調査レポート

Deloitte CFO Signals Japan : 2015Q4

M&Aにおける課題とCFOの役割とは

日本における第2回目の実施となったCFO向けの定期サーベイ。本サーベイでは、ミクロ・マクロそれぞれの視点からみる日本企業を取り巻く環境、また日本でホットトピックとなっているM&AについてCFOの意識調査を行いました。(実施期間:2015/12/7~2016/1/15)

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Deloitte CFO Signalsについて

Deloitte CFO Signalsは、デロイトがグローバルレベルで定期的に実施している、企業を取り巻く経済環境に関するCFOの意識調査です。毎回の調査で世界各国CFOの皆様から得られた回答結果を集約し、デロイトの専門家が考察を加え、CFOからの”Signals”として発信しています。
日本で行うDeloitte CFO Signals Japanでは、「経済環境に関する調査」において、毎回グローバルで統一の設問を設定しています。それによって日本だけに限らず、グローバルレベルでCFOの動向を考察します。さらに毎回日本固有の設問として、その時々でトレンドやホットトピックとなっている事柄に関連するものを設定しています。
本ページでは、今回のサーベイ結果の中で特徴的な回答結果についてまとめています。グローバル共通設問である、企業を取り巻く経済環境の見通し、業績の展望、ビジネス環境における財政的および経済的な不確実性については、グローバル版(英語、7ページ)に掲載されております。各国の結果とあわせてご覧ください。

(501KB, PDF)

経済環境に関する調査

今回の調査結果は、回答企業において増収・増益の動きが続いていることを示していた。これは非常に心強い結果である。しかし、過半数の回答企業において不確実性への警戒感が高い状態が続いており、足元では、まだ少数とはいえ減収・減益リスクを意識する企業が増え始めていた。このような中で、何らかのリスクイベントが生じると、企業がリスクシナリオに備えた対応をとり始め、例えば、賃上げや設備投資に慎重になっていく可能性がある。

足元の日本経済の回復力には、2016年初頭からのグローバルなリスクオフもあり、不安感が高まっている。こうした中で、賃上げ見送りや投資減額が進んだ場合には、回答企業がベースラインシナリオと考える「日本経済の緩やかな回復」が早晩崩れる可能性がある。

今回の調査では、日本経済のリスクシナリオのトリガーとしては国外要因が圧倒的に注目されていたが、指摘された様々な国外要因ももちろん重要ではあるが、企業経営のマインド萎縮という国内要因がもたらす悪循環にも留意すべき時期に入りつつあるように思われる。

グローバルM&Aの組織能力に関する調査

グローバルM&A活動における課題

以下のグラフは、グローバルM&Aを実行する上で感じている課題についての調査結果である。
回答が最も多かったのが「e.PMI(Post Merger Integration)(例:買収先に対して適切なガバナンスが効いていない、期待成果が発揮できない)」である(17社)。
好調な業績によって獲得した潤沢なキャッシュを用いて、海外企業を買収することはできたものの、買収した会社に対して適切にガバナンスを効かせ成長を促進させることが難しい、あるいはシナジー効果を最大化するための統合活動の推進が困難である、といった問題意識が見受けられる。
こうした困難を乗り越えるためには、以下に例示される取組みを通じた、ポストM&A活動を強力に推進するための“グローバルM&A組織力”の強化が求められる。
・海外で買収した子会社に対して適用するガバナンスや経営管理の“自社流の手法”の構築
(買収目的に応じたガバナンスのポリシー、管理手法、機能・体制設計、仕組み等)
・言語・商習慣・文化等のギャップを乗り越えられる、グローバル人材の獲得、育成
・グローバルM&AにおけるPMI経験の蓄積(形式知化)と社内ナレッジ共有

次いで「b.ターゲット選定(例:有望な案件が集まらない、適切な選定基準が定まっていない)」を課題とする回答が多い(7社)。M&A候補先を探索する過程において、案件収集の活動や案件を選択する基準についての問題意識がここには含まれるが、次ページ以降においてこの問題意識を深堀したい。

グローバルM&AにおけるCFOの役割

以下のグラフは、グローバルM&AにおいてCFOが担う役割について調査した結果である。

この質問の回答においては最も多くの企業(27社)が「a.M&Aの意思決定に関与している」と回答した。M&Aの検討段階において、買収の資金調達可否やその方法、買収スキーム、投資リターンの財務インパクト等の財務的見地から意思決定に関与する役割は多くのCFOが担っていると思われる。一方で買収後の活動に関して、「b.M&A後のバリューアップやモニタリングに関与している」と回答した企業は14社、「c.M&A後の経理・財務領域のPMI(例:連結決算対応)に関与している」と回答した企業は16社と、買収検討段階の関与割合と比べると少ない。

買収後の段階になると、投資先のバリューアップや、ガバナンス等を経営企画や事業部門が主に担い、CFOの関与度合いが下がるケースを筆者も多数見てきた。しかし、海外企業を買収した際には、為替管理や資金管理の統合による財務リスク・管理コストの低減は経営インパクトが大きい課題であり、財務部門のより積極的な関与が期待される。

またグローバルM&A巧者の企業のCFOは、M&Aの投資リターンを回収するまでのモニタリングも自らのミッションとして、買収後一定期間は直接買収先企業のモニタリングに関与するなど、より踏み込んだ形でPMIに関与することが多い。
加えて、海外企業は経営管理や意思決定のサイクルが日本より早いケースが多く、日本中心で経営を行ってきた企業が海外企業を買収すると、そのギャップが海外企業へ悪影響を及ぼすケースもある。

グローバルM&Aを継続的に推進するためには、グローバルレベルの経営管理基盤の強化や経営管理スピードの向上により、本社の経営管理レベルをグローバル水準に引き上げ、買収した企業との経営レベルギャップを無くすことが必要となる。こうした取り組みにもCFOの貢献が今後期待される。

CFOの”The Trusted Adviser”となるために

デロイト トーマツ グループでは、様々な課題に直面するCFOを支え、ファイナンス組織の能力向上に寄与することを目指したサービスを展開しています。われわれは、グローバルに展開するプロフェッショナルファームとして先進的な知見やネットワークの場を提供し、CFOにとっての“the Trusted Advisor"となることを目指します。

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