調査レポート

Deloitte CFO Signals Japan : 2016Q3

世界各国のリスクシナリオに対するCFOの懸念と企業の新陳代謝

日本における第5回目の実施となったCFO向けの定期サーベイ。本サーベイでは、ミクロ・マクロそれぞれの視点からみる日本企業を取り巻く環境、また日本独自の設問として企業における新陳代謝についてCFOの意識調査を行いました。(対象期間:2016/9/27~10/14)

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Deloitte CFO Signalsについて

Deloitte CFO Signalsは、デロイトがグローバルレベルで定期的に実施している、企業を取り巻く経済環境に関するCFOの意識調査です。毎回の調査で世界各国CFOの皆様から得られた回答結果を集約し、デロイトの専門家が考察を加え、CFOからの”Signals”として発信しています。
日本で行うDeloitte CFO Signals Japanでは、「経済環境に関する調査」において、毎回グローバルで統一の設問を設定しています。それによって日本だけに限らず、グローバルレベルでCFOの動向を考察します。さらに毎回日本固有の設問として、その時々でトレンドやホットトピックとなっている事柄に関連するものを設定しています。
本ページでは、今回のサーベイ結果の中で特徴的な回答結果についてまとめています。グローバル共通設問である、企業を取り巻く経済環境の見通し、業績の展望、ビジネス環境における財政的および経済的な不確実性については、グローバル版(英語)に掲載されております。各国の結果とあわせてご覧ください。

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経済環境に関する調査

日本経済のリスクシナリオを考える際に重視しているイベント

グラフ4は、日本経済の今後1年間のリスクシナリオを想定する際に重視しているイベントやトリガー事象への回答結果を示している。最も回答が多かったのは、「a. 日本銀行の金融政策に関する限界論の高まり」であった。この調査の実施日が、日本銀行が総括的な検証結果を公表した9月21日の直後であったことも影響していると考えられるが、対象企業は金融政策の限界に伴う様々な影響を懸念しているように推察される。どのような影響を懸念しているかは今回の調査の対象外ではあるが、例えば、為替レートの変動、銀行収益への悪影響とそれが銀行貸出に与える影響、また、長期金利の上昇に伴う調達コストの上昇等が考えられる。また、「c. 財政健全化への懸念の高まり」が回答数で3番目になったことも注目される。足許の日本政府の財政拡大志向を懸念した回答であろう。

 

このように、対象企業は、日本の財政・金融政策というマクロ経済政策の骨格自体に懸念を抱いている。その一方で、アベノミクスの柱の一つとされるTPPに関しては、「d. TPPの頓挫」の回答数が少ないことから判断すると、その帰趨はリスク要因として余り重視されていないようにうかがえる。なお、「e. 安倍政権の支持率低下」の回答数が少ない一方で、「b. 地政学リスク」の回答数が多かったことは、現政権の安定感には不安を抱いていない一方で、近隣諸国との偶発的な衝突リスクが相応にあると考えていることの現われであろう。

米国経済のリスクシナリオを考える際に重視しているイベント

グラフ5は、米国経済の今後1年間のリスクシナリオを想定する際に重視しているイベントやトリガー事象への回答結果を示している。際立った特徴は、「a. トランプ氏の大統領就任」が最大の回答を集める一方で、「e. クリントン氏の大統領就任」の回答数がごく僅かにとどまった点である。トランプ氏が大統領になった場合の米国の行く末に強い懸念が示された形となった。なお、「c. 貿易政策の迷走」の回答数が多かった点も注目される。ここで注意しなくてはならないのは、前述の通り、日本経済のリスクシナリオのトリガーとして「TPP論議の頓挫」が重視されていなかった点である。つまり、対象企業においては、TPPが頓挫するリスクというよりも、米国の貿易政策全般に対して不安を抱いている、あるいは、グローバルな自由貿易体制自体が今後変容を迫られかねない点を意識しているものと推察される。その他に回答が多かったのは「b. FRBによる金融政策の迷走」であるが、これは、この数年、FRBの政策を巡る思惑によって、新興国経済が動揺したり、円ドルレートが大きく変動してきた経緯が影響しているものと思われる。なお、「d. 財政赤字の悪化懸念の台頭」の回答数が少なかった点は少々意外な結果である。特に、トランプ氏が大統領に就任した場合には、米国の財政赤字が拡大するリスクがある点には留意が必要と思われる。

 

企業の新陳代謝に関する調査

大きなうねりを持って断続的に変化する昨今の経営環境に対応するため、事業や製品などを入れ替え、新陳代謝を進めていくことは企業経営にとって不可欠である。また、安定的な成長が見込まれていた時代に比べ、その重要性ははるかに高まっている。特に、収益性や成長性に課題を持つ事業を数多く抱えている日本企業にとっては、最も意識すべき経営アジェンダの一つであると言っても過言ではない。
このような問題意識から、日本企業の持続的な成長に向けた一助とすべく、企業の新陳代謝に関する実態を調査したところ、以下の結果を得た。

  • 企業の新陳代謝の意思決定を困難にしている要因として、『過去のしがらみ』という回答が最も多かった。内輪の論理とも言える事象が、新陳代謝を阻む主因となっている。
  • 企業の新陳代謝を進めるにあたっては、6割程度のCFOが『新しい事業の創出・育成が先』と回答した。一方、『低将来性・低収益性事業の売却・撤退が先』という意見を持っているCFOも相当程度は存在している。

企業の新陳代謝を阻む要因

グラフ8は、既存事業からの撤退などを中心に、企業の新陳代謝の意思決定を困難にしている要因を調査した結果である。厳しい環境下で熾烈な競争を繰り広げている中、成長性や収益性に課題を抱える事業があったり、自社の戦略と合致していない事業があったとしても、内輪の論理とも言える『過去のしがらみ』が新陳代謝の意思決定を困難にしているという実態が浮き彫りとなった。

一方、『新しい事業のパイプラインの少なさ』の回答の割合が昨年のアンケートと比較すると増加している。攻めの姿勢へと転じている企業が多い中、実際に新陳代謝に向けた事業創出の取り組みを開始した結果、新事業のパイプラインの少なさに直面している状況が推察される。

 

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