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税ガバナンス ~プロ経営者として税に向き合うということ~

季刊誌「百家争鳴」第10号(2016年3月)

これまで、経営者の責任と税との関係はほとんど語られなかった。しかし、経済協力開発機構(OECD)の租税委員会が税源侵食と利益移転(BEPS)に関する行動計画を取りまとめるなど、税務に関するコーポレートガバナンスの充実が一段と強く求められている。CFOには、プロの経営者として税に向き合い、適切にマネジメントすることが求められる。

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当たり前のことを当たり前にやる
本田技研工業創業者 本田宗一郎

これまで、経営者の責任と税との関係はほとんど語られてきませんでした。

日本では、「企業活動の終着点で確定する税コストは税法の定めによって納めるものであり、経営努力の対象と見るべきではない」、「税金を払ってはじめて一人前の会社」といった価値観が広く行き渡っていることがその理由だと考えられます。しかし、日本的な美意識に依拠して税務に向き合うだけでは、ステークホルダーから賛同を得ることはできません。CFOには、プロの経営者として税に向き合い、適切にマネジメントすることが求められています。

税コストをいかに管理、抑制すべきか。皆さまがCFOとしての役割を果たす上で、ご参考となる情報をご提供できれば幸いです。

(3MB, PDF)

Issue - 今、企業に問われる税ガバナンスとは?

「社内外から税ガバナンスを問題視されたことがない」、「税務調査で大きな指摘を受けたことがない」、「同業他社と同じ程度の体制は整えている」― こうしたことを根拠にわが社の税ガバナンスは万全であると考えるのは適切ではありません。

現時点でどの程度の税負担があり、今後の投資や収益の変化に応じてどの程度の税金を支払うことになるのか。様々な要因を適時適切に把握・分析できてはじめて、「わが社の税ガバナンスに遺漏はないか」という問いに答えることができます。

世界的にも税務当局が規制を強化し、企業に開示を求められる範囲が広がりつつあります。このため、税ガバナンスについての考え方をCFOが発信し、グループ内で共有、実践することがますます重要となっています。

では、経営責任を果たすために、CFOはいかなる税ガバナンスを確保しなければならないのでしょうか。

税務当局による規制強化、グローバルで起きていることは何か

移転価格関連の文書化やタックス・プランニングの報告義務等を含むOECD/G20 BEPSプロジェクトが実施された。それに伴って従来の税務に関する管理手法およびレポーティングの手法は、各国において変化が求められている。

Case Study - 取り組む企業、広がる格差

グループ全社に共通する行動指針

税を企業活動のコストとして捉え、キャッシュ重視の経営を行っている企業は、税に関する行動・判断の指針を明示し、海外現地法人も含めてグループ一体となった税ガバナンスの強化に取り組んでいます。

【事例1】

  • グループ企業共通の税に関する行動指針(タックスポリシー)の制定
  • 税に係る社内マニュアルの制定

【効果】

  1. 税ガバナンスに係る経営者責任の明確化
  2. 優遇税制適用漏れや、ペナルティタックスを含む税務調査追徴金の減額などによる実効税率の低下
  3. 海外における税務戦略開示に関するコンプライアンス対応

適時適切なモニタリングを可能にするレポートライン

重要な検討事項は時間的余裕をもって、そして事後的なレポートはもれなく適切にされ、最終的にCFOを含む経営者層が容易に確認できる様式であることが最も効果的です。

【事例2】

  • 本社・地域統括会社間
    • 各税務部の担当範囲・権限・責任の明確化
    • 税に関するレポートラインの構築
  • 各部署
    • 決裁書申請前の税に関する担当範囲・権限・責任の明確化
    • 決裁書に係る社内税務専門家の関与明確化

【効果】

  1. 税ガバナンスに係る経営者責任の遂行状況を把握
  2. 実行税率の変動状況を把握

税コストの削減と実効税率低減の具体例

税をコストとみなし、不要なものは削減するというタックスポリシーをCFOの主導によりグループ内で共有。各事業部の情報を集約するレポートラインをアクティブなものにすることで、実効税率の低減を実現した例があります。

Insights - 当たり前を当たり前化する

当たり前の税ガバナンスとは

当たり前の税ガバナンスとは、タックスポリシーをはじめとした税に関する認識がグループ全体で共有されており、各担当者の行動が有効にモニタリングされている状況を指します。しかし日本では、当たり前の税ガバナンスが定着している企業がことのほか少ないのが現状です。
ボトルネックになっているのは以下のような点ではないでしょうか。

  • 世界に散らばるグループ会社の税務ポジションの情報が不足しているため、適正納税額のシュミレーションが十分に行われていない
  • 税コストへ与える影響の重要性を見込むに足る税務知見の不足により、税務の検討に適切な工数が投じられていない

税ガバナンスを強化するためには、CFOが「税はコストである」と明確に認識し、納税額の適正化を自らの職務範囲であると自覚した上で取り組みをスタートさせることが必要です。
CEO自らがCFOに税ガバナンス強化を指示したり、CFOがCEOをはじめとする他のボードメンバーの理解を得て進めた好事例が見受けられます。
言うまでもないことですが、グローバルでのガバナンスを強化するには、「トップダウン」であることが求められるのです。

容易ではない道の先が当たり前の世界

税ガバナンスを強化するための行動指針を導入し、レポートラインの運用を確立することは、決して容易な道ではありません。しかしながら、当たり前の税ガバナンスを当たり前に実行することこそが、適切な税コスト負担と実効税率低下を両立させる唯一の道です。
そして、「当たり前」の先にこそ持続的成長と企業価値向上を実現し、グローバルでの競争に勝ち残れる企業像を描くことができるのではないでしょうか。

効果的な税ガバナンスを実践するCFOのための3つの心得

1.税ガバナンスの導入はCFOの役割と理解する
  • 役員としてステークホルダーに対して当たり前に果たすべき責務に税ガバナンスが含まれることを理解する
  • 企業利益に与える税コストの重要性を理解する
2.税ガバナンスのリーダーとして自ら企画・立案する
  • CFO自らが発信し、結果責任を負う姿勢をもつ
  • 適切なプロジェクトチームを組成する
3. 最小限の予算で最大限のガバナンス効果をもたらす具体的な計画を練る
  • スケジュール上のマイルストーンを設定する
  • 税ガバナンス強化・維持のために要するコストを見積もる
  • リターンとしての税コスト効果を設定しKPI化する

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