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IASBが新しい概念フレームワークの公開草案を公表

IAS Plus 2015.05.28

IASBは、現行の概念フレームワークの改訂および修正が必要であると考えられる領域に対する提案を含む包括的な公開草案を公表した。本公開草案に関するコメント期限は、2015年10月26日である。(IAS Plus 2015.05.28)

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国際会計基準審議会(IASB)は、現行の概念フレームワークの改訂および修正が必要であると考えられる領域に対する提案を含む包括的な公開草案(ED)を公表した。EDには、資産および負債の定義を改訂し、測定および認識のガイダンスを導入し、表示および開示のフレームワークを設定する提案が含まれている。メインのEDには、他のIASBの基準等における概念フレームワークへの参照に関する提案を含んでいるEDが添付されている。両EDに関するコメント期限は、2015年10月26日である。

背景
現行の概念フレームワーク(IAS Plus-英語版※1)は、1989年に導入されて以来、大部分は変更されていない。2004年に、IASBとFASBは、概念フレームワークを見直し更新することを決定したが、優先順位を変更し、当初の共同プロジェクト(IAS Plus-英語版※2)のフェーズAのみを最終化し、2010年9月に既存のフレームワークに第1章および第3章として導入(※3)した後、2010年に遅滞によりプロジェクトを廃止するに至った。フェーズDは、ディスカッション・ペーパーと公開草案が公表されたが、最終化はされなかった。両審議会は、、かなり広範囲にわたってフェーズBおよびCを議論したものの、協議文書は公表されず、フェーズEからHは、大部分が手をつけられなかった。
2011年のアジェンダ・コンサルテーション(※4)では、多くの現行のプロジェクトで、オープンとなっている多数の概念的問題に直面していることを考慮し、概念フレームワーク・プロジェクトを再開させ最終化させることを、大多数の参加者がIASBに求めた。結果として、IASBは、2012年9月に再度本プロジェクト(IAS Plus-英語版※5)をアジェンダに正式に追加した。今回は、IASBのみのプロジェクトで、フレームワークの実質的な改訂を目的とするものではないが、これまで対象とされていない(たとえば、表示および開示)、または対処する必要がある明確な欠陥(obvious shortcomings)を示しているトピックに焦点を当てている。最初のステップとして、フレームワーク・プロジェクトのすべての側面を対象とするディスカッション・ペーパーが、2013年7月に公表(IAS Plus-英語版※6)された。今回、2つのED、すなわち、概念フレームワーク自身を対象とするEDと、他のIASBの基準等における概念フレームワークへの参照を対象とするEDが公表された。

主な提案の概要
ED/2015/3「財務報告に関する概念フレームワーク」は、「はじめに」、8つの章および2つの付録で構成されている改訂概念フレームワークを示している。

トピック

 

はじめに

一般目的財務報告の目的

有用な財務情報の質的特性

財務諸表および報告企業

財務諸表の構成要素

認識および認識の中止

測定

表示および開示

資本および資本維持の概念

付録A

キャッシュ・フロー・ベースの測定技法

付録B

用語集

 

各章の主な提案は、下記のように要約される

「はじめに」

最初のセクションは、背景情報を提供する。また、概念フレームワークの目的およびIASBの基準のヒエラルキーにおける位置付けも記載している。本EDは、概念フレームワークの主要な目的は、IFRSの開発および改訂を行う際にIASBを支援すること(IASB以外の関係者にとっても有用である)、およびフレームワークは個別のIFRSに優先するものではないことを説明している。IASBが、フレームワークと矛盾する新しいまたは改訂された基準を公表することを決定した場合、IASBは、その事実を強調し、離脱の理由を説明する。
 

第1章- 「一般目的財務報告の目的」

これは、2010年にFASBとの共同プロジェクトの一部として最終化された2つの章の最初の章であるため、変更は限定的である。実質的には、この章のIASBの提案は、企業の資源に対する経営者の受託責任を評価するために必要とされる情報を提供することの重要性を目立たせることを目的としている。

第2章- 「有用な財務情報の質的特性」

これは、2010年にFASBとの共同プロジェクトの一部として最終化された2つの章の2番目の章(2010年概念フレームワークの第3章として公表)である。やはり、提案された変更は、限定的である。しかし、IASBは、「慎重性(prudence)」の概念への明示的な言及を再導入することを提案し、「慎重性」の行使が中立性を裏付ける(supports neutrality)と述べている。「慎重性」は、不確実な状況で判断を行う場合に注意を払うこと(exercise of caution)として定義される。本章には、忠実な表現は、法的形式のみの表現ではなく、経済現象の実態の表現を意味することを明確化する追加の提案も含まれている。
 

第3章- 「財務諸表および報告企業」

本EDは、財務諸表の目的(将来の純キャッシュ・フローの見込みを評価し、企業の資源に対する経営者の受託責任を評価する際に、財務諸表利用者に有用である、企業の資産、負債、資本、収益および費用についての情報を提供すること)を記述し、継続企業の前提を示している。興味深いことに、本EDは、2つの計算書のみを明示的に記述している。すなわち、財政状態計算書および財務業績計算書(後者は、これまでの包括利益計算書)である。キャッシュ・フロー計算書および持分変動計算書については、触れられていない。本章は、報告企業の定義および報告企業の境界(boundary)も議論している。一般的に連結財務諸表は、非連結財務諸表より財務諸表利用者に有用な情報を提供する可能性が高い(more likely)というIASBの確信(conviction)も述べている。 

