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小売業における固定資産の減損会計の特徴

小売業の会計シリーズ5

固定資産の減損会計を適用するにあたっては、資産のグルーピングを行い、資産グループごとに減損の兆候を把握します。減損の兆候が識別された場合には、資産グループごとの将来キャッシュ・フローに基づき減損損失の認識要否の判定を行います。本稿においては、小売業における固定資産の減損会計の特徴について解説します。

【図表1】 減損会計の手順

小売業における固定資産のグルーピング

資産のグルーピングは、他の資産または資産グループから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で行うこととされており、実務的には、管理会計上の区分や投資の意思決定を行う際の単位等を考慮してグルーピングの方法を定めることになると考えられる。

したがって、小売業においては、通常、店舗別で投資意思決定を行い損益管理されていることから、原則として店舗がグルーピングの単位と考えられる。 

小売業における減損の兆候

固定資産の減損会計に係る会計基準(以下、減損会計基準という)では、実務上の負担を考慮して、減損の兆候があると判断された資産または資産グループに対して、減損の認識に関する判定を行うとされている。

減損会計基準における減損の兆候の例示及び小売業において対応する事象の例は以下のとおりである。 

【図表2】 減損の兆候

会計基準の例示 

小売業において対応する事象の例 

資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっているか、あるいは、継続してマイナスとなる見込みである場合  

店舗の営業損益が過去2期継続して赤字で、かつ、当期の見込みも明らかに赤字になっている場合や前期及当期以降の見込みが継続して赤字となる見込みの場合など。
なお、管理会計上、営業活動から生じる損益を把握せず、営業キャッシュ・フローだけを把握している場合には、営業キャッシュ・フローを用いて減損の兆候を把握することが容認されている。
また、店舗開店時など、あらかじめ合理的な店舗別損益計画が策定されており、当初より継続してマイナスとなることが予定されている場合は、計画が実績に比べて著しく下方に乖離していない場合は、減損の兆候に該当しないと考えられる場合もある。 

資産又は資産グループが使用されている範囲又は方法について、資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは、生ずる見込みである場合 

店舗閉店や業態変更、外部賃貸用へ用途変更などの意思決定をした場合など。 

資産又は資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したか、あるいは、悪化する見込みである場合 

主要な商品の店頭価格の大幅な下落や重要な法律の改正が行われた場合など。
なお、同じ商圏内に同業他社の大規模店舗が出店したことにより、営業損益または営業キャッシュ・フローが今後継続して赤字になる見込みである場合なども考えられる。 

資産又は資産グループの市場価格が著しく下落した場合 

店舗用所有土地の地価が大幅に下落(50%程度以上)した場合など。 

将来キャッシュ・フロー見積りの留意点

減損損失を認識するかどうかの判定および使用価値の算定に際して、合理的で説明可能な仮定および予測に基づき、将来キャッシュ・フローを見積もることが必要になる。

図表1にある「減損損失の認識の判定」を行う場合に、将来キャッシュ・フローを見積もる期間は、資産グループの中の主要な資産の経済的残存使用年数または20年のいずれか短いほうとする必要がある。また、「減損損失の測定」のため、使用価値の算定を行う場合に、将来キャッシュ・フローを見積もる期間は、資産グループの中の主要な資産の経済的残存使用年数とする必要がある。

小売業においては、同業他社の出店や退店等の外部要因に影響を受けるため、店舗ごとの中長期損益計画が存在しない場合がある。このような場合、企業内外の情報に基づき、店舗の現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮し、翌期の損益計画や過去の損益実績にこれまでの趨勢を踏まえた一定又は逓減する成長率を加味して将来キャッシュ・フローを見積もる必要がある。

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今回掲載した内容については、『Q&A業種別会計実務6・小売』(中央経済社2013年 トーマツ コンシューマービジネス インダストリーグループ)にも掲載しておりますのでご参照ください。

※本文中の意見に関わる部分は私見であり、トーマツグループの公式見解ではございません。 

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