わる責任と権限の配分構造を変えることになる。このため、予算や人に関わる責任とともに権限を失う側の立場からすれば、現状からの変化に抵抗を感じることなる。逆に、予算や人に関わる責任とともに権限を得る側の立場からしても、未来への変化に不安を感じることになる。

 

したがって、採算管理の仕組みを変え、組織の変革に取り組むにあたっては、様々な立場の利害関係者に対して、「いかに変革の必要性や狙いを頭で理解してもらい、心でも納得してもらうか?」「誰に、何を、どのような順番で伝えていくか?」といった組織の変革プロセス自体を計画し、実行を管理することが非常に重要となる。このためには、トップマネジメントの強いリーダーシップと、経営企画部署などによる高い視座と広い視野からの全体最適の推進が必須の要件となるのである。

 

 

 

本稿では、カテゴリー別の採算管理を徹底するためのポイントをお伝えした。食品メーカーが、本テーマへの取り組みを一歩でも前に進めるためのヒントとなれば幸いである。一人の消費者として、ワクワクする売り場、ドキドキする買い物が実現されることを願ってやまない。

 

なお、本文中の意見に関わる部分は私見である。

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