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IASBが、IFRS第9号の最終版を公表

IAS Plus 2014.07.24

国際会計基準審議会(IASB)は、IAS第39号「金融商品:分類及び測定」を置き換えるIASBのプロジェクトの分類及び測定、減損及びヘッジ会計のフェーズをまとめた、IFRS第9号「金融商品」の最終版を公表した。(IAS Plus 2014.07.24)

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国際会計基準審議会(IASB)は、IAS第39号「金融商品:分類及び測定」を置き換えるIASBのプロジェクトの分類及び測定、減損及びヘッジ会計のフェーズをまとめた、IFRS第9号「金融商品」の最終版を公表した。今回の版には、新しい予想損失減損モデルと、金融資産の分類及び測定についての限定的な修正が追加されている。本基準は、IFRS第9号の従前のすべての版を廃止し、2018年1月1日以後開始する事業年度に発効する。

背景
IASBは、IAS第39号を置き換えるプロジェクトを、2008年からアクティブ・アジェンダとし、フェーズごとにプロジェクトに取り組んできた。IASBは、2009年、最初に金融資産の新しい分類及び測定のモデルについてのIFRS第9号を公表し、続いて、2010年に金融負債と認識の中止についての要求事項を追加した。その後、IFRS第9号は、新しい一般ヘッジ会計の要求事項を追加するために2013年に修正された。

IFRS第9号の最終版では、新しい予想損失減損モデルが追加され、また、一定の負債性金融商品に対するその他の包括利益を通じて公正価値で測定する(FVTOCI)新しいカテゴリーと、事業モデルと契約上のキャッシュ・フローの特性のテストを適用する方法に関する追加のガイダンスを追加することにより、金融資産についての分類及び測定のモデルを修正している。

主要な要求事項の要約

予想損失減損モデル
IFRS第9号の減損モデルは、購入または組成した信用減損金融資産の場合(その場合、予想信用損失が実効金利に織り込まれる)を除き、契約開始時に予想損失を引き当てる概念に基づいている。

<範囲>
IFRS第9号の減損の要求事項は、以下の項目に適用する。

  • 償却原価で測定される金融資産
  • FVOCIで強制的に測定される金融資産(以下を参照)
  • 信用を供与する現在の義務がある場合のローン・コミットメント(FVTPLで測定される場合を除く)
  • IFRS第9号が適用される金融保証契約(FVTPLで測定されるものを除く)
  • IAS第17号「リース」の範囲に含まれるリース債権
  • IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の範囲に含まれる契約資産(すなわち、財またはサービスの移転による対価に対する権利)

 

<一般的なアプローチ>
購入または組成した信用減損金融資産(以下を参照)を除き、予想信用損失は、以下のいずれかの金額と同額の損失評価引当金を通じて測定することが要求される。

  • 12か月の予想信用損失(当該金融商品について報告日から12か月以内に生じ得る債務不履行事象により生じる予想信用損失)
  • 全期間の予想信用損失(当該金融商品の存続期間にわたってのすべての生じ得る債務不履行事象から生じる予想信用損失)

 

ある金融商品に関する信用リスクが当初認識以降に著しく増大している場合とともに、IFRS第15号に従う財務取引(financing transaction)を構成しない契約資産または営業債権については、全期間の予想信用損失についての損失評価引当金が当該金融商品に対して要求される。

さらに、企業は、IFRS 第15 号に従う財務取引を構成するすべての契約資産及び/またはすべての営業債権に対して、全期間の予想信用損失を認識する会計方針を選択することができる。同じ選択は、リース債権についても別個に認められる。

他のすべての金融商品については、予想信用損失は、12か月の予想信用損失と同額で測定される。

<信用リスクの著しい増大>
購入または組成した信用減損金融資産(以下を参照)を除き、ある金融商品に関する信用リスクが当初認識以降に著しく増大している場合、金融商品についての損失評価引当金は、全期間の予想信用損失と同額で測定される。ただし、金融商品の信用リスクが報告日時点で低い場合(例えば、投資適格)は除く。その場合、金融商品の信用リスクが当初認識以降に著しく増大していないとみなすことができる。

信用リスクの著しい増加があるかどうかの評価は、当初認識以降の債務不履行の発生確率の増加を基礎とする。

要求事項には、契約上の支払の期日経過が30 日超となっている場合に、信用リスクが著しく増大しているという反証可能な推定も含まれる。IFRS第9号は(購入または組成した信用減損金融資産を除き)、当初認識以降に信用リスクの著しい増大が発生し、その後の報告期間に戻った場合(すなわち、累積的な信用リスクは当初認識時より著しく高くはない)、当該金融商品についての予想信用損失は、12か月の予想信用損失と同額に基づいて測定されるように戻る。


<購入または組成した信用減損金融資産>
資産が当初認識時に信用減損しているため、購入または組成した信用減損金融資産は異なる取り扱いになる。これらの資産については、当初認識時の(信用調整後の)実効金利を計算するために使用する見積もりキャッシュ・フローは、全期間の予想信用損失を織り込む。その後、予想損失の変動は、損失評価引当金として認識し、対応する利得または損失は純損益に認識する。

<信用減損金融資産>
IFRS第9号では、発生した1つまたは複数の事象で、金融商品の期待将来キャッシュ・フローに影響を有する場合、金融資産は信用減損する。これには、金融商品の保有者が下記の事象に関して知ることとなった観察可能なデータが含まれる。

