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ハンス・フーガーホースト氏が、「会計とモラル・ハザード」について語る

IAS Plus 2014.04.10

IASB議長ハンス・フーガーホースト氏は、「金融市場における信頼の構築:会計とモラル・ハザード」と題する、2014年ケン・スペンサー(Ken Spencer)記念講演を行った。(IAS Plus 2014.04.10)

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IASB議長ハンス・フーガーホースト氏は、「金融市場における信頼の構築:会計とモラル・ハザード」と題する、2014年ケン・スペンサー(Ken Spencer)記念講演を行った。

スピーチで、フーガーホースト氏は、他人の資金を扱う場合には常に生じるモラル・ハザードに注目し、このモラル・ハザードを背景として会計基準の役割が何であるかの問題を検討した。

IFRS財団の定款によると、会計基準設定の目的は、財務諸表において、高品質で透明性があり、比較可能な情報を提供することを企業に求め、投資家が十分な情報に基づいて判断を下すことができるようにすることである。しかし、フーガーホースト氏は、IFRS財団の使命は、更に広範囲に及んでおり、彼によると、それは「金融市場における信頼の構築」であり、そうするための1つの方法は、規律や厳格さ、非対称な情報の削除により、モラル・ハザードを最小化することであると主張した。

この領域に関して、IASBが成し遂げた過去の事例に加えて、フーガーホースト氏は、リース・プロジェクトにおける現行の議論を指摘した。「要するに、リース・プロジェクトは、負債の過少評価を避けようとしている。」彼は、これらの負債をバランス・シートに計上することに対して大規模な反対があると述べ、会議室での及び投資家との間でのリース負債の議論が、年金負債を現在議論しているように、定例化されるであろうとも言った。

しかし、彼は、IASBが試みたことを成し得なかったことも認めた。彼は、銀行による利益操作を避けるためにデザインされた、金融資産の減損に関する発生損失モデルを引用した。グローバル金融危機は、当該モデルが、実際には会社の真の財政状況を示すのを先送りにすることを明らかにした。それにもかかわらず、フーガーホースト氏は、金融危機を概念フレームワークにおける「慎重性」の概念の再導入に関する現在の議論に結び付けようとはしなかった。

しかし、私は、概念としての「慎重性」が意味することが可能でないところを明らかにしたいとも思う。それは、隠れた引当金を伴う、古めかしい会計に戻ることを意味することは可能ではない。中立性と対立する保守主義に向けて、体系的な偏りとすることはできない。「慎重性」は、現行の測定においてタブーを創造するために使用されるべきではない。デリバティブを取得原価で測定、もしくは保険の負債を過去の利子率で測定することほど、慎重性を欠くことはない。

ガバナンスとモラル・ハザードについて、フーガーホースト氏は、IASBが民間の組織であるという事実は、私益(private interest)からのプレッシャーに脆弱であるかどうかについての問題にふれた。彼は、この問題は真剣に回答するに値するもので、容易に無視べきではないと認めたが、会計基準設定の公的なガバナンス構造は、それ自体がモラル・ハザードを防ぐ保証ではないことも指摘した。彼は、多くの法域で、公的機関自身が公会計の基準を設定しているという、パブリック・セクターの会計の例を引用した。「これらの基準が、常に国の財政状態の完璧な実態を導きだすかどうかは疑わしい」と彼は付け加えた。それゆえ、彼は、基準設定の成功の鍵は、その由来に関係なく特定の利益(special interests)の関与を回避する能力であり、基準設定におけるモラル・ハザードを避ける鍵は、独立性と説明責任の適切なバランスを見つけることである。

スピーチ全文 (IASBのWebサイト)

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