最新動向/市場予測

小売企業のグローバル化

多くの小売企業にとって、グローバルにおける成長戦略はもはや先送りすることはできないイシューになっています。 本稿では、グローバル展開を模索している小売企業にとって、考慮すべき重要なポイントを「リスク評価」、「戦略の現地化」、「参入市場・参入方法」の3つの観点で考察していきます。

はじめに

近年、日本企業を含めた先進国の小売企業は、自国マーケットへの依存度を減らしており、新興国を中心としたより魅力的な海外市場への展開を加速している。一方で、グローバル展開には様々なリスクが存在するが、自国マーケットとは異なる政治・経済・文化などに対する調査・準備が不十分なまま進出してしまうケースも多い。本稿では、「リスク評価」、「戦略の現地化」、「参入市場・参入方法」の3つの観点で重要なポイントを考察していきたい。

1. リスク評価

新興国を中心とした新たなマーケットへ進出する小売企業は、異なる消費者文化、競合環境、規制状況などに合わせて、既存のマーチャンダイジング、マーケティング、人材資源、税務政策などを再評価する必要がある。加えて、政治の不安定さ、為替変動など、進出企業自身がコントロールできないマクロ環境要因もリスクになり得るため、多面的なリスク評価が必要である。

A) 投資回収の予測
進出国での保護主義的な政策や汚職などの政治の不安定さ、発展途上のインフラ、供給市場不足などを適切に評価しなければ、進出時の投資回収予測を見誤ることになる。

B) ブランドイメージの毀損
最終消費者を相手にする小売企業は、新しいマーケットにおいてもブランドイメージを構築する必要があり、製品の品質、労働条件等、進出国でのあらゆる企業活動において、ブランドイメージを毀損するリスクが存在することを認識しなければならない。

C) 自社のグローバル対応力の把握
グローバルリーダーシップ力、流通・販売などの機能ごとの対応力、活用できる資源など、自社のグローバル対応力を正確に評価・把握することが重要である。

D) 現地競合企業の進化
これまで欧米を中心とした先進国の小売企業は、新興国などの現代的な小売業が未発達なマーケットへ、最先端の小売ノウハウを持ち込むことで成長を遂げてきた。しかし近年、現地小売企業も急激な進化を続けており、それらの現地企業の競争力を過小評価する事は、進出国におけるオポチュニティの評価を見誤ることに繋がる。

2. 戦略の現地化

消費者との緊密でパーソナルな関係性が必要とされる小売業のビジネスにおいて、グローバル展開によりビジネスが複雑化していくのは当然である。年齢・収入・家族構成といったデモグラフィックな情報に加え、現地の文化、伝統、味覚、嗜好、慣習などを把握した上で、戦略を現地化することが求められる。但し、これらの特性は各国で異なるだけではなく、場合によっては一つの国の地域間でも異なるということに注意が必要である。

3. 参入市場・参入方法

A) 参入市場

グローバル展開を図る小売企業は、BRICsやASEANといった新興国の市場規模・成長性に魅力を感じる。一方で、新興国におけるビジネスオペレーションの難しさを過小評価することにより、参入容易性を見誤る傾向がある。マクロ経済における成長要因以外にも、税務、治安、労働慣習なども考慮の上、参入市場を評価する必要があるのだ。
また、参入市場を評価する上では、自国マーケットとの類似性は大きなポイントである。物理的な近さに加え、文化や労働慣行などの類似性は、参入容易性の重要評価項目だ。 特に、グローバル展開の経験値が低い小売企業にとっては、純粋なマーケットポテンシャルよりも、こうした参入容易性の評価が優先項目になり得る。

B) 参入方法
小売企業が新しい海外マーケットへ参入する方法として、フランチャイズ展開や合弁企業などいくつかの方法が存在するが、近年注目を集めている参入方法はオンラインチャネルによる参入である。
インターネットの普及やオンライン滞在時間の増加、クレジットカードユーザーの増加などを背景に、オンラインチャネルによる小売市場は世界中で拡大しており、まだ見ぬ海外の消費者へ最初に繋がる方法として選択されるケースが増加している。
また、参入時の重要検討項目となるのが人材確保とガバナンス体制である。人材確保については、特に新興国における小売業に精通した労働者は不足傾向にあり、自国からの長期出張や駐在員によって賄っているケースが多い。
ガバナンス体制の構築については、中央集権化と現地化の正しいバランスを見極めることで、長期的な成長を支える上での機動的なガバナンス体制を構築することが肝要である。

最後に

国内経済の停滞により、多くの日本の小売企業にとって、新興国を中心としたグローバルへの展開・拡大は不可欠な戦略となっている。一方で、それらの新しいマーケットへの参入競争は激しさを増している。欧米の小売企業は各国でのポジション強化を進めており、現地企業の台頭も著しい。そのような中、本格的なグローバル展開を先送りにすることはもはや現実的な選択肢ではなくなっている。

デロイト トーマツ グループとしても、各国のデロイト事務所と協同で日本の小売企業のグローバル展開を支援していきたい。

原文レポート”Retail Globalization”はこちら

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