調査レポート

Deloitte CFO Signals Japan : 2016Q2

ファイナンス組織の意思決定関与への意欲と現状

日本における第4回目の実施となったCFO向けの定期サーベイ。本サーベイでは、ミクロ・マクロそれぞれの視点からみる日本企業を取り巻く環境、また日本独自の設問としてファイナンスビジネスパートナリングについてCFOの意識調査を行いました。(調査期間:2016/6/27~7/15)

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Deloitte CFO Signalsについて

Deloitte CFO Signalsは、デロイトがグローバルレベルで定期的に実施している、企業を取り巻く経済環境に関するCFOの意識調査です。毎回の調査で世界各国CFOの皆様から得られた回答結果を集約し、デロイトの専門家が考察を加え、CFOからの”Signals”として発信しています。
日本で行うDeloitte CFO Signals Japanでは、「経済環境に関する調査」において、毎回グローバルで統一の設問を設定しています。それによって日本だけに限らず、グローバルレベルでCFOの動向を考察します。さらに毎回日本固有の設問として、その時々でトレンドやホットトピックとなっている事柄に関連するものを設定しています。
本ページでは、今回のサーベイ結果の中で特徴的な回答結果についてまとめています。グローバル共通設問である、企業を取り巻く経済環境の見通し、業績の展望、ビジネス環境における財政的および経済的な不確実性については、グローバル版(英語、6ページ)に掲載されております。各国の結果とあわせてご覧ください。

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経済環境に関する調査

グローバル経済と主要国経済の見通し

グラフ4は、グローバル経済全体と主要国・地域の2016年後半の成長率見通しを示しており、具体的には、2016年前半に比べて成長率が上昇するか低下するかを示している。
最大の特徴は、全体として慎重な見通しが確認された点である。特に英国、欧州、日本について悲観的な見通しが示されている。

まず、英国経済については、調査実施期間中に英国のEU離脱(Brexit)を問う国民投票が実施されたこともあり、全ての回答者が成長率の低下を予想している。国民投票前までの英国経済が底堅い動きであったことを考えると、日本のCFOは、英国の国民投票が同国に対して非常に大きな悪影響を与えるとみている、といえそうである

同時に注目すべきは、英国を除く欧州全域についても慎重な経済成長率が示された点であろう。実に90%の回答者が「低下する」と回答している。欧州経済が英国・国民投票以降も大崩れすることなく推移していることを踏まえると、調査結果はやや異なる見方を示していることになる。これは、欧州の足許の経済情勢それ自体というより、欧州各国の政治不安定化や移民問題等、どちらかといえば、EU自体の不安定化リスクを反映したものといえるかもしれない。

日本経済の成長率については、回答者の60%が「低下する」、37%が「変わらない」と回答し、「上昇する」という回答は3%に過ぎなかった。調査期間中に、参議院選挙が公示され、アベノミクスの是非が争点とされるなかで与党の優勢が伝えられていた。今回の結果は、参議院選挙で掲げられた安倍政権の経済政策をもってしても、日本経済について慎重な見方を払拭するには至らなかったことを示している可能性がある。

その他の国については、比較的安定的な成長が続くという見通しが示された。米国とアジア諸国(中国を除く)に関しては非常に似た結果になった。即ち、2016年後半の成長率に関して、2割程度の回答者が「上昇する」、6割程度が「変わらない」、残りの2割程度が「低下する」と回答している。中南米諸国については、やや慎重な見方が多く、44%が「低下する」と回答しているが、その一方で13%が「上昇する」と回答しており、悲観論一色というわけではない。このところの原油価格の安定化もあり、アジア・中南米諸国の実体経済が一息ついてきたことや、FRBの急激な利上げに伴うリスクが低下していることが背景にあると思われる。

最後に、中国経済の結果をみると、29%の回答者が「低下する」と回答し、残りの71%は「変わらない」と回答した。「上昇する」という回答は皆無であった。この結果が中国経済の安定化が進んでいるという安心感を示すものなのか、中国経済の更なる成長は見込めないという悲観論を示すものなのかは判断がつかないが、日本の企業経営者が中国経済について引き続き慎重な見方を変えていないことを明確に示すものといえそうである。
本年初のこの調査では、日本経済のベースラインシナリオとして「景気鈍化」を想定する回答が皆無であり、リスクシナリオのトリガーとして「中国経済の一段の減速」が圧倒的に注目されていた。今回の調査結果は、年初時点に比べて日本経済への慎重な見方が広がっていること、そして、リスクシナリオのトリガー要因として、中国経済のほかに「欧州要因」が加わったことを示唆している。

