調査レポート

Deloitte CFO Signals Japan : 2016Q1

ファイナンス組織のタレントの現状と今後の課題

日本における第3回目の実施となったCFO向けの定期サーベイ。本サーベイでは、ミクロ・マクロそれぞれの視点からみる日本企業を取り巻く環境、また日本独自の設問としてファイナンス組織のタレントについてCFOの意識調査を行いました。(実施期間:2016/3/22~4/15)

全文PDFはこちら

Deloitte CFO Signalsについて

Deloitte CFO Signalsは、デロイトがグローバルレベルで定期的に実施している、企業を取り巻く経済環境に関するCFOの意識調査です。毎回の調査で世界各国CFOの皆様から得られた回答結果を集約し、デロイトの専門家が考察を加え、CFOからの”Signals”として発信しています。
日本で行うDeloitte CFO Signals Japanでは、「経済環境に関する調査」において、毎回グローバルで統一の設問を設定しています。それによって日本だけに限らず、グローバルレベルでCFOの動向を考察します。さらに毎回日本固有の設問として、その時々でトレンドやホットトピックとなっている事柄に関連するものを設定しています。
本ページでは、今回のサーベイ結果の中で特徴的な回答結果についてまとめています。グローバル共通設問である、企業を取り巻く経済環境の見通し、業績の展望、ビジネス環境における財政的および経済的な不確実性については、グローバル版(英語、17ページ)に掲載されております。各国の結果とあわせてご覧ください。

(909KB, PDF)

経済環境に関する調査

マイナス金利政策が事業に与える影響と企業の対応策

グラフ4.は、日本銀行が導入したマイナス金利政策が事業に与える影響を示している。57%の回答者が「c.中立」と回答しており、日本銀行のマイナス金利政策が企業に与える影響は余り強く意識されていないようにうかがえる。もっとも、29%の企業がプラスの効果があると回答したのに対して、マイナスの効果があると回答した企業が14%に留まっており、企業部門全体では、どちらかといえばプラスの効果が期待されているといえそうだ

グラフ5.は、日本銀行のマイナス金利政策導入を受けて、企業が検討している対応策を示している。これをみると、多くの企業が財務面での対応策を検討していることが確認できる。最も回答が多かったのは「資金調達の長期化を図る」であった。マイナス金利政策を通じてイールドカーブが全般的に低下したことを受けて、長期資金調達の魅力が高まっていることが背景にあると考えられる。次に回答が多かったのは「為替不安定化に備えた対応を取る」であったが、「為替円安化を見込んだ対応を取る」という回答は少なかった。

この2つの回答結果は、マイナス金利政策が為替市場の不安定化には繋がるが、必ずしも円安をもたらすものではないという企業の考え方を表している可能性があると共に、企業がマイナス金利政策の限界を既に意識していることを示すものといえる。実際に、マイナス金利政策を受けて企業が投資活動を活発化させるかといえば、「国内投融資を積極化させる」や「海外投融資を積極化させる」という回答がそれほど多くなかったように、マイナス金利政策をきっかけにして企業が投資に積極的になる姿は確認できなかった。
以上の結果を踏まえると、日本銀行によるマイナス金利政策は、調達コストの低下を通じて企業部門にメリットをもたらすものの、企業の投資活動を活発化させるには至らないようだ

ファイナンス組織のタレントに関する調査

調査結果の要点は以下であった。
・ファイナンス組織が、今後、強化すべき領域として、約半数の企業が経営および各専門領域における「戦略領域への参画」 と回答
・ファイナンス人材に求める能力も、「戦略的思考力」に75%、「ビジネス理解」が50%を占め、戦略領域を任せられる人材への期待が集まっている
・一方で、優秀な人材を確保・育成していくうえでのボトルネックとして、約7割 の企業が「魅力的なキャリアオプションを提示できない」を挙げており、ファイナンスの重要性や中長期的なキャリアビジョンを示すことが必要となっている
・CFO人材については、経営企画部門の経験を推奨するなど、ほとんどの企業で「組織外へのローテーションに肯定的」であり、経理・財務領域外の経験を積むことで、事業を理解しより多角的な視点を得ることが必要と認識されている

