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業界展望2019 小売

小売業者が業界のディスラプションを乗り越える

消費者の影響力が一段と大きくなる中、小売業界は変化の分岐点に立っている。本レポートでは、小売業界で勝ち続けるために今後求められる変化への対応について検討する。

小売業者にとっての転換期

小売業界は今、変化の分岐点に立っている。消費者中心の隣接セクターとのせめぎ合いが年々増加し、ディスラプション(創造的破壊)が続いている。ディスラプションにより、様々な変化が起こる中、消費者の影響力は一段と増しており、「すべてを手に入れること」への期待は健在である。

2018年は、堅調な米国経済、記録的なホリデーシーズン、企業間での利益差、有名企業の破産、さらに世界的な貿易と経済の緊張加わり、業界にとって様々な出来事があった。2018年の小売売上高は、好調な労働市場、個人可処分所得の増加、消費者信頼感の高まりを受け、堅実な結果を収めた。しかし2019年は、経済には逆風が吹く可能性もあり、小売業者にとっては、来る変化への対応を始める年となり、将来の成功を確保するための大胆な行動も求められるかもしれない。

多くの小売業者がここ10~20年の間に、新店舗増設を軸とする成長戦略から、事業の全分野に対する大規模投資へ成長戦略をシフトさせてきた。新たなデジタル販売モデルの立ち上げ、他事業の買収、フルフィルメントプロセスの改革などがその例である。その結果、マーケットシェア向上に要する費用が膨れ上がり、多くの小売業者にとっておぼつかない状況が続いている。

転換点において、2019年は小売業者どのような戦略に注力すべきだろうか。組織全体の調和を創出するために戦略的に投資ができた者が、万全の態勢で将来を迎えることになるだろう。

 

1.物的なロイヤルティvs感情的なロイヤルティ

小売業者は利用度合いに応じた段階的なプログラム以外の選択肢にも目を向けるべきだ。例えば、現在はポイントや割引制度、ギフトやDMなど従来型のロイヤルティ特典が中心となっているが、これは「物的な」ロイヤルティしか生まない。ロイヤルティ・プログラムは転換期に差し掛かっている。消費者のロイヤルティを向上させることに真摯に取り組むことで、小売業者はロイヤルティ・プログラムを最適化し、さらに価値のあるものに昇華させることができる。プログラムは小売業者の価値や顧客の会話に寄り添ったものでなければならない。最近はロイヤルティ・プログラムの範囲が広がり、利便性(自宅への宅配、問題解消など)や体験(メンバー限定の催しや限定版商品など)に重点が置かれている。

 

2.デジタル・スタートアップと資金調達

デジタル・スタートアップ企業はもうすでに影の存在ではない。スタートアップ企業は、小売業界が直面してきた慢性的な問題に、革新性の提供、パーソナライゼーション、オーセンティック・エンゲージメント、差別化されたフルフィルメントなどの手段をもって対応している。スタートアップに先を越された従来型の小売業者が巻き返すためには、事業開発とコーポレート戦略の境界を曖昧にし、前進する必要がある。次の『ビッグ・アイディア』を得るために、スペシャリストから、またはスカウトなどを通してアドバイスを検討することも悪くはないであろう。

 

3.新興テクノロジー

IT戦略がアーキテクチャ、アップデート、ERPシステムのみに限られていた時代は終わった。投資オプションやテクノロジー、ベンダーにしろ、無数にある選択肢から次の『大当たり』をかぎ分け確保するのは並大抵なことではない。最終的に、小売業者はこれらのソリューションを評価し、どのようにビジネスに取り込むべきか見極める必要がある。次世代テクノロジーの真価を引き出すためには、小売業者はそれ相応の大きな変化を受け入れる必要がある。ブランドプロミスを実現し、将来に適応するために、収集したデータを一貫して分析し、業務改革につなげる必要もある。

 

4.中国のリーダーシップに学ぶ

競争優位性を得るためには、小売業者はグローバルかつ業界間で共通するトレンドに目を向け、顧客体験の形成を可能にするケイパビリティを構築していくことが必要だ。中国の消費者と小売市場では、テクノロジーがすでに一世代先を行っている。米国での次世代テクノロジーは、中国ではすでに過去のものとなっている。今中国をリードしている企業を見ると、オンライン・ツー・オフライン、ラストワンマイルデリバリー、サービスとしてのサプライチェーン、ソーシャル・コマースなど、新しく生まれた分野での可能性を秘めたテクノロジーについて、また官民の先進的なインフラについて理解を深めることができるだろう。

 

5.プライバシーをデザインする

小売業者にとって、消費者データは絶対不可欠だ。何年もの間、業界はデータの作成と利用の方法について奮闘してきた。今やこうした所有データやそこに含まれる個人情報が、企業を危機に陥れている。

 

6.差別化要因としてのサプライチェーン

サプライチェーンは急速に、消費者に差別化されたサービスを提供する手段になりつつある。だがサプライチェーンを加速させ、もっと予測しやすくし、コストを抑えるという三つの要素を同時に行うことは困難である。困難が予想されるこれからの時代を迎えるにあたり、サプライチェーンを改善することが成長への大きな牽引力となる。単に競合他社の動きに反応してトレンドに投資するのではなく、幅広いサプライチェーン戦略に基づき、長期にわたる競争上の優位性を積み上げていくべきだ。

 

小売業界で勝ち続けるためには

2019年は戦略的投資とデータの戦略的活用が求められる年になるだろう。この先1年間、目の前に見えている暗雲に対応する準備ができているだろうか。どのようなものに賭ければよいのか。どのようにそれらを統合し、組織の便益を最大化するのか。こうした問いに効果的に対応することが今後、勝ち続けていく手立てとなり、最終的には小売業の未来を形作るだろう。

原文(英語)レポートは以下よりご参照頂けます。

2019 retail outlook.pdf

(710KB, PDF)
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