最新動向/市場予測

モノの(そしてヒトの)インターネット

Analytics Trends 2016

Internet of Things(IoT、モノのインターネット)は、新たなビジネスモデルを生み出し、人々の行動パターンにも影響を与えるようになりつつある。

Analytics Trends 2016

2016年は、デロイトが「Analytics Trends」の発刊を通じて、短・中期的にビジネスの潮流に影響を与えるであろうと思われるアナリティクスのトレンドを分析し続けて3年目となる。アナリティクス関連の様々なトピックを定点観測し続けると、一部のトレンドは一過性のブームとして消えることなく、ビジネス社会にしっかりと根を下ろしながら、きわめて速いスピードで進化し続けていることが明らかになってきた。科学の世界では、急速に変化する事象について注意深く観察することが求められる。アナリティクスのトレンドについても同じで、急速に進化を続けるトレンドについては、新たな目で見直すことが重要であろう。

新たなイノベーションの源泉

イノベーションは、常にビジネスや社会の大きな変革を牽引する原動力であった。そして新たな製品・サービスを創り出すためにデータの集積・分析が進むにつれて、ますますイノベーションが生まれている。少し前までは、主に「ちょっと面白いガジェット」との関係で取り上げられることの多かったInternet of Things(IoT、モノのインターネット)の概念も、いまや急速に「ヒト」までも「モノ」のように追跡し、新たなビジネスモデルを生み出し(Uberが典型的な例として挙げられよう)、人々の行動パターンにも影響を与えるようになりつつある。

本格化する投資

こうしたイノベーションは、コンシューマービジネスとB2Bの両領域で起きている。International Data Corporation(IDC)社の調査結果では、全世界におけるIoT市場規模は2014年から2020年までに6,558億米ドル相当から1.7兆米ドル相当にまで拡大すると試算されている。2020年にはIoT市場の2/3をデバイス、インターネット接続サービス、ITサービスが占め、中でもデバイス(モジュールやセンサー)だけで市場規模の3割を占めるだろうと見込まれている1

1出典:International Data Corporation “IDC's Worldwide Internet of Things Taxonomy, 2015”、 “Worldwide Internet of Things Forecast, 2015-2020” 及び “Worldwide IoT Spending Guide by Vertical”

既存インフラの活用

IoTアプリケーションで必要となるインフラの大部分はすでに存在していることに、多くの企業が気づき始めている。例えば、自動車保険商品を扱う損害保険会社では、「実走行距離連動型自動車保険商品」の仕組みに、顧客が保有するスマートフォンデータを活用するようになりつつある。顧客が身に着けるウェアラブルデバイス(活動量計)によって測定された身体活動データをモニタリングし、特定条件に該当する場合には保険料のディスカウントを開始している生命保険会社もある。運送業などのB2B企業では、GPSをはじめとする各種センサーを装備した長距離トラックや貨物列車により、輸送経路の最適化や走行解析などを活用した新たなサービス提供が可能となった。その他、どの地点で給油すればよりコストを抑制できるか、などについても有用な情報が得られるようになっている。

IoTのもたらすイノベーションには、より大きな視点で公益上のメリットも期待される。各種輸送業のエネルギー効率や時間効率は確実に上がるであろう。地方公共団体と現地事業者との連携が進めば、より透明性と経済効率の高い公共サービスが得られるようになるかもしれない。例えば、ごみ収集車に道路にできた穴を検知するデバイスを装備し、穴を発見したら自動的に当局に通知する機能を取り付ける、といったことが考えられる。また、ドライバーが空きスペースのある駐車場を探してウロウロ走り回るために費やす時間と労力も、リアルタイム駐車場情報の共有によって削減できるだろう。

このように、IoTによって大きな変革・改善が見込めない産業を探すほうがむしろ困難だ。依然として、IoT関連の規格を確立し、センサーデータを必要に応じて取り込むための仕組みを構築するためには、少なからぬ努力は必要となるであろうが、健康増進、効率化、コスト削減などの領域においては、現状のインフラを活用しすぐに役立てることが可能なアプリケーションも多い。

インパクト

・社会へのインパクト:大

・ビジネスへのインパクト:大

・ピークの予測到来時期:5年後

・もっとも影響を受ける業界:コンシューマープロダクツ、保険、石油/天然ガス、国、自治体

・変革を牽引するであろう領域:カスタマーサービス、IT、商品開発

ケーススタディ:ボストン市

早くからIoTに取り組んできた地方政府は少なくない。多数の世界的有名大学、研究所、技術系スタートアップを擁するボストン市も、早くから積極的にIoTに取り組んできている。同市はライドシェアリング(自動車相乗り通勤)システムを運営するベンチャービジネスと提携し、交通渋滞のリアルタイムデータをモニタリングし、その見返りに工事・封鎖・パレードなどによる交通規制に関する道路情報を提携先企業が運営するオンライン地図に提供するなどして、交通/駐車場アプリの早期実用化を達成している。市民は、スマートフォンを通じて駐車場の空車情報を確認し、駐車料金もスマートフォンで支払うことができる。また、市民がアプリを使って道路状態を評価・通報することもできる。

ボストン市はまた、ソーラーゴミ箱「BigBelly」を最も初期に導入した自治体でもある。BigBellyはゴミの蓄積状況をリアルタイムで通知することで、ゴミ回収事業の最適化を図るゴミ箱である。その他、まだボストン市には設置されていないが、スマートフォンを充電したり、騒音/公害レベルを通報する機能を備えた「スマートベンチ」も開発されている。

地方自治体によるIoT活用は、まだ黎明期にある。しかしボストン市を始め、シンガポール、アムステルダム、トロントなどの都市は、インターネットに接続された「スマート」なデバイスにより、都市生活がどれほど大きく変革しうるかを、先陣を切って我々に示してくれている。

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