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IASBが開示原則のディスカッション・ペーパーを公表

IAS Plus 2017.03.30

国際会計基準審議会(IASB)は、一般的開示基準または本トピックに対する強制力のないガイダンスに含まれるべき開示原則に関するIASBの予備的な見解を示している包括的なディスカッション・ペーパー(以下、DP)を公表した。コメント期限は、2017年10月2日である。(IAS Plus 2017.03.30)

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国際会計基準審議会(IASB)は、一般的開示基準または本トピックに対する強制力のないガイダンスに含まれるべき開示原則に関するIASBの予備的な見解を示している包括的なディスカッション・ペーパー(以下、DP)を公表した。コメント期限は、2017年10月2日である。


背景

2017年-2021年において、IASBは中心的なテーマとして「コミュニケーションの改善(better communication)」を掲げており、加えて、基本財務諸表プロジェクトおよびIFRSタクソノミも開示原則に含まれている。また、関連プロジェクトとして、概念フレームワークのプロジェクトもある。実際、いくつかの概念および財務報告の論点は、当該グループの異なるプロジェクト間を行ったり来たりしている。

開示イニシアティブ自体は、いくつかのプロジェクトで構成されている。

  • 判断を行使するための障壁を取り除くためのIAS第1号の修正および財務活動から生じる負債の開示の改善のためのIAS第7号の修正はすでに完了している。
  • 重要性の適用に関するガイダンスは、2つのプロジェクトに分けられ、最終の実務記述書、およびIAS第1号およびIAS第8号の修正案の公開草案は6月に公表される予定である。
  • 開示イニシアティブに含まれている2つのリサーチ・プロジェクトについて、開示原則は本日公表されたDPの背後にあるものであり、開示の基準レベルのレビューもまたある程度関連している。それは、セクション8に、当プロジェクトの一環としてさらに検討する可能性のあるアプローチが含まれており、また、本DPの付録には、本DPに記述されている原則を利用して、どのように既存の基準の再ドラフトが可能であるかについての2つの例示を含めていることで示されている。

 

開示の原則に係るIASBのプロジェクト

開示原則のプロジェクトの目的は、作成者により効果的な情報のコミュニケーションを促し、財務諸表の利用者に対する開示を改善し、そしてIASBが基準の開示についての要求事項を開発することの一助となることである。IAS第1号「財務諸表の表示」に開示に関する一般的な要求事項が含まれているため、当プロジェクトでは、IAS第1号の一部を当プロジェクトの目的を達成するために修正することが可能か、または新しい開示基準をIAS第1号の一部を置き換えるために開発すべきか(どちらの選択肢も本DPを通じて「一般的開示基準」という表現で組み込まれている)を見極めるための出発点として、IAS第1号を利用している。

 

主な提案の要約

内容。本DPは110ページあり、8つのセクションに分けられ、付録が付属されている。当ペーパーは、本DPを公表する背景にある理由を記述しているエグゼクティブ・サマリーから始まり、その範囲、主な文書の内容、IASBの予備的な見解、使用している用語、今後のステップとなっている。当ペーパー自体は、次のように構成されている。

セクション  トピック 
「開示に関する問題」の概要および当プロジェクトの目的
効果的なコミュニケーションの原則
基本財務諸表および注記の役割 
情報の開示場所 
財務諸表における業績指標の使用 
会計方針の開示 
一元化された開示目的 
IFRS基準の開示に関する要求事項の文案作成についてのニュージーランド会計基準審議会のスタッフのアプローチ 
Appendix セクション7のB法の適用例示 

 

各セクションで取り上げられている主な論点の概要は以下のとおりである。

セクション1(「開示に関する問題」の概要および当プロジェクトの目的)
最初のセクションでは、開示イニシアティブの背景情報を提示し、開示原則の必要性を明らかにする「開示に関する問題」を議論している。また、当セクションは、当プロジェクトの目的の要点を説明し、他のIASBのプロジェクトとの相互作用について記述している。

セクション2(効果的なコミュニケーションの原則)
当セクションの核心は、財務諸表を作成する際に企業が適用すべきであるとIASBが考えている原則である。提供される情報は汎用的で「ボイラープレート」的な言葉や情報を避けて企業固有のものにすべきであるという原則から、情報は情報の種類について適切なフォーマットを使用すべきであるという原則までの7つの原則を識別している。1つを除いて、これらの原則は、もともと「2013年概念フレームワークDP」(デロイト トーマツのWebサイト-※1)に含まれていた。IASBは、これらの原則は一般的開示基準または本トピックに対する強制力のないガイダンスのいずれかにおいて提供されるべきであり、概念フレームワークにおいてではないという結論に至っている。新規のものは、フォーマットに関する原則であり、これはフォーマットのより効果的な利用は、企業の情報のコミュニケーションの方法を改善するであろうというフィードバックをIASBが受領したことによるものである。

セクション3(基本財務諸表および注記の役割)
当セクションは、異なる財務諸表の役割の議論を含んでおり、これは、IASBが、基本財務諸表の情報は、利用者、監査人、および規制当局がより頻繁に利用し、さらなる監視の対象となる可能性があるというフィードバックを受領したことによるものである。また、企業は、IFRSの「表示」と「開示」の用語の一貫性の欠ける使用によって、注記における開示ではなく、基本財務諸表に表示するべきものを決定することが困難な状況にある。そのため、当セクションは、「2015年概念フレームワークED」(デロイト トーマツのWebサイト-※2)の財務諸表の目的に基づいて基本財務諸表の役割を識別し、記述するとともに、当該役割の影響を示している。また、概念フレームワークEDの提案に基づき、注記の役割および内容を記述している。さらに、IASBは今後、「表示」または「開示」という用語を場所を指し示すために使用する場合に、「基本財務諸表」または「注記」のいずれの場所を意図するものなのかも明示していくことも結論付けている。

