調査レポート

世界の小売業ランキング 2014

毎年デロイトが米Stores Media誌と共同で発表するレポート“Global Powers of Retailing”では、 世界の小売業における売上トップ250社をランキングし、小売業界のグローバルトレンドについて解説しています。本稿では、今回のランキングにおける主なポイントについてご紹介します。

はじめに

Global Powers of Retailing”は、今年の2014年版で17回目を迎えた。このランキングは、デロイトが米国のStores Media誌と共同で発表しているもので、2012年の小売事業の業績(2013年6月末までに終わる最新会計年度)をUSドルに換算して比較したものである。 

経済背景

本年のランキングは、2011年の景気後退の影響がまだ残っているものである。ヨーロッパでは、2012年前半までその影響が残っており、ヨーロッパの景気後退は、2012年の中国の経済成長率の鈍化など、世界中に影響を与えた。日本では、2011年の東日本大震災からの力強い復興があるにもかかわらず、経済成長は芳しくない。一方米国は、2011年を通じてほぼ景気は失速状態であったが、2012年初頭から消費者支出に回復の兆しが見られ、なおかつ住宅市場に改善の兆候があった。もちろん発展途上国では成長は非常に堅調だが、トップ250社が主に事業展開をする国では、経済環境は弱気であった。

ランキング全体

この様に2012年の経済環境は厳しい状況であったが、世界のトップ小売業は成長を続け、2010年から始まった景気の落ち込みから立ち直っている。

トップ250社の2012年の小売事業売上高合計は4兆2900億USドルで、昨年対比で4.9%増である。2010年の5.3%増、2011年の5.1%増に続いて堅調に回復をしてきている。トップ250社の80%に当たる199社の小売事業売上高が成長しているが、売上高が減少している企業の中では、依然として日本企業が少なからぬ数を占めている。

250社のうち198社が損益を公開しており、そのうち171社が利益を計上している。それらの加重平均利益率は3.1%、ROA(総資産利益率)は5%であった。利益率とROAは2011年及び2010年の数値と比較すると低下しているが、これは純粋に本調査の計算方法の変更によるものである。本年より、トップ250社の内で小売事業を主としない企業(例:アップル社)を、利益率及びROAの計算の対象から除外した。このため2011年以前の数値との単純比較はできなくなっている。

トップ250社の平均売上高は170億USドルで、250社にランクインするためには、38億USドルがミニマムラインである。

トップ10企業

2012年ではトップ10にも変動があった。

ウォルマートは不動の1位で2位との差をさらに広げた。一方昨年2位だったカルフールが4位に転落。これは続いている売上高の下落に加えて、ディスカウント業態のDiaを2011年のスピンオフさせたことによるもの。その代わりに2位になったのがテスコだが、同社もアメリカのフレッシュ&イージー事業閉鎖決定の影響を受け、業績は伸び悩んだ。7位のメトロにとっては、2012年は事業再構成の年であった。主なものでもイギリスでのマクロ業態、及び東ヨーロッパでのレアル業態の売却があり、その他の事由を加えて昨年の4位から7位に転落をした。一方でコストコは、対前年比+11.5%の二桁成長とユーロに対するUSドルの強さから、3ランクアップの3位になった。同様に強い米ドルの恩恵を受けたのがホームデポで、ドイツのアルディと順位が入れ替わり、8位になった。またターゲットは、昨年から1ランクあがってトップ10にランクインし、代わりにウォルグリーンが2ランクダウンの11位になった。

トップ10企業全体としては、250社平均+4.9%に対して+4.2%と低く、利益率も2012年実施のリストラなどの影響で、250社加重平均3.1%と比較して2.8%と低かった。特にテスコのアメリカ事業撤退による損失の影響が大きかった。低調な利益率と比較をするとROAは好調であり、250社平均の5.0%よりも高い、5.8%であった。

またトップ10企業は海外展開に積極的で、平均で16.3カ国で事業を営み1/3の売上を上げているが、250社平均では10カ国、海外売上構成比は1/4以下であった。ただしトップ10の中でも、ヨーロッパ企業4社(ランクインは5社)は海外事業売上の方が多い一方で、アメリカ企業5社中2社は、海外事業を行っていなかった。

エリア別の状況

本社の所在地別に分析を実施した。トップ250社のうち、北米拠点が92社で最も多く、売上の45.2%を占めた。ついでヨーロッパ企業が82社で37.1%、アジアパシフィック60社、15.1%と続く。その中で日本企業は39社で8.7%であった。これを成長率で見ると、トップ250社の加重平均が4.9%に対して、北米企業が4.8%、ヨーロッパが4.5%、アジアパシフィックが4.9%であり、ヨーロッパ企業が景気後退の影響を一番受けていることがわかる。

海外事業への依存度がもっとも高いのはヨーロッパ企業であり、平均15.6カ国から39.1%の売上を得ている。それと対照的なのがアジアパシフィック企業の5.7カ国、12.6%と、北米企業の8.4カ国、16.1%である。アジアパシフィック企業は日本企業の4.0カ国、7.7%の影響が大きく、日本企業の国際化が依然として進んでいないことが明らかである。

商品セクター別の状況

250社のうち、主として消費財(FMCG)を取り扱う企業が137社で売上の68.3%、ついで家電や家具、レジャー用品のような大型商品を取り扱う企業が52社、14.9%。そして衣料品などのファッション用品小売業が42社8.8%であった。対前年売上高成長率で見ると250社加重平均+4.9%と比較すると、消費財+5.3%、pファッション+5.1%、大型商品+4.5%となる。また一方で国際化を見てみると、ファッションが平均22.2カ国で29.8%が海外事業売上だが、消費財は5.1カ国23.3%、そのうち44.5%の企業は本国でしか事業を営んでいなかった。

急成長している企業

過去5年間の対前年売上高成長率による50社ランキングでは、新興国ベースの企業がロシアやアフリカ/中近東、南米などに本社を置く26社がランクインして、過半数以上を占めた。過去5年間の年換算成長率は18.7%で、250社へその成長の源としては、依然としてM&Aが強い。

eリテーラー トップ50社

本年から、このランキングの初の試みとして、eリテーラー50社ランキングを作成した。これには、B2Cのeリテーラーは含まれるが、在庫を保有せず手数料のみを得るようなeマーケットプレイスは除外した。作成に当たっては企業によって異なる前提や定義を統一し、ネット販売による売上高を横比較できるランキングとした。

その結果として、アマゾンが世界のネット販売の圧倒的なトップにいることが確認できた。またeリテーラートップ50社の3/4以上にあたる39社が、小売業トップ250社にランキング入りしている企業であった。eリテーラー50社のうちネット専業なのはわずか8社で、他はリアルを含めた複数チャネルを持った小売業であった。

アジアはeコマース市場で最も成長が激しい市場のひとつであるが、アリババやタオバオ、Tモール、楽天などの主要なプレイヤーは小売業者としてはなく、ネットモールのファリシテーターとして活動しているため、その売上高は手数料収入であり、売上高ランキングでは上位に入ることはできなかった。

eリテーラートップ50社は、平均で29%程度成長しており、今後もその成長が続く見込みである。

(抄訳: デロイト トーマツ コンサルティング株式会社)

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