第4章- 「財務諸表の構成要素」

この章の主な焦点は、資産、負債、資本ならびに収益および費用の定義に関するものである。定義を以下に引用する。
資産―資産は、企業が過去の事象の結果として支配している現在の経済的資源である。経済的資源は、経済的便益を生み出すことのできる権利である。
負債―負債は、企業が過去の事象の結果として経済的資源を移転する現在の義務である。
持分―持分は、企業のすべての負債を控除した後の資産に対する残余持分である。
収益―収益は、資産の増加または負債の減少であり、持分参加者からの出資に関連するもの以外の持分の増加を生じさせるもの。
費用―費用は、資産の減少または負債の増加であり、持分参加者への分配に関連するもの以外の持分の減少を生じさせるもの。
DP以外で、IASBは、負債と持分の両方の特徴を有する金融商品を区分する際に生じる問題を取り扱う、負債および持分の定義の変更を取り下げていることに留意が必要である。これらの問題の調査は、資本の特徴を有する金融商品に関するIASBのリサーチ・プロジェクトに移管されている。 

第5章- 「認識及び認識の中止」

本EDは、資産、負債または持分の定義を満たす項目のみが財政状態計算書に認識され、収益または費用の定義を満たす項目のみが財務業績計算書に認識されると述べている。しかし、この認識は、3つの要件に左右される。すなわち、認識により、財務諸表利用者に、(1)資産または負債、および収益、費用または持分の変動についての目的適合性のある情報、(2) 資産または負債、および収益、費用または持分の変動の忠実な表現、および(3)その情報を提供するコストを超える便益となる情報が提供されるというものである。一方、本EDは、提供された情報が、利用者に有用であるかどうかは、項目や具体的な事実と状況に左右されるものであり、判断を要するとしており、基準によっては認識の要求事項は異なる可能性があるともしている。本EDに記載されている認識の中止の要求事項は、2つの目的によって決定される。すなわち、認識の中止となる取引または他の事象の後に保持される資産および負債が、忠実に表示されなければならず、また、当該取引またはその他の事象の結果として、資産および負債の変動も忠実に表示されなければならない。本EDは、両方の目的を達成する可能性がない場合の代替案も記載している。 

第6章-「測定」

この章は、異なる測定基礎(歴史的原価および現在価値(公正価値および使用価値/履行価値)、それらが提供する情報、およびそれらの長所と短所を記述している。様々な測定基礎が提供する情報を概観する表が提供されている。本EDは、測定基礎を選択する際に考慮すべき要因(目的適合性、忠実な表現、補強的な質的特性、および当初測定に特有の要因)を設定し、財務報告の目的、有用な財務情報の質的特性およびコストの制約の考慮が、異なる資産、負債ならびに収益および費用項目に対する異なる測定基礎の選択をもたらすであろう点を指摘している。本EDの付録Aは、第6章を補足し、測定基礎を使用して算定された測定値が観察可能でない場合のキャッシュ・フロー・ベースの測定技法を記述している。 

第7章-「表示および開示」

この章では、本EDは財務諸表に含まれるべき情報を決定する概念と、その情報の表示・開示方法について議論している。包括利益計算書は、新たに「財務業績計算書」と名付けられているが、この計算書が単一の計算書と2つの計算書のいずれかで構成されるのかはEDは特定しておらず、単に純損益の合計または小計を提供しなければならないことのみを要求している。注目すべきは、本EDは純損益を定義していないため、何を純損益に含め、何をその他の包括利益に含めるべきかに関する質問は未回答のままとなっている。 

第8章-「資本および資本維持の概念」

この章の提案は、用語を統一するための軽微な変更を行った上で、現行の「概念フレームワーク」から引き継がれている。IASBは、高インフレの会計処理に関する将来のプロジェクトを実行する場合に、資本維持の記述と議論を再考するとしているが、このようなプロジェクトが現在予定されていないとも述べている。

 

ED/2015/4 「概念フレームワークへの参照の更新」は、改訂「概念フレームワーク」を参照するために、フレームワークへの参照とフレームワークからの引用に関する規定を更新するためのIFRS第2号、IFRS第3号、IFRS第4号、IFRS第6号、IAS第1号、IAS第8号、IAS第34号、SIC第27号およびSIC第32号に対する修正案を含んでいる。「概念フレームワーク」は、主にIASBとIASBの作業に影響を与える一方で、他の基準に関する提案は作成者にも影響を与える可能性があるため、作成者が潜在的な影響を識別し、理解し、対応するための期間を設けるためにIASBは、ED/2015/4における修正案に約18ヶ月の移行期間を設けることを検討している。

コメント期限および次のステップ
IASBは、関係者がEDを読み進めて質問に回答するために、延長された5ヶ月の期間を提供している。コメントレターの提出期限は、2015年10月26日である。IASBは、改訂「概念フレームワーク」の最終版を開発する際に、受領したコメントを検討する予定である。IASBは、改訂「概念フレームワーク」の2016年の最終化を目標としている。

≫※1 Conceptual Framework for Financial Reporting 2010(IAS Plus-英語版)
≫※2 Conceptual Framework — IASB-FASB joint project (IAS Plus-英語版)
≫※3「IASB、財務報告に関する概念フレームワークについて共同プロジェクトの第1フェーズを完了」(トーマツのWebサイト)
≫※4「IASBが「アジェンダ・コンサルテーションに関する意見の募集」を公表」(トーマツのWebサイト)
≫※5 Conceptual Framework — Comprehensive IASB project(IAS Plus-英語版)
≫※6 IASB publishes Discussion Paper for a new Conceptual Framework(IAS Plus-英語版)
プレス・リリース(IASBのWebサイト-英語)



 

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