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「人間か機械か」の二元論 薄れゆく境界線

Analytics Trends 2016

「人間か機械か」という二元論は、一方のみが取捨選択されるような排他的なものではなく、相互に補い合うことで、より高度な知恵の獲得を可能たらしめるものである。

Analytics Trends 2016

2016年は、デロイトが「Analytics Trends」の発刊を通じて、短・中期的にビジネスの潮流に影響を与えるであろうと思われるアナリティクスのトレンドを分析し続けて3年目となる。アナリティクス関連の様々なトピックを定点観測し続けると、一部のトレンドは一過性のブームとして消えることなく、ビジネス社会にしっかりと根を下ろしながら、きわめて速いスピードで進化し続けていることが明らかになってきた。科学の世界では、急速に変化する事象について注意深く観察することが求められる。アナリティクスのトレンドについても同じで、急速に進化を続けるトレンドについては、新たな目で見直すことが重要であろう。

機械は人間を駆逐するのか

「スマートマシン時代が到来し、多くの人間が職を失う」。メディアは扇情的にこう喧伝するが、心配しなくても人間が必要とされる余地はまだまだ残る。プロセスがオートメーション化されても、人間はそこに付加価値を与えるという役割を常に果たしてきており、この流れは引き続き変わらないだろう。

とは言え、ベンチャーキャピタルが2014年、2015年に10億米ドル超の資金をコグニティブテクノロジーに投入していることからも見て取れるように、我々は明らかにコグニティブテクノロジー隆盛の時代を迎えている。アナリストの予測では、コグニティブソリューションの総市場規模は2025年までに600億米ドルを超えるだろうとされる1。コグニティブテクノロジーはその進化に伴い、「数多く存在するツールの一つ」として普遍化することであろう。すなわち、正しく活用すれば大いに役立つが、かといって同様に人類の知恵や思考プロセスを補完するツールであるその他の伝統的なアナリティクスケーパビリティを駆逐して置き換えてしまうものではないはずだ。「人間か機械か」という二元論は、一方のみが取捨選択されるような排他的なものではなく、相互に補い合うことで、より高度な知恵の獲得を可能たらしめるものである。

1 出典:International Data Corporation

補完関係

人間の知的活動とスマートマシンとの協働には、様々な形式が出現するだろう。まずは、当然のことながらコグニティブテクノロジーを開発・構築・実用化する人間が必要だ。また、こうしたテクノロジーを業務プロセスに正しく適用し、そのパフォーマンスをモニタリングする人間も必要となる。その他、機械では置き換えられない作業を引き続き行う人間も必要だ。例えば、創造性や配慮、共感などといった高度な精神活動を要する作業を、完全に機械に置き換えてしまうことは不可能だからだ。

人間と機械との調和に向かって

もちろん、こうしたテクノロジーと人間との調和した社会が、一朝一夕に、容易に実現することはないだろう。各組織内におけるナレッジ集約的なプロセスを精査し、どのプロセスを機械に置き換え、どのプロセスを人間が実行するのが最適解となるかを識別する必要がある。その過程で、変化に適応するための「再教育」が一定程度必要とはなるだろう。また、こうした流れの中で現在の職を失う人たちも出る可能性はある。賢明な企業は、こうした課題に早期に取り組み、来たるべき「人間とスマートマシンとが協働する未来」に従業員が備えられるよう支援し、組織体制を整備するだろう。

インパクト

・社会へのインパクト:大

・ビジネスへのインパクト:大

・ピークの予測到来時期:5年後

・もっとも影響を受ける業界:ヘルスケア、オンラインサービス、プロフェッショナルサービス、小売

・変革を牽引するであろう業務領域:人事、IT、マーケティング

ケーススタディ:獣医師向けアプリ「LifeLearn Sofie」

北米の獣医師は、特定領域の専門医も一部存在するものの、大半は総合診療医である。そのため、獣医は多種多様な動物の様々な領域にわたる疾患疾病について広範な知識が求められる。ここに、コグニティブコンピューティングを活用できる。

カナダに拠点を置く獣医学テクノロジー系企業LifeLearn社は、IBM Watson ベースのコグニティブコンピューティングシステム「Sofie」を開発した。「Sofie」は、獣医たちに多種多様な動物の様々な病気に関する最新技術や治療法に関する情報を提供するだけでなく、個別の治療方針・治療計画の立案も支援するソフトウェアである。「Sofie」は自由形式テキストでの質問を受け、膨大な最新情報の中から獣医が必要とする情報を提供する。また、この情報は最新の獣医学文献をもとに頻繁に更新される。加えて、「Sofie」は獣医が患畜の遺伝情報に基づく疾病リスク、飼育環境特性、地理的リスク要因なども踏まえて当該患畜のためのオーダーメイド治療計画を策定するところまで支援する。

ここでも他のコグニティブコンピューティングシステムと同様に、「Sofie」は人間の営みを機械で置き換えるものでは決してない。むしろ人間の力を補完し、人間がもつ可能性の拡大をサポートしてくれる、力強いツールなのだ。

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