現時点では、ファイナンス基礎スキルの習得や組織内外のローテーションなども十分に行っており、オペレーションや内部統制といったこれまでに要求されていたファイナンス組織としての機能を遂行する上では大きな課題は見えない。一方で、将来に向けて機能強化していく局面において、戦略的に考え、行動する人材が強く要望される。このような変革の過程において、ファイナンスとしてのキャリアをいかに描き、示すかは重要である。
調査の結果からも、ファイナンスキャリアの魅力向上については、約7割の企業が課題と感じる一方で、実際に施策として取り組めている企業は33%に過ぎない。将来ビジョンを描き、人材要件を明らかにすることに取り組みつつも、社内外からいかに優秀な人材を惹きつけ確保していくかについても目を向けることが必要であると考える。

 

ファイナンス組織が強化すべき領域

グラフ7.は、ファイナンス組織がこれから強化すべき機能を調査した結果である。
ファイナンス組織がこれから強化すべき領域として「経営戦略」(44%)、「投資マネジメント」(44%)、「税務戦略」(44%)、「財務戦略」(47%)など、いわゆる企業経営の根幹にかかる「戦略領域への参画」に回答が集中した。一方で、「オペレーションプロセス」の標準化や効率化は少数(共に8%)であることから、プロセス系の施策が一巡し、より戦略領域へシフトしていく動きととらえられる。
その他の回答として「専門領域における情報ネットワークの拡大・強化」も挙げられ、税務戦略や財務戦略といった、より専門領域における戦略機能の高度化を追求するための具体的な活動を模索している企業も見られた。

ファイナンス人材の確保、育成の観点で、ボトルネックとなっている課題

グラフ9.はファイナンス人材の確保、育成の観点でボトルネックとなっている課題を調査した結果である。
ファイナンス人材の確保、育成の観点でボトルネックとなっている課題は「ファイナンス人材の魅力あるキャリアオプションを十分にデザインできていない」が圧倒的多数(69%)を占めている。続いて、「あるべき姿としての機能及び人材要件が整理されていない」(28%)が多くなっており、中長期的なファイナンス組織としての在り方や将来に渡るキャリアパスを描けないことが課題となっている。
また、「ファイナンス人材の重要性が事業部門に十分理解されていない」を課題としている企業も多く(22%)、その他の回答においても、「事業部門においてファイナンス組織を外部専門家と見てしまう点がキャリアパス面で問題」と指摘されており、社内におけるファイナンス組織の位置づけやその認知の在り方が人材育成におけるボトルネックとして挙げられた。

CFOの”The Trusted Adviser”になるために

デロイト トーマツ グループでは、様々な課題に直面するCFOを支え、ファイナンス組織の能力向上に寄与することを目指したサービスを展開しています。われわれは、グローバルに展開するプロフェッショナルファームとして先進的な知見やネットワークの場を提供し、CFOにとっての“the Trusted Advisor"となることを目指します。

関連するサービス
CFOプログラム
CFOプログラムは、様々な課題に直面するCFOを支え、ファイナンス組織の能力向上に寄与することを目指すデロイト トーマツ グループによる包括的な取り組みです。われわれは、グローバルに展開するプロフェッショナルファームとして先進的な知見やネットワークの場を提供します。

リスク管理戦略センター
リスク管理戦略センターは、近い将来に起こり得る様々なストレス事象に備えた一般企業のフォワードルッキングなリスク管理態勢の構築を支援するために、2014 年 2 月に、有限責任監査法人 トーマツ内に設置されました。リスク管理戦略センターでは、海外の主要機関や当局、金融機関やメディアが伝えるマクロ・リスク情報や、バーゼル3を始めとした世界の規制情報を等の情報を分析し、グローバル企業や、海外投資を行う法人に対して、これらの情報や蓋然性の高いストレス・シナリオ等の情報提供および、これらを活用したリスク管理に関するアドバイザリーサービスを行っております。

CFOサービス
CFOサービスでは、CFO及びCFO組織の変革のみならず、企業にとって必要なCFOの役割に基づき、CFO機能の進化をサポートします。プロジェクトのテーマに応じて、デロイト トーマツ グループのインダストリーグループや、各種サービス(監査、税務、ファイナンシャル アドバイザリーなど)、デロイトのグローバルネットワークとも連携し、多角的、複合的な支援を提供しています。

お役に立ちましたか?