調査レポート

Deloitte CFO Signals Japan : 2015 Q3

税務に関する継続的かつ効率的な情報収集が今後不可欠に

日本における第1回目の実施となったCFO向けの定期サーベイ。本サーベイでは、ミクロ・マクロそれぞれの視点からみる日本企業を取り巻く環境、また日本でホットトピックとなっているBEPS(Base Erosion and Profit Shifting : 税源浸食と利益移転)についてCFOの意識調査を行いました。(実施期間:2015/7/21~8/21)

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Deloitte CFO Signalsについて

Deloitte CFO Signalsは、デロイトがグローバルレベルで定期的に実施している、企業を取り巻く経済環境に関するCFOの意識調査です。毎回の調査で世界各国CFOの皆様から得られた回答結果を集約し、デロイトの専門家が考察を加え、CFOからの”Signals”として発信しています。
日本で行うDeloitte CFO Signals Japanでは、「経済環境に関する調査」において、毎回グローバルで統一の設問を設定しています。それによって日本だけに限らず、グローバルレベルでCFOの動向を考察します。さらに毎回日本固有の設問として、その時々でトレンドやホットトピックとなっている事柄に関連するものを設定しています。
本ページでは、今回のサーベイ結果の中で特徴的な回答結果についてまとめています。グローバル共通設問である、企業を取り巻く経済環境の見通し、業績の展望、ビジネス環境における財政的および経済的な不確実性については、グローバル版(英語、15ページ)に掲載されております。各国の結果とあわせてご覧ください。

(356KB, PDF)

経済環境に関する調査

~企業の見通すシナリオとその評価~

企業にとって望ましいシナリオは、
①安倍政権の支持率が低下することなく、日本の財政再建も進み
②成長戦略への国内外からの信頼が確保され
③中国を含むアジア経済の急減速が回避される状態が続くなかで
④第三の矢を通じた規制緩和によって新たな事業機会が創出される
というものであろう。

しかしながら、足許の国内外の状況をみると、こうしたシナリオに徐々に黄色信号がともっているように思われる。まず、安倍政権の支持率こそ底割れを回避できてはいるが、日本の財政再建に関しては、楽観的な経済成長率を前提とした財政再建計画が策定されているほか、2016年度の概算要求予算は102兆円と過去最大になっており、決して安心できる状況にはない。
第二に、成長戦略の目玉とされてきたTPPは、米国等の交渉相手国の事情もあり、決着の目処がたっていないほか、成長戦略のなかで最も成功していたコーポレート・ガバナンス改革についても最近は悲観的な見方が広がっている。
第三に、夏場以降、中国経済の減速が世界的なリスク要因になっているほか、資源国、非資源国を問わず、多くの新興国経済が変調をきたしており、グローバルな経済鈍化と需要の減退は暫く続く見込みにある。
こうした状況を踏まえると、質問2で示された、強気の業績見通しが期待通りに実現するかどうかは慎重にみておく必要もあるだろう。

BEPSの影響とその対応状況

・BEPSの影響

「BEPS対応によって、貴社のビジネスにどのような影響があると想定していますか。」という質問の結果をみると、「a.管理部門における業務負荷が増大する」、「b.グループの税務リスク・税負担額に影響が出る(増加する)懸念がある」、「c.移転価格ポリシーや値決め等の見直し作業が発生する」、という回答が大半(84%)を占める結果となった。大半の回答がa.~c.に集中していることを鑑みると、多くの日系企業はBEPSが及ぼすであろうリスクを理解し、且つBEPSに対応するには現状の税務管理体制では不十分であり、税務管理体制の強化が必要であることが認識されているように思われる。但し、d.個社および連結における業績管理の方法に見直し作業が発生する、と回答した企業は、全33社中4社のみであるが、グループ内で移転価格への対応を進める結果として生じる各現地拠点の単体損益や事業活動のモチベーションへの影響を排除するためには、単に税務部門内部の話にとどまらず、グループ内の業績管理の在り方についても見直しが必要になってくるものと思われる。ただし、その対応を検討している企業は未だ少ないようだ。

・BEPSへの対応状況

「BEPS対応について、既に取り組みや準備を実施していますか。」という質問の選択肢には、「i. すでに十分な仕組みを有しており、BEPSということで特別に対応することはない」、という回答も設けていたが、選択した企業は1社のみであり、現状の税務管理体制では不十分だと認識している企業が多いことがここでも読み取れる。
着手を開始している取組みの中でも、「d.移転価格の現状把握や文書化、ポリシーの見直しに着手している」、という回答が全33社中16社と、最大回答数となったが、BEPSを踏まえた移転価格税制への対応に関しては、デロイト トーマツ税理士法人ではBEPS行動計画13(移転価格文書化の再検討)に関する経済産業省による調査事業を受託しており、その際に実施したアンケートやインタビューに基づくと、多くの日系企業は以下に例示されるような税務対応上の課題を抱えている可能性があることが判明している。これらの課題への対処は一朝一夕に達成できるものではなく、長期的な視野に立った取り組みが必要であり、各企業の対応状況には大きな開きがあることが推測される。

BEPSの影響

税務部門の役割の変化

「今後、税務部門の役割は、事業部門の戦略の立案や実行ひいては企業価値の向上に貢献するように変化していくべきとお考えでしょうか。」という質問に対する回答においても、「a. はい、税務部門の役割として事業活動や企業価値への貢献を拡大していくべき」、と回答した企業が大半(82%)であり、今回のBEPS対応の導入を契機として、税務部門に期待される役割についての社内の認識も変わってきているものと思われる。言い換えれば、このBEPS対応は、税務部門を、企業価値を向上させうる経営上重要な組織に押し上げるまたとないチャンスであると考えることもできよう。
なお、この質問に対する個別回答として「ROE等、資本効率が重視されており、税務コストの削減も重要な経営課題となっている。」との記述がある。税務コストの最適化は、企業の中でも税務部門が担う重要な役割の一つであり、自社の事業活動を後押しするためにも、国際税務への対応も重要な経営課題の一つとして捉え、必要な対応を十分に行っていくことの重要性を、真にグローバルな企業を目指す経営陣及びCFOが再認識すべきであろう。 

税務部門の役割の変化

CFOの“the Trusted Advisor"となるために

デロイト トーマツ グループでは、様々な課題に直面するCFOを支え、ファイナンス組織の能力向上に寄与することを目指したサービスを展開しています。われわれは、グローバルに展開するプロフェッショナルファームとして先進的な知見やネットワークの場を提供し、CFOにとっての“the Trusted Advisor"となることを目指します。

 

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