  • 発行者または債務者の重大な財政的困難
  • 契約違反(債務不履行または期日経過事象など)
  • 借手に対する貸手が、借手の財政上の困難に関連した経済上または契約上の理由により、そうでなければ当該貸手が考慮しないであろう譲歩を借手に与えたこと
  • 借手が破産または他の財務上の再編を行う可能性が高くなったこと
  • 財政上の困難による当該金融資産についての活発な市場の消滅
  • 発生した信用損失を反映するディープ・ディスカウントでの金融資産の購入または組成

<予想信用損失を見積もる基礎>
IFRS第9号における予想信用損失の測定は、一定範囲の生じ得る結果を評価することにより算定されるバイアスのない確率加重金額を反映するとともに、貨幣の時間価値を織り込まなければならない。さらに、企業は、予想信用損失を測定する際に、過去の事象、現在の状況についての合理的で裏付け可能な情報、及び合理的で裏付け可能な将来の経済状況の予測を検討しなければならない。

時間価値を反映するために、予想損失は、当初認識時に決定された資産の実効金利(またはその近似値)を用いて報告日まで割り引かなければならない。「信用調整後の実効金利」は、購入または組成した信用減損金融資産の予想信用損失に用いなければならない。「実効金利」(予想信用損失を無視した期待キャッシュ・フローを用いて算定)と対照的に、信用調整後の実効金利は、金融資産の予想信用損失を反映する。


<表示>
金利収益は常に独立の表示科目として表示することが要求されるが、信用損失に関する資産の状況にしたがって、異なって算定される。購入または組成した信用減損金融資産ではなく、報告日において減損の客観的な証拠のない金融資産の場合、金利収益は、実効金利を総額での帳簿価額(gross carrying amount)に適用して計算される。

購入または組成した信用減損金融資産ではないが、事後的に信用減損となった金融資産の場合、金利収益は、実効金利を償却原価残高(総額での帳簿価額に損失評価引当金を調整)に適用して計算される。

購入または組成した信用減損金融資産の場合、金利収益は、常に、信用調整後の実効金利を償却原価である帳簿価額に適用することにより認識される。

 

金融資産の分類及び測定についての限定的な修正

<その他の包括利益を通じて公正価値で測定する(FVTOCI)区分>

IFRS第9号の最終版は、以下の2つの条件を満たす負債性金融商品に対して、FVOCIの新しい分類及び測定の区分を導入する。

  • 事業モデル・テスト:金融資産が、契約上のキャッシュ・フローの回収と売却の両方の目的である事業モデルの中で保有されている。
  • キャッシュ・フローの特性のテスト:金融資産の契約条件により、元本及び元本残高に対する利息の支払のみであるキャッシュ・フローが特定の日に生じる。

ある資産が、これらの条件の双方を満たす場合、FVTOCIで測定することが要求される。ただし、当初認識時に、会計上のミスマッチに対処するために、純損益を通じて公正価値で測定するものに指定した場合を除く。

そのような資産について、金利収益、為替差損益、及び減損に係る利得及び損失は、純損益に認識し、その他の利得または損失(すなわち、これらの項目と公正価値の変動の総額との差額)は、その他の包括利益(OCI)に認識される。OCIに計上された利得または損失の累計額は、認識の中止の際に純損益に振り替えられ、分類変更の場合には具体的なガイダンスに従って処理される。

金利収益及び減損に係る利得及び損失は、償却原価で測定される資産と同じ方法で認識及び測定され、OCIの金額は償却原価の価値と公正価値の差額を示す。これにより、財政状態計算書は金融商品の公正価値を反映するが、資産が償却原価で測定された場合と同じ純損益についての情報となる。

<追加のガイダンス>
最終基準は、以下の事業モデルについて認められる売却のタイプとレベルの例示及び説明とともに、金融資産が「回収のために保有」または「回収と売却のために保有」である事業モデルの下で保有されているかどうかを決定する方法についてのガイダンスを追加している。

事業モデル・テストについてのガイダンスに加え、本基準は、基本的な貸付の取決めにおける金利のもっとも重要な構成要素が貨幣の時間価値と信用リスクに対する対価であることを明確化する、契約上のキャッシュ・フローの特性のテストについてのガイダンスを追加している。貨幣の時間価値の構成要素が改変されている場合(例えば、金利が1年物の金利に毎月改定される)、企業は、改変された構成要素を本修正により導入された新しい規準により評価することを要求される。

適用指針は、一定の期限前償還の特徴が、償却原価またはFVTOCIの測定に適格となる契約上のキャッシュ・フローの特性の要求事項を満たすことを認める追加の例外措置も導入している。

発効日
本基準の強制発効日は、2018年1月1日以後開始する事業年度であり、早期適用が認められる(現地でのエンドースメントの要求を条件に)。本基準は、いくつかの例外(例えば、ほとんどのヘッジ会計の要求事項は将来に向かって適用される。)を除き、遡及的に適用される。しかし、企業は、(減損を含め)分類及び測定に関して、過年度を修正再表示する必要はない。

IFRS第9号の最終版は、従前の本基準のすべての版を廃止する。しかし、2018年1月1日より前に開始する事業年度について、企業の該当する適用開始日が2015年2月1日より前である場合、企業はIFRS第9号のそれら従前の版を適用することを選択することができる。


IASBプレスリリース  (IASBのWebサイト)
プロジェクトサマリー (IASBのWebサイト)
プロジェクト・ページ (IAS Plus)
ニュースレター「IFRS in Focus –IASBが、金融資産の分類および測定を変更し、予想損失減損モデルを導入するIFRS第9号を最終化」 (トーマツのWebサイト)

 

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