ファイナンスビジネスパートナリングに関する調査

経理・財務業務のシステム化、効率化が進む中で、経理・財務部門には、複雑化したビジネスの数字を正確、迅速に把握するだけでなく、事業部門の戦略形成に参加し事業部門の意思決定を支える示唆、提言を行うことが求められ始めている。企業業績を伸ばし、企業価値を向上させるための、いわば事業部門の“ビジネスパートナー”としての役割である。
しかし、多くの企業では、依然として”オペレーター”としての役割から抜け出せず、その道筋は必ずしも明快に見えていない。
CFOとしてこの問題をどのように捉え、何から取り組むべきか、その一助とすべく、実態を調査した。
調査結果の要点は次の通りである。

  • ほとんどのCFOが、経理・財務組織が今後、戦略的意思決定に主体的に関与すべきであると考える一方で、検討の初期段階から関与できていると回答したのは、6割にとどまる
  • 初期段階からの検討参画が重要であると考えている領域は多岐にわたり、特にM&Aや新規事業開発、設備投資計画が上位にくる。他方、セグメントやチャネル選定などの販売戦略、また調達・生産、研究開発など、日常の事業活動における意思決定への貢献については、重要性の認識は低く、また実際の関与も限定的である
  • 意思決定に関与する位置に経理財務部門が立つには越えなければならない壁がある半分近くのCFOがファイナンスとしてデータ活用をしようにも多大な手作業が効率化を妨げていることを課題に挙げており、また3割が経理・財部部門のマインド不足・スキル不足を認めている
  • 経理・財務部門の人員にとって重要かつもっと高めなければならないスキルとして、戦略やビジネスモデルへの理解力を上げたCFOが多く、また重要性という割合はやや下がるがリーダーシップや交渉力が足りていない、との評価が目立った
  • このような状況を打開するため、ほとんどのCFOが通常業務の効率化による余力創出とデータの整備、そのためのシステム整備を3年以内に実施予定と回答しており、次いで8割のCFOが事業部門からのローテーションや外部からの採用も行ってファイナンス組織の能力強化に取り組もうとしている
意思決定の場への参画

グラフ9はファイナンスが意思決定に関与することが重要と感じている活動と実際の関与状況を調査した結果である。
重要性の認識と実際の関与の仕方には大きなかい離がない反面、関心も低く関与実態も低い領域との差が大きいことがわかる。

CFO自身が、経理財務部門が関与すべき、と考える領域は、M&A・事業売却、設備投資計画、新規事業開発の3領域が上がっており、その各々に関与ができていると回答している。
他方で、マーケティング・販売、あるいは研究開発や生産・調達の分野には関心も低く関与実態も低い。
これらの回答からは、個別領域の意思決定と言うよりは、損益やキャッシュフローに与えるインパクトの有無により関与が決定されているのではないかと推測される。

ファイナンスが意思決定に関与するために重要と思われる能力と実際の充足状況

グラフ11はファイナンス組織のタレント・能力を調査した結果である。戦略的思考や分析力、ビジネス理解が重要視されていながらも、現場レベルではそのようなスキルを持った人材が不足していることがわかる。

経理・財務部門が戦略的な意思決定に寄与していく上で、もっとも必要とされるが、充足されてない、と答えているものに、企業戦略・事業戦略に関する知識と自社のビジネスモデルや収益構造への理解の2点が目立っている。自社のオペレーションに関する理解という項目は重要でありまた充足されている、と回答されていることと対照的で、これはおそらく、表層の理解にとどまっていて、もっと深く戦略や事業構造の中身に踏み込んだ理解が必要と感じているCFOが多いのかもしれない。

重要か、という点ではやや下位に位置するがCFOが求めるほどにメンバーの能力が不足しているのが社内にネットワークを構築し、リーダーシップを発揮して社内をまとめて、交渉していく能力だ。このあたりは、“真面目”ではあるが事業の中になかなか入っていけない日本企業の経理マンの典型を見る思いがする。
イノベーティブ思考に至っては、充足度「0」というのが目に痛い。

自社ビジネスを理解し、数字を操るのは得意だが、能動的な働きかけを行う際に必要となる項目e~jの充足度が低いのは、受け身のワークスタイルの表れではないだろうか。

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