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IASBは、電力購入契約に関するIFRS第9号及びIFRS第7号の修正を最終化

IAS Plus 2024.12.18  

IASBは、「自然依存電力を参照する契約」(IFRS第9号及びIFRS第7号の修正)を公表した。本修正は、2026年1月1日以後開始する事業年度に発効する。

国際会計基準審議会(IASB)は、「自然依存電力を参照する契約」(IFRS第9号及びIFRS第7号の修正)を公表した。本修正は、2026年1月1日以後開始する事業年度に発効する。

 

背景

2023年6月、IFRS解釈指針委員会(IFRS IC)は、再生可能エネルギーを購入するための物理的引渡し契約にIFRS第9号を適用することに関する要望書について議論した。IFRS第9号の原則及び要求事項は、企業が一部の物理的な電力購入契約に要求される会計処理を一貫した方法で決定するための適切な基礎を提供していないと結論付けた。IFRS ICは、基礎となる非金融商品項目を貯蔵することができず、当該項目が売買される市場構造に従って短期間のうちに消費または売却しなければならない場合について、非金融商品項目の購入契約を具体的に検討した。

したがって、IFRS ICは、IASBに対し、IFRS第9号の「自己使用」の例外の適用を当該契約に適用することを取り扱う、狭い範囲の基準設定プロジェクトの着手を検討するよう提案した。アウトリーチでは、仮想電力購入契約(バーチャルPPA)の会計処理に関して、類似の疑問が生じることを確認した。

IASBは、プロジェクトを取り上げ、特定の特徴を有する再生可能電力の売買契約について、IFRS第9号及びIFRS第7号の修正を開発した。

 

変更点

「自然依存電力を参照する契約」(IFRS第9号およびIFRS第7号の修正)における修正点は、以下のとおりである。

IFRS第9号「金融商品」の修正点

電力の生産の源泉が自然に依存するものである再生可能電力の購入および引渡し契約にIFRS第9号2.4項を適用する際に、企業が考慮することが要求される要因を、IFRS第9号における自己使用の要求事項に含めるよう修正される。

  • IFRS第9号のヘッジ会計の要求事項として、特定の特徴を有する自然依存すの再生可能電力に係る契約をヘッジ手段として使用することを企業に認めるよう修正される。
    ・特定の要件が満たされる場合に、予定電力取引の変動する数量をヘッジ項目として指定する。
    ・ヘッジ手段に使用されているのと同じ数量の仮定を使用して、ヘッジ対象を測定する。

IFRS第7号「金融商品:開示」およびIFRS第19号「公的説明責任のない子会社:開示」の修正点

IASBは、IFRS第7号及びIFRS第19号を修正し、特定の特徴を有する自然依存の再生可能電力に係る契約に関する開示要求を導入する。

 

発効日及び経過措置

本修正は、2026年1月1日以後開始する事業年度に発効する。早期適用は、認められる。本修正のIFRS第9号の自己使用の要求事項は、遡及的に適用しなければならない。過去の期間は本修正の適用を反映するために修正再表示する必要はない。また企業は、ヘッジ会計の要求事項の修正を将来に向かって適用することが要求される。

 

代替的見解

2名のボードメンバーが本修正の公表に反対票を投じた。特に、当該ボードメンバーの意見は、以下のとおりである。

  • 自然依存の再生可能電力の購入者が、契約中の一定の期間について、契約に基づいて引き渡される電力を使用せずに売却するであろうことを合理的な確実性をもって知っている場合、公正価値による会計処理が適切である(すなわち、例外を導入するべきではない)。
  • 本修正は、他の電力契約及び他の非金融商品項目に係る契約の会計処理に関する疑問を生じさせ、自然依存の再生可能電力に係る契約に対してより寛容であるように見える。
  • IASBが特定の特徴を有する再生可能電力に係る契約について公正価値の変動の純損益への認識が意思決定に有用でないと考えているのであれば、表示を通じて対処すべきであると考えている。

このうち1名のボードメンバーは、ヘッジ会計の修正の範囲についても反対している。当該ボードメンバーの意見では、経済実態が類似している他の契約については禁止しているのにもかかわらず、自然依存の再生可能電力に係る契約について変動性のある名目数量を指定することを企業に認めるべき原則ベースの理由はないと考えている。

 

さらなる情報

》IASBのプレスリリースの日本語訳(ASBJのWebサイト)
》IAS Plusのプロジェクトページの電力購入契約(IAS Plus-英語版)

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