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IASBが、IFRS第9号「一般的なヘッジ会計」の章を最終化する

IAS Plus 2013.11.19

国際会計基準審議会(IASB)は、新しい一般的なヘッジ会計モデルを組み込むIFRS第9号「金融商品」の修正を公表した。(IAS Plus 2013.11.19)

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国際会計基準審議会(IASB)は、新しい一般的なヘッジ会計モデルを組み込むIFRS第9号「金融商品」の修正を公表した。これは、IAS第39号「金融商品:認識及び測定」に置き換わるIASBのプロジェクトの他のフェーズを完結させる重要なマイルストーンを意味している。新しい一般的なヘッジ会計モデルは、ヘッジ会計を適用する機会をより提供することにより、リスク管理活動をより密接に財務諸表に反映させることを発行者に許容する。

背景
新しいモデルの開発で、IASBはIAS第39号のヘッジ会計の要求事項を包括的にレビューした。IAS第39号は、長い間あまりにルール・ベースであると批判されており、また多くの人からヘッジ会計が合理的な状況で不必要に適用が妨げられていると見られてきた。これにより、リスク管理活動から生じる純損益の変動性をより大きくしていた。

ヘッジ会計の要求事項の見直しにおいて、IASBは一般的なヘッジ会計とは別にオープン・ポートフォリオのポートフォリオ(もしくは「マクロ」)ヘッジ会計に取り組むことを選択する。この背景には、マクロヘッジへの適用方法を考慮する前に、一般的なヘッジ会計モデルの原則を最初に設定することにある。

IASBは、2010年12月に新しい一般的なヘッジ会計モデルを提案する公開草案ED/2010/13 「ヘッジ会計」(「ED」)を公表した。EDは、リスク管理をより密接にヘッジ会計に一致させる目的を含んでいた。この目的を果たすため、EDは、適格なヘッジ対象およびヘッジ手段の範囲を広げることを提案した。EDは、IAS第39号の80-125%ヘッジ有効性の閾値と全く異なる、目的ベースのヘッジ有効性の評価を提案した。適格性と適格要件についてのこれらの変更に沿うために、改訂されたヘッジ会計の表示および開示の要求事項だけではなく、キャッシュ・フロー・ヘッジ会計および公正価値ヘッジ会計のメカニズムも変更する提案を行った。

EDは、IAS第39号のヘッジ会計の制限に関する多くの懸念に対処しているので、多くの面で好評であった。IASBは、提案された新しい要求事項がよく理解されておらず、過度に複雑か、または関係者が同意していないヘッジ会計の適用における制限を含む領域に関するフィードバックも受領した。これは、2012年9月にIASBのWebサイトに掲載されたIASBの提案のレビュー・ドラフトに含まれている変更につながった。

IASBは、IAS第39号のヘッジ会計の要求事項を適用し続けるため、IFRS第9号での会計方針の選択を導入する、最も重要な更なる変更をもたらすレビュー・ドラフトのコメントを受領した。この会計方針の選択は、提案された一般的なヘッジ会計モデルは、IAS第39号と同じ方法で、金利リスクのマクロ・キャッシュ・フロー・ヘッジを取り入れることができないという懸念を軽減するために導入された。マクロ・ヘッジ会計プロジェクトはまだ完了していないので、作成者はヘッジ会計プロセスを2度変更することは望んでいなかった(すなわち、一度一般的なヘッジ会計モデルを取り入れ、そしてまた、マクロヘッジ会計モデルを取り入れること)。


主要な要求事項の概要

ヘッジ対象の適格性の増加

IFRS第9号は、ヘッジ会計における適格なヘッジ対象の範囲を広げる。例えば、 

•独立に識別可能で、信頼性をもって測定可能であることを条件に、非金融商品項目のリスク要素が指定できる。
•デリバティブは、ヘッジ対象の一部として含めることができる。
•グループおよびネット・ポジションは、ヘッジ対象に指定することができる。

