最新動向/市場予測

食品業界のグローバル進化における調達部門の構え

調達機能のあるべき姿についての考察

食品業界では原材料費が売上高の半分以上を占め、収益性向上に直接影響を与えることから、原材料を調達する部門の重要性が極めて高い。競争力のあるコストでグローバル化を推進するために、重要な役割を担う調達機能をどのように位置づけるべきか、購買活動のフェーズ毎にあるべき調達機能を考察する。

日系食品企業を取り巻く環境と調達部門の位置づけ

日系食品企業は日本の経済成長の鈍化や少子高齢化による国内市場の縮小により、国内での大きな成長は望めないと見込んでいる。それゆえ、新興国市場に進出して事業の拡大や海外企業のM&Aを進めてきた企業も多く、今後もこの動きが活発になることが予想される。
その一方で、円安や相場高騰による原材料費の上昇、食の安全・安心への関心向上を受けた品質保証体制強化などコスト増となる要因が増えている。
食品業界では原材料費が売上高の半分以上を占め、収益性向上に直接影響を与えることから、原材料を調達する部門の重要性が極めて高い。
これらを踏まえて今回は、競争力のあるコストでグローバル化を推進するために、重要な役割を担う調達機能をどのように位置づけるべきか、購買活動のフェーズ毎にあるべき調達機能を記載する。

 

商品開発(開発購買)における構え

海外事業展開が先行している食品メーカーでは、東南アジアにて製品を販売する際に、現地の味覚を反映した味付けの製品や、価格に値ごろ感を出すため小容量にした製品を、現地仕様品として積極的に販売している。すなわち、自国と同じレシピや仕様で製造した製品ではなく、現地の嗜好に合わせた製品を作り、価格も現地水準を意識して設定することを推し進めている。 
一方で、海外事業展開が後発になっている食品メーカーでは、製品の提供において、消費者に過度な安全・安心を提供することに固執する傾向がある。そのこだわりが日本の統一品質基準の押し付けになり、現地のニーズを取り込むことにつながらずその結果、売上拡大につながらない事象が見受けられる。

海外拠点で売上を拡大するためには、各地域のニーズを汲み取った製品作りが最も重要である。そのためには、現地での地道な調査や開発が必須となるため、R&D機能を現地で立ち上げ、現地に合った品質で製品を作り込むこと、また、その製品設計に見合った最適原材料を調達できる機能を構築しておくことが必要となる。ただし、地域拠点のみで品質管理や調達機能の構築を進めることは人的リソース面やコスト面からも推進が困難なため、本社がグローバル視点で開発・品質管理・調達体制を構想し機能の立ち上げを行った上で、地域拠点側で運用を開始するアプローチをとるべきである。
 

サプライヤ探索・選定における構え

サプライヤを探索・選定する際、日本の品質基準に沿ったサプライヤ評価基準を適用してしまうと、現地の品質管理やサービスレベルとは大きく異なる場合が多く、適切なサプライヤ評価ができない。そのため、新規サプライヤの探索やサプライヤの見直しが進まず、コストの硬直化を生んでしまう。一方で、サプライヤ評価基準を現地主導で設定してしまうと、品質管理・サービスレベル基準の統制がグローバルでとれず、結果として品質低下を招き、企業のレピュテーションリスクを生む可能性がある。

このようなケースにおいては、本社調達部門が、グローバルで遵守すべきサプライヤ評価基準を設定し、現地で必要な基準を追加・変更していく必要がある。なぜなら、グローバルで評価基準がぶれてしまうと品質・安全に影響を与えてしまい大きな問題に発展してしまう可能性がある一方で、現地基準の調整がないと包括的で一般的な基準になってしまい、評価範囲が限定されてしまうからである。そのため、グローバルで評価基準を策定したうえで、現地にて主要サプライヤの訪問を行い、現地の品質基準やサービスレベルに合わせて、サプライヤ評価基準を見直していくことが望ましい。こうして策定した基準を元に、サプライヤ評価・選定を行うことで、サプライヤ間の競争創出やサプライヤとの協業によるコスト低減を実現することが可能となる。
 

購買活動における構え

現地生産の場合、日本と同じ原材料の使用を想定しても輸入規制やコストの観点から現地調達を検討せざるを得ない場合が多い。そのため、現地もしくは現地隣国での原材料調達率が高まるが、購買情報が現地で閉じてしまい、本社やグローバルに情報が共有されない。また時間が経過する中で現地の要件や特性を考慮しすぎてしまい、結果として購買活動が個別最適な状態に陥ってしまうケースがある。

上記のような課題を解決するために、調達部門は各地の購買情報を一元集約し、グローバルで遵守すべきプロセスやルールを統制できる環境を構築する必要がある。各地で何をどこから購入しているかをグローバル全体で正確に把握した上で、現地で最低限遵守すべき管理方針やルールを提供していくのである。例えば、本社にて各地の相場情報や購入価格情報を一元管理し、分析を行った上で、現地に複社購買の指示や交渉価格水準などの基本方針を提供する。現地ではその方針に従って調達の交渉を有利に進める。このような取り組みを通じて、本社と現地の連携を深めていくことにより、効率的な購買活動の実現していくのである。
 

最後に

調達活動のフェーズ毎に課題と調達機能のあるべき姿を考察した。食品業界での調達機能は、現地での管理が中心になるが、行き過ぎてしまうと、本社の統制が利かなくなり全体最適での購買管理が困難になる。このような状況を回避するためには、本社がグローバル視点で構想・スキームを策定し業務の土台を構築した上で、現地で運営しながらカスタマイズを続けていけるような購買管理の仕組みや体制を構築することが重要である。

なお、本文中の意見や見解に関わる部分は私見であり、様々な論点や視点があることをお断りしておく。

(著者:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 マネージャー 加賀裕之)

 

 

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