セクション4(情報の開示場所)
このセクションでは、財務諸表外のIFRSに準拠する必要がある情報の提供、および財務諸表の中の非IFRS情報の提供について議論している。IASBの予備的見解は、当該情報が企業の年次報告書の中で提供され、この場所が年次報告書全体をより理解しやすくする場合で、かつ明確に相互参照されている場合に、一般的開示基準は、企業が財務諸表の外で、IFRSに準拠する必要がある情報を提供することができるという原則を含むべきとするものである。同様に、IASBは、非IFRS情報がIFRSに従って作成されていないことが明確に識別され、企業がなぜ当該情報が有用であり含めているのかを説明する限り、一般的開示基準は、企業が財務諸表の中に非IFRS情報を含むことを禁止すべきではないと結論付けた。

セクション5(財務諸表における業績指標の使用)
5番目のセクションは、財務諸表における業績指標の適正な表示のために設けられている。IASBの予備的見解は、費用性質法を使用したEBITDAの小計の表示および費用性質法と費用機能法の両方におけるEBITの小計の表示は、当該小計が財務諸表の理解に目的適合性がある場合、IFRSに準拠しているというものである。またIASBは、非経常的または稀にしか起こらない項目の表示に関連するガイダンスを開発すべきであると考えている。しかし、IASBは、両方の論点(EBITDA/EBITおよび非経常的項目)は、IASBの基本財務諸表プロジェクトの中で扱うことに留意している。業績指標の適正な表示において、IASBは、この情報は、基本財務諸表の表示項目と同等の目立ち方か、または目立たないように表示しなければならないこと、最も直接的で比較可能なIFRS指標と調整しなければならないこと、関連性と理由の説明を添付しなければならないこと、中立的で誤謬がなく明確に名称を付さなければならないこと、比較情報を含まなければならないこと、整合的に分類、測定および表示しなければならないこと、および監査済かどうかを示さなければならないことに留意している。これは、さまざまな規制当局が既に公表しているガイドラインに全面的に沿っているが、現在はその方法がIFRSの文献にも入り込んでいる。

セクション6(会計方針の開示)
当セクションにおいて、IASBは、企業がどのように会計方針を開示すべきであるかを取り上げている。IASBの予備的見解では、一般的開示基準には会計方針の開示を提供する目的を説明するための要求事項を含めるべきであるとしている。会計方針のカテゴリー、すなわち、財務諸表の情報を理解するために常に必要な会計方針、財務諸表にとって重要性のある項目、取引または事象に関連する会計方針、およびその他の会計方針を記述すべきである。また、IASBは、会計方針の開示の場所について選択肢があるが、企業は、関連する会計方針に係る開示に隣接する重要な判断や仮定に関する情報を開示すると推定される。

セクション7(一元化された開示目的)
当セクションでは、財務諸表の目的および注記の役割を検討する開示目的の一元的なセット(central set)の開発について議論している。そのような一元化の目的(centralised objectives)は、より統一され、全体的な財務諸表の目的とより良く結びつく、基準における開示目的及び要求事項の開発の基礎として、IASBによって利用されることができる。本DPは、一元化された開示の目的を開発するために利用できる2つの方法を識別している。A法では、企業の資産、負債、純資産、収益および費用について開示されている異なる種類の情報に焦点を当て、B法は、企業の活動に関する情報に焦点を当てる。本DPの付録は、開示の目的および要求事項の開発のために、B法を適用した場合の例示を2つ提供している。本DPでは、IASBはこの2つの方法についてのいかなる予備的な見解をまだ形成していないことを記載している。最後に、本DPは、回答者が、IASBはIFRSのすべての開示の目的および要求事項を、開示に関する単一の基準(または、一連の基準)の中に配置することを検討すべきと考えているかどうかを質問している。

セクション8(IFRS基準の開示に関する要求事項の文案作成についてのニュージーランド会計基準審議会のスタッフのアプローチ)
8番目のセクションでは、IFRSの開示の要求事項の文案作成についてのNZASBのスタッフによって開発されたアプローチを記述している。当該アプローチの主な特徴は、各基準についての全体的な開示の目的と要求されるそれぞれの種類の情報に対する副次的な目的、報告企業の項目または取引の相対的な重要性に応じて提供される情報量を考える2段階アプローチ、判断を行使することの必要性をより強調すること、開示の要求事項における規範的な用語がより減少することである。本DPでは、まだ当該アプローチに対するいかなる見解も形成していないにもかかわらず、開示の基準レベルのレビューにおけるプロジェクトに使用できるとして、フィードバックを歓迎すると記載している。

 

IASBは、関係者に文書の作成および挙げられた質問の回答に6ヶ月間に延長された期間を与えている。したがって、コメントレターは10月2日までに提出することとなっている。

 

追加情報

下記リンクを参照:

IASBプレスリリース(IASBのWebサイト-英語)
ディスカッション・ペーパー「開示イニシアティブ」(PDF:IASBのWebサイト-英語)
Snapshot「開示イニシアティブ-開示の原則」(PDF:IASBのWebサイト-英語)
IFRS in Focus「IASBが開示の原則に係るディスカッション・ペーパーを公表」(デロイト トーマツのWebサイト)
IASB’s principles of disclosure project(IAS Plus-英語)

※1≫「IASBが、新たな概念フレームワークに関するディスカッション・ペーパーを公表」(デロイト トーマツのWebサイト)
※2≫「IASBが新しい概念フレームワークの公開草案を公表」(デロイト トーマツのWebサイト)

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