ヘッジ手段の適格性の増加
新しいモデルは、純損益を通じて公正価値で測定される金融商品をヘッジ手段として指定することを許容する。オプションの本源的価値のみがヘッジに指定されている場合、オプションの時間的価値の変動の会計処理についての新しい方法も導入され、その結果、純損益の変動性に及ぼす影響が小さくなる。(指定されたヘッジから除かれる場合の)フォワード・ポイントおよび通貨ベーシスの代替的会計処理も、結果的に純損益の変動性に及ぼす影響を小さくすることができる。

新しいヘッジ有効性の要求事項
IAS第39号のヘッジ会計モデルとの根本的な相違は、ヘッジ有効性の80-125%数値基準による閾値(bright line threshold)、およびヘッジの遡及的な有効性テストの要求事項がない点である。IFRS第9号モデルでは、定性的な閾値はなく、ヘッジ対象とヘッジ手段の経済的関係が必要とされている。これは、経済的関係の証明方法に柔軟性を許容し、及び適格なヘッジについては、実際のヘッジ非有効部分が報告される。

ヘッジ会計についての開示の増加
ヘッジ会計の可能性の増加とトレード・オフに、企業のリスク管理戦略、ヘッジ会計から生じるキャッシュ・フロー、および財務諸表に与えるヘッジ会計のインパクトについて開示が増加する。

ヘッジ会計を代替する方法
新しいモデルの開発の一環として、IASBは、財務諸表にリスク管理活動を反映させる手段として、ヘッジ会計を代替する方法を導入した。例えば、

•IFRS第9号に、信用リスクがクレジット・デリバティブで管理されている場合に、純損益を通じて公正価値で測定されるようにクレジット・エクスポージャーを指定するオプションを含める。
•IAS第39号に、IFRS第9号の適用で修正されたように、その指定をすることにより、会計上のミスマッチを解消または著しく低減する場合に、「自己使用の契約」を純損益を通じて公正価値で指定するオプションを含める。

IAS第39号のヘッジ会計を継続して適用する方針のオプション
新しく開発された一般的なヘッジ会計モデルは、オープン・ポートフォリオのヘッジ会計(ポートフォリオ/マクロヘッジ会計)を取り扱っていない。比較的短期間に2度会計方針を変更しなければならないという作成者の懸念を軽減させるため、IASBは、IFRS第9号のヘッジ会計の章の最終バージョンに、2つの会計方針のオプションを導入した。すなわち、

•現在IAS第39号81A項(金利リスクのポートフォリオ・ヘッジに対する公正価値ヘッジ会計の適用)の要求事項を適用する企業は、新しい要求事項でも同じ方針を適用し続けることができる。その場合には、IFRS第9号の要求事項は全般的にヘッジに適用する一方で、ポートフォリオ・ヘッジはIAS第39号に従う会計処理を継続する。
•加えて、企業はIAS第39号またはIFRS第9号のいずれかで、全てのヘッジを会計処理する会計方針の選択が与えられる。そのオプションは、全てを包含している。すなわち、企業はえり好みをすることができない(例えば、IAS第39号を適用し続けることを望む企業は、80-125%の狭い回廊(corridor)で有効性のテストをし続けなければならず、ヘッジ対象およびヘッジ手段の適格性の増加の便益を享受できない等)。

発効日および経過措置
新しいヘッジ会計モデルを導入するIFRS第9号の修正は、共に2014年に最終化される予定の新しい減損モデルと分類及び測定の限定的修正の最終化で、当基準が完結すると設定される予定の、IFRS第9号の強制適用日を削除した。当基準は早期適用が可能であるが(地域のエンドースメントの要求を条件として)、企業が当基準を適用することを選択する場合、当基準の全ての要求事項を同時に適用しなければならない。経過措置では、ヘッジ会計の要求事項は、限定的に遡及的適用が伴うが、全般に将来に向かって適用される

IASBプレスリリース (IASB Webサイト)
プロジェクトサマリー (IASB Webサイト)
ニュースレター「IFRS in Focus –ヘッジ会計の改良:リスク管理のより密接な反映」 (トーマツのWebサイト)

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